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絵ごころ引力  作者: yomo
6/21

「空の港へ」

 典秀は、すっかり忘れていた。両親の訪問を……。リビングで横になっている宮元さんはもっと予定外。旅行に行く両親は、なにか浮かれ気味にも思われる。当然と言えば当然。翌朝は、宮元さんも一緒に同行して空港に向かう。これが、事実上はじめてのデートになる?と典秀は実感し始める。


 先に家の中に入った両親の声……。

 リビングのソファーでは、宮元さんが眠っている!


 私は、そ~っとリビングをのぞき込みました。


「これはその……。なっ!」


 仁王立ちで、彼女を見ている二人がいました。

 いくら眠っているとはいえぇぇぇ~!


「何をマジマジと見てるんだよ!」

「お前の彼女か?」


「彼女じゃないけど……。まだね」


 何だよ突然!?

 父さんは、やぶから棒に!


「じゃあ何だ?」


 じゃあ何だって言われても?


「知り合いだよ。絵を描くスケッチの!」

「スケッ!? 典秀、お前が絵なんか描くのか?」


「あなたは知らないと思うわよ。仕事が一番でしたからね。典ちゃんは上手いのよ!」


 何も知らないくせに。

 父さんは、仕事でいつも家にいなかった……。

 そのせいか小学校の時の行事は、いつも母さんしかいなかった。


「あ~。二人とも荷物置いて来ればいいよ」 

「そうねそうね。あなた荷物を置きに行きましょう」


「どうした? 急に?」


 ありがとう母さん。

 まったく父さんは……


 私は、宮元さんの肩を軽くたたきました……

 ちょっと強くゆすってもみました。


「んっ!? 典秀さん……」

「お酒飲めないなら言ってくれればいいのに」


「なんか飲めそうな気がしたんです」


 彼女に、水を一杯手渡しました。


「ありがとうございます」

「目が覚めましたかな?」


「えっ!? あの~……」


 早々(はやばや)と、父さんが戻って来ました。

 少し遅れて母さんが入って来ました。


「ウチの両親です。突然でゴメン」

「あっ! 初めまして宮元 亜美と申します」


「亜美さんか。良い名前ですな」


 前妻の奈緒の時とは、何か接し方が違う様な気がします……


「ありがとうございます! 典秀さんとは、お付き合いさせていただいています!」

「な~っ……!」


「そうですか~。よろしく頼みますよ。不器用者ですからな! はははははっ!」


 何を突然言い出すんだ?

 宮元さんは……


 やっぱり彼氏と何かあったのか?

 やけになってるのか?


「私……。帰ります! まだバスあると思いますから」

「ゆっくりしていけばいいのに。 私らが気になるのかな?」


「あははっ……。是非、今度ゆっくりと。失礼します!」


 父さん、ここはオレの家だよ!

 それに、考えてみれば初対面で寝顔を見られて?

 いやいや、のぞかれた様なものだからな。


「ちょっと行って来る!」


 玄関を出た時です!


「典秀さん!」


 後ろ!?


 次の瞬間です!

 彼女がそっと抱き付いて来ました!


「宮も……! とさん?」


 彼女が背伸びをして……

 私の唇に宮元さんの唇が触れています!


「今日は、帰ります。ありがとうございました!」

「あっ! 宮元さん!」


「また、スケッチに行きましょうね!」


 行かせてしまうのか?

 父さんが言った様に、私は不器用なのかも知れません。


 ……彼女は、行ってしまいました。


「何が絵を描く知り合いだ? ちゃんと彼女いるじゃないか」

「まっ!? まさか見てたのか? 勘弁してくれよ父さん!」


「ドラマみたいね典ちゃん! 大切にしなさいね。今度は、逃がしちゃダメよ!」


 家に入るなり、何だよ二人して!?


「でも、彼氏いるんだよね。宮元さんには」

「あらっ! 典ちゃん? あなた浮気相手になちゃうの?」


「けしからん! それは許せんな!」


 余計な事言わなければよかった。

 後悔しています。


「だから、さっきのも彼女が……」

「男らしくないぞ! 言い訳なんぞ!」


「……もしもし宮元さん?」


 父さんと話しているすきに!?


「母さん! なに勝手に人の携帯を!」

「どれっ! 貸しなさい! あ~もしもし!」


「とうさ……! うわっ! 痛……」


 今の私は、父さんに押さえ込まれている状態!

 なんとかって言う武術に最近ハマっているらしい。


「あぁ~、典秀の父だが! あんた他に彼氏がいるのか? 動くな典秀」


 何を馬鹿な事を聞いているんだ父さんは!?


「その言葉に偽りは無いな!! 気を付けて戻りなさい。それじゃあな」


 父さんの呪縛からやっと解放されました。

 腕が痛い……


「ほら返すぞ! 喜べ! いないそうだお前以外に男は」

「そんなバカな!? だって……」


「もう一回掛ける? 典ちゃん」


 携帯を持った手が震えています……

 両親が私を見つめています。


「取りあえず座ろう! 後で直接話してみるよ。明日にでも」

「そうね。それが良いかも知れないわね」


「ワシは、彼女を信じるぞ! 悪いが、風呂入りたいんだが?」


 父さんは、敵なのか味方なのか?

 とにかく明日、聞いてみよう。


「風呂? いいよ。今入れるよ」


 ちょっと、高めの温度にしておこうか?



「あぁ~! やっぱり風呂は熱めじゃなければなっ!」


 顔を真っ赤にして、父さんが風呂から出て来ました。

 逆に喜ばれた?


