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Near Real  作者: 東田 悼侃
第二章 遠征編
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6th story 入寮

新暦初の“魔族討伐隊”の招集日。俺は両親やユグ達友人に一時の別れを告げると、再び“アクピス教”総本山“ペルセポリス”へと向かった。前回、結成集会であそこへ行ったときは、大講堂と大ホールの二つの建物しか使わなかったが、今日からはその奥の神殿の、その更に奥にある討伐隊のための様々な施設に世話となる。


俺達選抜者は大講堂へと集められた。今日は全体で三万人程度で、厳かに結成式が執り行われる。参加者は俺達勇者選抜者一万人と、アクピス教の軍事部含む関係者一万八千人、千人の来賓と、千人の魔法使いの選抜者。


魔法使いの選抜者は、俺達勇者の選抜者と同じ様に、全人類の中でも特に秀でた者達を集めたそうだ。


魔法って結構、戦闘向けなイメージが定着してたりするけど、実際のところ一般的な魔法使いの繰り出す魔法は、焚き火に火をつけたり、扇風機やクーラー代わりの風を起こしたりとか、その程度のものだ。


ただ、今回集められた千人の選抜者の様なレベルになってくると、例えば一人だけで文字通り人間発電所になれたり、人工的に大規模な津波を作れたりとか、そんな感じになってくる。


魔法使い達は、俺達が魔族と戦っているところを、後方から支援してくれるそうだ。何にせよ、魔法使いが居る限りは、戦場で火、水、灯りに困ることはない。ありがたいことだ。


前回の集会でお偉いさん方は大体話しているから、今回の結成式は小一時間程で終了した。


その後、来賓の方と教団関係者のほとんどが退席し、一部の軍の人間と俺達選抜者一万千人だけが講堂内に残った。


前方のステージ上に、スクリーンが下ろされる。これから二時間弱、俺達“討伐隊”についての、様々な説明が軍の上官からなされる。


静粛に、とアナウンスが入る。準備が終わったようだ。壇上に男が一人立った。軍服に身を包んでいる。


「初めまして。アクピス教軍事部副長官のカストロ・カロンだ。今日は私からみなさんに、今回の“魔族討伐”についての説明を二時間ほどさせていただく。重要な話なので、居眠りはしないように」


副長官を名乗るカロンさんは、手元のパソコンを操作してスクリーン上にスライドを写し出した。白紙の背景に、“魔族討伐隊”と書かれた、堅苦しいスライドだ。


「さて、一ヶ月ほど前に皆様のところへ選考のためお邪魔した時にも説明したとは思うが、この“人類の聖戦”以来、そして新暦になって初の“討伐隊”の目標は、魔族によって魔境に設置された“第二防衛線”の突破だ。主戦力は今回選抜された、君達一万人の“勇者”と、千人の“魔法使い”だ。これから一年程度の訓練を積んだあと、魔境への遠征を開始する。遠征の予定日は、来年の新暦27年、9月10日だ。遠征期間の上限は二ヶ月。それを越した場合、戦線がどんな状況であろうと、本隊は撤退する。装備は現在検討中だ。発表まで、もうしばらく待っていただきたい」


あのキャンプの時のように、またサブマシンガンが配給されたりするのかな。今度はそれを、魔族に向けるのか....


「次に訓練についての説明だ。最初に約三ヶ月、勇者達は基礎体力を高めるトレーニングを行い、魔法使いには基礎魔力を高めてもらう。この訓練が、一年の中で最もキツいものにはなると思うが、君達には是が非でも頑張って乗り越えてもらいたい。これが終わると次は四ヶ月の間、勇者五十名、魔法使い五名のチームを二百組作り、チームで団体戦術を学んでもらう。四ヶ月の訓練を終えれば、一ヶ月かけて団体ごとの模擬戦闘の大会を行う。そしてその後、残りの四ヶ月で実践形式の訓練を済ませる。なるべく本番を想定した上で、個対個、個対集団、集団対集団の戦い方などを学んでもらう。そして四ヶ月経てば、遠征だ。君達の生涯の中で、最も厳しい一年になるかもしれない、といことを覚悟しておいてくれ」


