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Near Real  作者: 東田 悼侃
第四章 破壊編
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10th story 試練 3

シェルは、魔法に関してはほとんど知識を持ち合わせていなかった。そのため、ハンスの周りに流れる魔力の質が変化したことにも気付けなかった。


シェルは、如何にハンスを倒そうかと、思考を巡らせていた。魔法が想像以上に厄介だ。中・遠距離では、シェルが圧倒的に不利になり、近距離ではシェルが優位に立てるものの、最後の最後まで押しきれない。特に、危機になるとハンスが張り巡らせる障壁が邪魔だった。恐らく、二人の魔王から授かった剣で斬りつければ、その障壁も破壊できるだろうことは、シェルも勘づいていた。しかし、ハンスが障壁を体にほぼ密着させて展開させてしまうため、障壁を斬り破ってしまうと、ハンスの体ごと真っ二つにしかねなかった。


<つまり、あいつを倒すのには、不意打ちの他ない>


しかも、障壁を展開されないよう、全く気付かれずに。


<―――ほぼ無理ゲーじゃねえか>


ハンスの目は、常にシェルを捉えている。シェルが不審な挙動を見せたり、視界から消えたりすれば、危険を感じた彼は直ぐに障壁を展開し、その中に閉じ籠ってしまうだろう。


<持久戦か?>


ハンスの集中力が途切れた瞬間を狙うしかない。


シェルがふとハンスの表情を覗くと、ハンスは口許に笑みを浮かべていた。ハンスの、勝ちを確信した笑みだった。


何かヤバイ。シェルは咄嗟にその場を飛び退いた。


しかし、時は既に遅し。


シェルの周囲を囲むように、地面が壁のように盛り上がってきた。


「しまっ!」


壁の隆起はかなりの早さで、シェルは脱出する暇もなく、周りを完全に壁に囲まれた。不意に、頭上から熱気がシェルを襲う。シェルは空を仰いだ。これまでとは別格の大きさの火球が、シェルの頭上にあった。


「今降参すれば、この火球を引っ込められるが?」


壁の外からハンスがシェルに尋ねた。しかしシェルは、彼の警告を断る。


「嫌だね。誰が降参なんてするものか。殺せるものなら、殺してみろよ」


「ああ、やってやるよ。覚悟しろ」


ズズ、と頭上の巨大な火球が高度を下げ始めた。壁の中の気温が一気に上昇する。しかし、内部のシェルは落ち着いていた。


「素人が振っても、岩ぐらいなら簡単に斬れるんだよな」


タムズの言葉を、シェルは思い出す。


「だったら、これぐらいの土の壁、簡単に削れねえとなぁ」


火球が壁内部を完全に覆う。ハンスは荒いだ呼吸をそのままに、火球と土壁を解除した。高く築き上げられていた壁がどっと崩壊し、土煙が周囲一帯を覆う。


「やった―――か?」


土煙の中、目を凝らしながらハンスは呟いた。しかし、


「ハンス!まだだ!」


ハンスと仲の良い、ロイドが叫んだ。


「これでもくたばらないのか!?」


ハンスは慌てて、体の周囲に障壁を張り巡らそうとし、


「俺の勝ちだ」


気絶した。


土煙が晴れ、その中での様子が明らかになる。両手に剣を持ち仁王立ちするシェルの足元に、ハンスが倒れていた。


「ハンス!」


気絶した親友の名を叫びながら、ロイドは飛び出した。


「まだ生きてる。安心しろ」


シェルがロイドに言うが、ロイドは足を止めなかった。


「ぶん殴ってやるよ!シェルッ!!」


肩に掛けた銃をかなぐり捨てたロイドを見て、シェルも剣を納めた。

次回更新は土曜日です。

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