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Near Real  作者: 東田 悼侃
第四章 破壊編
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8th story 試練

タタン、と小刻みに二発の銃声がし、セムの持つ銃の先端から煙が立つ。しかし、シェルは既に、その射線上から姿を消していた。見当外れな地面に、二つの小さな穴が空く。セムはすぐさま、その場から飛び退いた。鼻の先を、シェルの斬撃が掠める。それに対しセムは、空中で銃を構え、シェルに向かって発砲した。そのまま、あえて反動に身を任せ、後方に着地する。しかし、着地の瞬間には既に、シェルが懐まで潜り込んでいた。シェルの剣が下から迫る。


「危なッ!」


セムは上体を仰け反らせると、両手に抱える銃で、シェルの剣を受け止めようとした。比較的小柄な体型のセムは、シェルと比べると力負けする。シェルの斬撃を真っ正面から受ければ、弾かれる様子は目に見えていた。だが、そうする他にない。セムはとにかく、どうにかそれを抑えきろうとした。が、刃と銃身の衝突の瞬間に、衝撃は一切なかった。シェルの振った剣がセムの頭上に上がる。空振りしたのか。とすれば、本命は逆の手に持つ、もう一本の剣。シェルの振り上げていない手に、セムが目を向ける。その途中で目に入ったものに、セムの目は釘付けになった。


「嘘だろ」


そうぼやく。セムが目にしたものは、余りにも現実離れしていた。


「抵抗なく、これを?」


セムの持つ銃が、真っ二つに切断されていた。シェルの斬撃は、決して空振りではなかった。しっかりと、セムの武器を切断していた。


「どんな切れ味してるんだよ。そりゃ反則だろ」


唖然とするセムに対し、シェルは切り上げた剣を返し、切り下ろした。しかし、切っ先がセムに届く前に、シェルの脇腹に衝撃が走り、シェルは側面に転げた。


二度、三度と地上を回転し、シェルは体勢を立て直す。シェルを脇から蹴ったのは、かつての討伐隊で、シェルが寝床を共にした、アテラ・メルシスだった。


「おいおい、容赦ないな、シェル。何の躊躇いもなく切り捨てようとするか」


「言ったはずだ。これは殺し合いだと」


「ダチ同士でか?お前、どんだけこじらせてんねん」


「家族を守るためだ。仕方ないだろ」


「家族――――両親か?」


メルシスの表情が、悲痛に歪む。


「お前の両親は―――」


「違う」


メルシスの言葉を、シェルが遮る。


「嫁だ」


メルシスは思わず噴き出した。周りで話を聞いていた皆も、ポカンと口を開ける。


「お前――――結婚、したのか?」


セムが尋ねると、シェルはゆっくり頷いた。


「もしかして―――魔族と?」


セムの問いに、シェルは再び頷く。セムは溜め息を吐いた。


「たまげたな、こりゃ」


「だから、死ぬわけにはいかないんだ」


「お涙頂戴か?」


メルシスが怪訝そうに尋ねる。


「いいや、全く」


「残念だが、こっちにも命を懸けなきゃいかん理由がある。だから、お前が容赦しないと言うのなら、俺達も全力になる他ないぞ」


「―――望むまで」


シェルは荒い息を、深呼吸で整えた。


「ったく。こんなに世話のかかるダチ、俺は他に知らねえよ」


メルシスが、肩に掛けていた銃を両手で抱える。


「俺がやる。手助けは要らねぇ。周りで見てろ」


シェルは両手に持つ剣を構え、メルシスと対峙した。


「来いよ、シェル。相手してやるよ」

気付いたら、投稿開始からもう一年が経過していました。


ここまで読み続けてきてくれた皆様には感謝です。


ここまで長い期間、一つの話を書き続けたのは初めての経験で、正直、作者が一番ビックリしています。


多分、あと半年もあれば確実に話は終わると思います。と言うよりも、半年を超えるとなると、、現実的な問題で続けられないと思います。


これからも多少グダる事はあるかもしれませんが、最後までシェルの活躍をお楽しみください。



次回更新は土曜日です。

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