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Near Real  作者: 東田 悼侃
第二章 遠征編
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13rd story セルベ実戦区

何か、小説設定が完結済みになっていました。どこかで操作ミスでもしたのでしょうか。まだまだ続きますからね!

「これはまた、グランドより広いんじゃねえのか?」


自己紹介でアリ・フリーメルと名乗った小柄先輩が、“セルベ実戦区”を目の当たりにし、ヤレヤレと肩をすくめる。


「俺の中の常識が崩れちまうよ。何もかもが、超ビッグなスケールじゃねーか」


俺達がたった今入場してきた、見るからに頑丈そうな大型ゲートが、背後で警戒音と共に閉じる。


「音もでかいし」


フリーメル先輩がぼやく。


俺は、訓練用の殺傷能力の無い特殊弾の装填されたハンドガンを片手に、前方に広がる“セルベ実戦区”の一帯を眺めた。


所々に丘や傾斜のできた草原が雄大にたたずむ。この草原だけで、“ペルセポリス”のグランドの三分の二程の面積はありそうなものだ。俺の心の中に、まだほんの少しだけ残った、少年のような無垢な心が、この草原を思う存分駆け回りたいと訴えてくる。

それを特に苦もなく理性で抑え、草原の奥に目を転じてみれば、その先には森林が続いていた。


まだなんとか、紅葉が生きている。


ここからその奥行きを測ることはできないが、只一つ、確実に言えることとするば、この施設は間違いなく“ペルセポリス”のグランドよりは広い、ということだ。ここまで来ると、本当に感覚が麻痺してくる。


「さて、今日の説明をするぞ。六十六組、俺の周りに集まれ」


俺達が目の前の景色を茫然と眺めていると、上官が一人、俺達に呼び掛けた。


「早速だが今日は、いきなり模擬戦闘をやってもらう」


開口一番、上官はそんなことを言った。


「この“セルベ実戦区”には今、他に十三個の組が来ている。お前達には今日、その十三組の中の一組から二組と戦ってもらう。こちらが支給する武器は、お前達の今持っている、そのハンドガンのみ。戦略などの具体的な指導も、今日はやらない。今、お前達がどんな実力なのか、それを判断するための集団模擬戦闘だ」


上官が一息つく。俺達は終始無言だ。それが原則。


「ルールの説明をする。戦闘場所は、この草原かあの奥の森林のどちらか。勝敗は、各組ごとに設定した大将が倒されるか、時間切れになるまで続ける。次に、だ。これから配るものを全員、衣服のどこかに取り付けてもらう」


そう言って上官は、ゲートのそばから両手で軽く抱えるくらいの大きさの箱を持ってきた。それを俺達の前に置き、蓋を開ける。中には拳大の機械のような、黒くて四角い物体が詰まっていた。上官がそれを俺達に回していく。俺達は一人一個づつそれを受け取ると、上官に言われた通り、服の一部にそれを取り付けた。


物体の裏で、服のポケットなどに引っ掛けられるようになっている。俺はそれを、胸ポケットの表側に引っ掛けた。


全員に物体が渡る。上官は、箱の中から余ったそれを一つ取り出すと、口を開いた。


「これは“テルミドール”という。人類領域の主に西部の端で採れる“魔法石”を加工したものだ。これを体の一部に取り付けた状態で、今お前達の持っているハンドガンに装填された特殊弾に被弾すると、音が鳴る。詳しい原理は、専門家に聞いてくれ。俺は知らん。この音が鳴った者、すなわち、敵の攻撃に被弾した者は、その場を退場。本陣後ろまで戻って、後は見学となる」


“テルミドール”か。いかにもご都合主義的な設定や、何だかクーデターの起こりそうな名前はともかく、性能はなかなかすごい代物だ。


「説明は以上だ。何か質問のある奴は居るか?」


上官が尋ねる。俺の横で、フリーメル先輩が手を挙げた。


「何だ」


「先程、軍から我々に支給される武器はハンドガンのみ、とおっしゃりましたが、他に――例えば、森林の中で拾った木の枝等を使用するのはありですか?」


「基本的に、攻撃はハンドガンの特殊弾のみだ。木の枝で殴ったりといった行為は禁止する。ただし、それらを使って目眩ましをするなど、相手に直接危害を加えないような方法なら、使用許可する」


「ありがとうございます」


「他にはあるか?」


誰も答えない。質問はもう無いようだ。


「それでは、対戦相手と場所を確認してくる。それまでに、大将を一人決めておけ」


と言い残し、上官は他の上官の所へと赴いた。


「シェル、大将やれば?」


フリーメル先輩が俺の脇を小突く。俺は首を横に振って拒否した。


「いや、俺はいいです。あんまり出しゃばってもいけないんで。.....!.俺なんかより、先輩がやったらどうですか?的は小さい方が当たりにくいですし」


「あっ!テメェ!」


俺の肩を軽く殴るフリーメル先輩。小柄なのに変わりはないんだ。


変わりはないと言えば、俺は未だに、武術部の先輩方には敬語を使う。組分けをした時あんなことを言った手前、同じ組のフリーメル先輩に敬語を使うのはどんなのかという気もするが、タメ口がどうにも馴染まないのだ。それに、言い訳をするのであれば、俺と先輩はもう、こうやって冗談も言い合えるくらい十分に仲良くなっているから、今更どうこうしなくたっていいのだ。


「まぁいいや。俺がやるよ、大将。他にやりたい人居る?居るなら譲るけど」


皆、首を横に振る。じゃあ、大将はフリーメル先輩に決まりだ。


「待たせたな」


クローンが沢山居る、伝説の傭兵が決め台詞として使ってそうな言葉を言いながら、上官が戻ってきた。そんな傭兵居ないけどね。全部俺の妄想なんだけどね。


「決まったのか?大将は」


上官に対し、手を挙げるフリーメル先輩。上官はそれを見てとると、特に反応もなく視線を俺達へ戻した。


「対戦相手と場所が決まった。相手は百五組、場所は、森林だ。戦闘時間は四十分。時間もないので、三十分後に開始するぞ。それまでに一つでも多く作戦を練っておけ」


一先ず俺達は、森林へと移動した。自陣と敵陣の位置と、大まかな地形をざっと確認する。全体的に高低差はあまり見られず、所々には、木々の少ない開けた場所が点在した。


「まあ、機動力を生かすっていう点なら、地面で戦うより、木の上まで使って立体的に展開した方がいいよな」


自陣に戻って作戦会議をする中、一人がそう提案する。


「そうだな。正攻法というよりは、俺達の特技を生かした戦い方の方がいいだろうね」


別の一人が賛同の意を示す。そもそも、正攻法なんて俺達知らないしね。


「でも、相手もそれぐらいは思い付くんじゃないのか?そしたら結局、同じ土俵で戦うことになるぜ?」


今日は議論が活発だ。男子はこういうのが好きだからな。いや、それは偏見か。


「....俺に良い提案が.....ある」


か細い声がどこからかかろうじて聞こえる。


「.......俺は....風を操るのに....特化してる.....から.....みんなを飛ばせられる....」


体育座りをしたか弱そうな男が、そう発言した。


なるほど、と俺達は相槌を打った。


地上だと、おそらく不利。樹上でも、ほぼ同等。残る、相手よりも有利をとれる場所は――――


あるじゃないか。空が。

土曜までに更新の止まってる“O_LIFE”の方を更新しようと思っています。本作とは180°程作風は違いますが、暇があればそちらもよろしくお願いします。


次回更新は土曜日です。

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