やってやるさ、やってやるとも。もっと力をつけて、何があろうと仲間を守れるようになってやる。


副長官、カロンさんの話が全て終わったのは、それから丁度二時間後だった。説明も終わり、大講堂からやっと解放された俺達は、これから一年間世話になる宿舎に案内された。


宿舎は全部で三棟あり、手前一棟は女子寮、奥二棟が男子寮だ。


宿舎は五階建てで、一棟につき大体六百個ぐらい部屋がある。

部屋と言っても、二段ベッドが三つ、入り口に向けて逆U字型にに置かれているだけでぎゅうぎゅうの、本当に寝るだけのスペースしかない。そこに六人ずつ押し込まれる。狭そうだ。


部屋割りは既に向こうに決められているようだ。俺達に渡された一万千人分の名簿の、それぞれの名前の横に、番号が書かれてあった。俺の部屋番号は“2365” 二棟の365号室だ。


部屋番号を確認すると、俺は荷物を持って移動を開始した。


部屋は二棟の三階にあった。入り口の前で、何度か名簿と部屋番号を照らし合わせた後、俺は扉を開けた。入って右側のベッドの上段で、ムクリと誰かが起き上がる。先客がいたようだ。


「入り口でつっかえてても邪魔やから、先に好きなところ取らせてもらったで......って、シェル?」


メルシスだった。


「おー、君もこの部屋か?奇跡みたいな偶然やなあ。ほら、とっとと入り。他が来る前に、好きなところ取っちまえ」


ベッドの上ら俺を手招きするメルシス。俺は靴を脱いで中に上がると、左側のベッドの下段を占領した。


「何や、上じゃないのか?」


メルシスが俺に聞く。俺は首肯いた。


「何か、下の方が好きなんだよね。この閉塞感というか、圧迫感というかがいいんだよ」


「.......とりあえず、お前が変人なのはよく分かった」


ちゃっかり、“君”から“お前”に呼称を変えやがった。抜け目ない奴め。いいんだけどさ、別に。


十五分後、部屋のメンバー六人が全員揃った。メルシス以外には、みんな知らない人だ。俺達はそれぞれ、入室順に自分の定位置を決めてそれに落ち着くと、六人で向き合った。


「よし、そいじゃ、自己紹介からしましょうや。先ずはワイから。名前はアテラ・メルシス。十六歳ですわ。高校はオリエンティア高校で、一年の勇者です。よろしくお願いします」


「オリエンティア?」


メルシスの下の段の男が、その単語に反応した。俺は全く聞いたことない名前なんだけどな。


「じゃあ、次は俺が」


俺の上から声がする。俺は首を伸ばして上を覗いた。俺よりも年上っぽい人だ。


「俺はロイド・キルギス。アステクト高校の二年生勇者だ。そこの奴とは同級生。よろしく」


ロイドさんは二段ベッドの上から、一番奥のベッドの下の段を指差した。


「.........マーク・ハンス.......魔法使い....二年」


ロイドさんに示された男は、そう名乗った。魔法使いも同じ部屋に居るんだ。


「こめんごめん。こいつ、こういう奴なんだ。きっとみんなとは仲良くしたいと思っているから、どうかよろしく」


ハンスさんは、フンと鼻を鳴らすと、視線を壁に向けた。


アステクト高校か。それなら知っているぞ。勉強も運動も、トップクラスのレベルでなきゃ入学できない、超難関校だ。ちらっと入学条件を見たことがあるけど、かなりエグい。学力診断テストで、八百満点中七百二十点以上必須。かつ、体力テストで十種目中六種目の満点が必要。文武両道を地で行く学校だ。


「次は俺かな?俺はウラニア・クライヴ。二十四歳の平社員だ。この中では、一番年上かな?何かあったら相談に乗るよ。少ししか力にはなれないかもしれないけど」


ハンスさんの上の段に、クライヴさんは陣取っていた。眼鏡と勇者って、イメージが相反するものだね。


「俺様はルージュ・ナポレオン。人類最強のヒデ・ヤマトに最も近い男だ。俺と同じ部屋で寝泊まりできることを光栄に思うが良い」


メルシスの下の段の男が名乗る。スゲー自信満々な奴だ。でも、ここに選ばれてるからには、普通に実力者なんだよな。でも何か、うざったい。


最後に俺の番が回ってきた。


「シェル・クライマン。神陵高校一年の勇者です。よろしくお願いします」


なかなか濃そうなメンバーだ。

お待たせしました。今日も調子が悪かったのですが、なんとかギリギリに書き終わり.....


また、新しいメンバーが登場。そろそろ、登場人物の一覧でも作ろうと思ってます。


次回更新は水曜日です。

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