7th story 再会
「出てきたか―――」
魔族討伐隊の前に、立ちはだかるようにして現れた男を目にし、セム・ウルクは呟いた。
「指揮官」
セムは自身の後方の指揮官に体を向けた。
「“彼”が登場しました。前にも言ったように、“彼”は俺達にやらせてください」
指揮官はセムを一瞥すると、表情を変えずに言った。
「駄目だ」
「お願いします。“彼”があああなってしまったのには、少なからず俺達にも責任があります。そのけじめをつけさせてください」
セムは食い下がった。
「それで、お前達が結託して裏切ったら、どうするのだ」
「俺達が裏切ったところで、この戦力を前にしては、為す術もありません」
「特に問題はない、と」
「はい」
「優秀な覚醒勇者であるお前や、サルゴニア・コシチューシコが死んでも、問題はないと?」
指揮官の言葉に、セムは黙り込んだ。
「これでも、俺はお前を買っているんだ。ヒデ・ヤマトの後継者の次点ぐらいには見ているんだぞ」
「しかし―――」
「駄目なものは駄目だ。奴の事は諦めろ。裏切り者は、我々の手で葬る」
「指揮官、俺からもお願いします」
項垂れるセムの脇から、サルゴニア・コシチューシコが現れた。
「“彼”は、俺達にやらせてください。俺たちの手であの世に送ってやりたいんです。それに、俺は今や、れっきとした“アクピス教”の一員です。それだったら、問題ないですよね」
サルゴンが指揮官に訴えかける。指揮官は、しばらくの間唸りながら思考した。
「仮に裏切った場合、お前達の家族は、祖国で処刑となるぞ。奴と同じようにな。わかっているだろうな」
「ッ!―――はい」
指揮官の発した言葉に、二人はうつむいて唇を噛み締めた。
「なら良いだろう。お前達でやるといい」
「ありがとうございます―――」
二人は指揮官に一礼すると、踵を返した。
「―――サルゴン、君は武術部員を。俺は前回の討伐隊で、あいつと親しかった奴を連れてくる」
「分かりました、部長」
二人はそれぞれ別れると、“彼”と対峙するメンバーを集めにかかった。
十分後、二人は六人のメンバーを連れて、最前線へと出た。討伐隊の前に立つ“彼”と向き合う。
「―――部長」
立ちはだかる“彼”は、セムを見て呟いた。
「久しぶりだな、シェル。どうだ、元気にしてたか」
「ええ、まあ。お陰様で」
セム達八人は、ゆっくりとシェルに向かって歩んだ。
「お前の相手は、俺達に任されたよ。さあシェル、言ったよな?俺と殺し合う覚悟は出来ているって。今、それを証明してくれよ」
「―――ええ。こうなることは予想していましたから」
「」それじゃあ
セムは肩にかけていた銃を構えた。
「あ、待ってください」
しかし、シェルがそれを制する。
「どうした。武器がほしいのか」
「いえ、武器はこれで結構です」
シェルは両腰に差した剣を叩いた。
「そうじゃあなくて――聞きたいんです。最後に一度だけ」
「何をだい」
セムは首を捻った。
「俺と一緒に、魔族と共に生きていく気はありませんか?」
「済まないな」
しかしセムは、それを受け入れなかった。
「そうはできないんだ。そう出来ない理由があるんだ」
「そうですが―――分かりました」
シェルはうつむいた。
「じゃあ――――始めましょうか」
シェルは両腰の剣を引き抜くと構えた。
次回更新は水曜日です。