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Near Real  作者: 東田 悼侃
第四章 破壊編
102/119

7th story 再会

「出てきたか―――」


魔族討伐隊の前に、立ちはだかるようにして現れた男を目にし、セム・ウルクは呟いた。


「指揮官」


セムは自身の後方の指揮官に体を向けた。


「“彼”が登場しました。前にも言ったように、“彼”は俺達にやらせてください」


指揮官はセムを一瞥すると、表情を変えずに言った。


「駄目だ」


「お願いします。“彼”があああなってしまったのには、少なからず俺達にも責任があります。そのけじめをつけさせてください」


セムは食い下がった。


「それで、お前達が結託して裏切ったら、どうするのだ」


「俺達が裏切ったところで、この戦力を前にしては、為す術もありません」


「特に問題はない、と」


「はい」


「優秀な覚醒勇者であるお前や、サルゴニア・コシチューシコが死んでも、問題はないと?」


指揮官の言葉に、セムは黙り込んだ。


「これでも、俺はお前を買っているんだ。ヒデ・ヤマトの後継者の次点ぐらいには見ているんだぞ」


「しかし―――」


「駄目なものは駄目だ。奴の事は諦めろ。裏切り者は、我々の手で葬る」


「指揮官、俺からもお願いします」


項垂れるセムの脇から、サルゴニア・コシチューシコが現れた。


「“彼”は、俺達にやらせてください。俺たちの手であの世に送ってやりたいんです。それに、俺は今や、れっきとした“アクピス教”の一員です。それだったら、問題ないですよね」


サルゴンが指揮官に訴えかける。指揮官は、しばらくの間唸りながら思考した。


「仮に裏切った場合、お前達の家族は、祖国で処刑となるぞ。奴と同じようにな。わかっているだろうな」


「ッ!―――はい」


指揮官の発した言葉に、二人はうつむいて唇を噛み締めた。


「なら良いだろう。お前達でやるといい」


「ありがとうございます―――」


二人は指揮官に一礼すると、踵を返した。


「―――サルゴン、君は武術部員を。俺は前回の討伐隊で、あいつと親しかった奴を連れてくる」


「分かりました、部長」


二人はそれぞれ別れると、“彼”と対峙するメンバーを集めにかかった。


十分後、二人は六人のメンバーを連れて、最前線へと出た。討伐隊の前に立つ“彼”と向き合う。


「―――部長」


立ちはだかる“彼”は、セムを見て呟いた。


「久しぶりだな、シェル。どうだ、元気にしてたか」


「ええ、まあ。お陰様で」


セム達八人は、ゆっくりとシェルに向かって歩んだ。


「お前の相手は、俺達に任されたよ。さあシェル、言ったよな?俺と殺し合う覚悟は出来ているって。今、それを証明してくれよ」


「―――ええ。こうなることは予想していましたから」


「」それじゃあ


セムは肩にかけていた銃を構えた。


「あ、待ってください」


しかし、シェルがそれを制する。


「どうした。武器がほしいのか」


「いえ、武器はこれで結構です」


シェルは両腰に差した剣を叩いた。


「そうじゃあなくて――聞きたいんです。最後に一度だけ」


「何をだい」


セムは首を捻った。


「俺と一緒に、魔族と共に生きていく気はありませんか?」


「済まないな」


しかしセムは、それを受け入れなかった。


「そうはできないんだ。そう出来ない理由があるんだ」


「そうですが―――分かりました」


シェルはうつむいた。


「じゃあ――――始めましょうか」


シェルは両腰の剣を引き抜くと構えた。

次回更新は水曜日です。

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