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Near Real  作者: 東田 悼侃
第一章 日常編
1/119

prologue


 大問3

   問4

     旧暦597年から648年にかけて起きた、魔族から人類の神聖なる大地と歴史を守った戦争の事を何と言うか。


                  答え.人類の聖戦


  (新暦16年度神陵高等学校新入生実力診断試験社会科歴史 抜粋)










 <入学式日和だな。桜が満開だ>


 開け放した玄関口から見える桜の木を眺めながら、俺は靴紐を結んだ。 そっと立ちあがり、まだ二階で寝ている両親を起こさないよう家を出る。 反抗期というわけではない。 確かに、親を鬱陶しいと思う気持ちはあるが、それ以上に感謝している。 自分の人生のおよそ五分の一を投げ打ってまで、俺をここまで育ててきてくれたのだ。


 とまぁ、そんなことはどうでもいい。重要なのは、青春マンガの定番である「入学式・新学期の朝から遅刻」という、あの謎のシチュエーションに遭遇しないということだ。 入学式初日にあんなことをやらかすのは、かなり不味い。そういう第一印象を抱かれると、今後の学校生活に支障を来す恐れがある。

だから、十分なゆとりを持つために、昨晩のうちに荷物は纏めておいたし、今日も家を出る二時間前に起きるようにした。服装にも乱れはない。あとは、通学中のハプニングさえなければ。


 俺の家から学校までは徒歩十五分の距離にある。十分歩いていける距離で、実に健康的だ。


 学校へ着くまでの間、俺がこれまでに習ってきた人類の歴史を、ざっとおさらいすることにしよう。


 記録が残っている限り、人類の歴史はおよそ2千500年前から始まる。


   起源元年 この人類領域に、神が舞い降りる。神の名は「ピシウス」 「ピシウス」が人類を創り出し、その歴史が始まる。


   起源1500年 海に進出した人類は、新大陸を発見する。それから百年程経ち、新大陸に住む「魔族」と遭遇。「魔族」は、人類と似たような姿をした、紫色の肌を持つ生物で、その全貌は未だ明らかになっていない。人間のおよそ二倍の力を持つその「魔族」を発見した人類は、「魔族」の住む新大陸「魔境」を手に入れるため、侵略を決行。しかし、失敗に終わる。


 旧暦元(起源千581年) 人類の中に、「勇者」が誕生する。


 旧暦174年 王室が誕生。180年から、魔族討伐の為の軍事遠征が始まる。


 217年 伝染病が流行。ウイルス撲滅までの百年間に、人口が12%減少。


 439年 遠征隊が廃止され、新たに討伐隊が編成される。


 483年 度重なる討伐隊による税負担により、農民反乱が起こる。


 500年 建国500年記念式典で国王暗殺。翌年から527年まで、跡継ぎをめぐり内戦が勃発。


 554年 国王の暴政に国民反乱。翌年国王失踪。


 556年 議会設立。


 574年 初めて魔境の一部を奪取。


 597年 魔族が人類領域に攻め込んでける。648年までの大戦争に発展。人類の聖戦と呼ばれる。


 658年 議会解体。


 新暦元(旧暦659)年 国民主権国家体制が成立。


 そして新暦7年 身分階級の撤廃ののち、人類初の完全成果主義学校が開校。

それが、今日から俺が通う、神陵高校の前身だ。



 ざっと簡単に人類史を振り返ると、こんな感じだ。もっと細かい出来事を挙げるとキリがないが、その歴史の大半が魔境への侵略だ。それも、ほぼ一方的な、である。


 歴史上、人類が魔境へ侵略を行使した回数は十四回。対して、魔族が人類領域に進行してきたのは、たったの二回である。人類の魔境侵略の方が、圧倒的に多い。

しかし、それが二種族間の力関係に直結しているわけではない。事実、人類はこれまで一度も魔境侵略で目標を達成したことがない。大概、ボロクソに負けて帰ってくる。


 実際のところ、人類領域にはまだ土地の余裕はあるわけだが、それなのに二千年近くも同じ事を繰り返し、失敗し続けているのにまだ魔境侵略を止めないのは、負け越して終わることが嫌なだけの、人類のちっぽけなプライドでしかないだろう。同じ人間としても、呆れるばかりだ。




 校舎の屋根が見えてきた。特に何のハプニングもなく着きそうだ。


 いよいよ、俺の高校生活が始まる。

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