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Near Real  作者: 東田 悼侃
第二章 遠征編
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7th story 入寮 2

全員の自己紹介が終わると、共通の話題がなくなった部屋には沈黙が流れた。


おい、誰でも良いから、何か話を切り出してくれよ。そんな俺の願いが届いてか届かなくてか。メルシスが沈黙を破った。


「何か、それぞれに質問したいこととかない?ほら、もうちょっとみんなフレンドリーに。親睦深めようて」


必死に場の空気を繋げようとするメルシス。よし、あいつの頑張りに応えてやろう。俺は手を挙げた。


「俺から質問....いい?」


「おう!どんどんと言ってってくれい」


「えっと、メルシスに聞きたいんだけど。オリエンティア高校って、何処の高校?俺、聞いたことなくて」


「ワイの高校?んーと。あるのは人類領域の南の方や。ここからやと結構遠いで。飛行機で二時間ぐらいかな」


メルシスは右手の人差し指で、空中にクルクルと丸を書きながら答えた。


「へぇ~。どんな高校?」


「どんな高校って聞かれてもなあ....そんなに凄くもないで?」


「イヤイヤイヤイヤ!」


メルシスの謙遜した言葉に、ロイドさんが過剰に反応を示した。


「オリエンティア高校って言えば、エリート中のエリートじゃないか!勇者適性者の中でも、実力のある者だけを集めた、トップ高だよ!」


「いや~。アステクト高校さんにそう言われるのは、光栄ですわ」


メルシスが照れ笑いする。俺は軽くショックを受けていた。そんな高校があったのか。俺のところに推薦は来なかったぜ?でも、飛行機で二時間は少し遠いしな。


「君、まだ一年生だろ?一年生なのにもう覚醒していて、ここに選ばれてるんだ。きっと、相当な実力者だよ、君」


マジか。メルシスって、そんなすごい奴だったのか。全然そんな風には見えないよな。だって雰囲気は、ユグに近いんだぜ?


「はっ!」


メルシススゲー、マジパネェ。と、俺が目をキラキラさせていると、その下の段に座るナポレオンさんが鼻で一笑した。


「オリエンティア高校がどうしたというのだ。その高校の中に、俺様とサシで戦って勝てる奴が、一体いくら居る?いいや、居ないね。上の奴。アテラ・メルシスとか言ったか。貴様だって、言われる程大した実力は持ち合わせていなかったりするんじゃないのか?」


うわー。スゲー自信。ちょっと自信ありすぎて、逆にモノスゲー小者感出てるわ。ていうかこの人、さっきの自己紹介で名前しか言わなかったよな。年齢とか、何とか、教えてくれたっていいじゃないすか。


「そういえば君.....ナポレオン。あなたの学年とかは、俺らには教えてくれへんのですか?」


よく聞いてくれたメルシス!悪口を言われた後のその返し!華麗です!そこにシビれる!あこがれるゥ!


ナポレオンさんはそんな様子のメルシスにムッとした顔をすると、ベッドに横になって答えた。


「ルージュ・ナポレオン。性別、年齢、生年月日不詳。というか、教えない。覚醒勇者で、さっきも言ったが最強に最も近い男だ」


いや、年齢や生年月日はともかく、性別は男一択だろ。あれは、こいつ。俗に言う厨二病か。


「学校は何処だい?」


クライヴさんが、ベッドの上段から身を乗り出して尋ねる。楽しいものでも見るかの様な目だ。


「あんな低俗な所になど行っていない。二年前に既に、この次元の真理については解明したからな。ここに呼ばれるまでは、俗世から身を置いて、貴様らの愚鈍な動向を眺めていたさ」


もう、聞いているだけのこっちが身悶えするような......重症じゃないか、かなり。


「うん、そうか。お互い頑張ろうね」


クライヴさんは笑顔でナポレオンさんの病的発言を反らした。大人の余裕、恐るべし。


「夕飯、何時に行きます?」


ロイドさんが、唐突に口を開いた。


「今は六時半か。どうする?七時ぐらいに行ってみる?」


携帯で時間を確認しながら答えるクライヴさん。食事は、俺らの宿舎の東側に建っている食堂で、朝は四時から夜は十一時まで、好きな時間に利用することができる。因みに、俺達は何を頼んでも無料だ。


「じゃあ、七時になったら一回みんなで様子を見に行ってみましょう」


ロイドさんの提案に異論の声はない。あと三十分、暇をもて余すことになった。


三十分後、俺達六人は食堂へ向かった。部屋の鍵は、一番安全そうなクライヴさんが管理することになった。


部屋から食堂までが、これまた結構遠い。徒歩で五分くらいはかかっただろうか。


食堂は、面積で言えば学校の大体育館ぐらいの広さ。もう、どれもこれもスケールがデカ過ぎて、感覚が麻痺してきた。一万人以上が同じ所で生活しようとすると、こんなに大変なんだな。


俺達は揃って食堂の中に入った。


ああ。


中の様子を一目見て、俺は落胆する。メッチャ混んでるやん。無理矢理食事しようと思えば、できないわけでもないけれど―――――どうするか。俺達は六人で顔を見合わせた。


「どうする?」


「どうしましょう」


ロイドさんとメルシスが、途方に暮れる。


「もう少ししてから出直すか?それとも、無理矢理割り込む?」


俺達を見回すクライヴさん。やっぱり、その二択だよな。


「.....一回戻るかぁ」


メルシスが諦めを口に出す。そうだな。俺は首肯した。


「うーん。それじゃあ......みんな携帯は持ってるよね?」


クライヴさんが、腕組みしながら俺達に携帯電話のや有無を確認する。当然、全員が首肯いた。


「それじゃあ、みんなの連絡先を交換しよう。俺がここに残って、食堂が空いたら君達に連絡するよ。それまでは、君達は部屋で待機していてくれ」


「いえ、年長のクライヴさんにそれをお任せするのは悪いです。俺が変わりますよ」


ロイドさんが、すかさず代役を名乗り出る。


「いいよいいよ。俺達はここに、勇者選抜者として招かれているんだ。その間柄に、年齢や地位は関係ないだろ?」


「まぁ、それはそうですけれど――――――」


「なら、いいじゃないか。俺に任せてくれ」


ロイドさんが言いくるめられ、結局クライヴさん一人が残ることになった。全員の連絡先を交換し合い、ロイドさんがクライヴさんから部屋の鍵を受け取る。


「じゃあ、空いたようならすぐ連絡するから。いつでも来れるようにしといてくれ」


クライヴさん一人を食堂の前に残し、俺達は部屋へ戻った。


部屋でトランプやらをして暇を潰していた俺達に、クライヴさんからCOME ON の連絡が来たのは、八時を大分過ぎてからだった。

次回更新は土曜日です。

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