「一本もらうぞ!」

「あぁ。何本でも好きにどうぞ!」


「だぁ~うまい! 明日早いんだ何本も飲めるか! もう一本はもらうけどな。は~ははっ!」


 良いよな~。

 結構、定期的に二人して、どっか行ってるもんな。

 うらやましいよ。


「そうだ会社休んでお前も行くか? あぁ残念だ~。チケットが無いか?」

「ごめんね典ちゃん。ものすごく楽しみなの。この人」


「そうだね。見れば分かるよ」


 何でも、国内で何十年ぶりかの皆既日食を見に行くんだとか。


「明日の送りよろしくな!」

「なっ!? だって空港に止めるんじゃなかったっけ?」


「誰もそんな事は、一言も言っとらんぞ! さぁ寝るぞ!」


 行っちゃったよ……


「母さん……」

「明日は、よろしくね典ちゃん。彼女に電話したら?」


「あぁ……」


 自由人だな~!

 ホントうらやましいよ。


「大丈夫かな電話しても?」

「平気よ~! じゃあね。おやすみなさい。……ほら早く電話! 電話!」


「分かりました。おやすみ」


 ……本当に平気かな~?

 私は、電話を掛けてみました。


「もしもし。さっきは、父さんが変な事言ってごめんね」

「大丈夫ですよ」


 何だか聞きづらいな~。

 これは、父さんがくれたチャンス?

 いや、母さんがくれたチャンスかも知れない。


 よしっ! 


「唐突だけど、本当に彼氏っていないの?」

「はい。いませんよ」


「あれ? 事務所に……ほら仲の良い」


 あっさり返されたけど最近も見たぞ!


「あぁ~。よっちゃんの事ですか? あの子はいとこですよ」

「いとこ!? よっちゃん! ははっ……。そうなんだ~」


「何か?」


 切り返し!

 切り返し!

 話しを繋げろ!


「明日、父さん達を空港まで送って行くんだけど。一緒にどうかなって?」

「いいですよ」


「本当っ! ちょっと早いんだけど迎えに行くよ! それじゃあ明日」


 よしっ!!!


「んっ!?」


 人の気配!

 ふすまを開けて見ました。


「もう……。見てた今の?」

「良かったな典秀」


「おやすみね。典ちゃん」


 どれだけ心配なんだよ。

 ……親だからか?


「あ~あ。寝よ」



-翌朝- 


「おはよう典ちゃん」

「おはよう。父さんは?」


「もうすぐ来るわよ」


 宮元さんにも、さっき連絡したから大丈夫だし……


「よし! 亜美さんレッツゴーだな!」

「何をはりきってるんだよ! 父さんは……」


「ささっ! 行きましょう!」


 母さんまで……


 東の空が明るくなって来ました。

 彼女は、家の前で待っていてくれました。


「亜美さ~ん。おはよう!」

「おはようございます」


「おはよう宮元さん」


 彼女を車に乗せて出発です。


「皆既日食ですか。うらやましいですね」

「行くかい!? 亜美さんも」


「あなた~! ごめんね亜美さん」


 そろそろ、穏やかな母さんも……


「母さん? 父さんって、こんな感じだっけ?」

「そうなのよ! いい歳して恥ずかしいわ」


「要らない事を言うんじゃない! お前は!」


 母さんも大変だな。


「私、気にしてませんから大丈夫ですよ」

「ほらっ! 見なさい。お土産期待して待っててね亜美さん」


「朝ごはん、コンビニでも寄ろうか?」


 空気を変える為に話題を振った。


「私、おにぎり作って来たんですけど。食べますか?」

「いただこうかな! 亜美さんの手作りおにぎり! おっ昆布だな」


「おかずは、簡単ですけど……。どうぞ」


 なんて気が利く女性ひとなんだ。


 私も一つもらいました。

 中に入っていたのは紅サケでした。


「うまいぞ! 亜美さん!」

「ありがとうございます」


「……」


 母さんは、少しあきれているのでしょうか?

 会話に入って来ませんでした。


 その後も、車の中は遠足のようでした。

 私達は、無事に空港に到着しパーキングに車を止めました。


「お気を付けて」

「ありがとう亜美さん」


「母さん、楽しんで来てね」


 どれだけ気に入っているんだよ父さんは!?


「行っちゃったよ。 大丈夫かな?」

「平気ですよ。しっかりとしたお母様が付いていますもの」


「……そうだね。じゃあ展望デッキにでも行ってみる?」


 このまま帰るのはもったいない。

 展望デッキは少し風があり、飛行機が次々と飛び立って行くのが見えます。


 辺りには、見送る人?

 カメラを持って写真を撮っている人。

 結構、人がいます。


「すごいですよね。あんな大きな物が飛ぶんですよ」

「そうだね。人間ってすごいよね。あんなの作るんだから」


「そうなんです! 人間はすごいんです!」


 宮元さんどうした?


「見てると飽きないね。でも下に降りる?」

「もう少し、いいですか? もう少しだけ」


「うん、いいよ」


 飛行機が好きなのかな?

 気のせいか輝いて見えます。



「行きましょうか。典秀さん」

「もういいの?」


「はい! 次は向こうのターミナルです!」


 私達は、地下の連絡通路を通ってもう一方のターミナルへ向かっています。

 すれ違う人、追い越して行く人……

 それぞれの目的地を目指して行き交っています。


「こっちは、また全然違うね」

「そうですね。向こうは工場地帯。こっちは海といった感じですね」


「めったに来ないから新鮮だよ。あっ!? 座って何か飲む?」


 ずっと立っているのも疲れるしね。

 私だけ?


「さぁ、次は下に降りて、お買い物しましょう!」

「オッケー! 何が欲しい?」


「え~? 何か買ってくれるんですか?」


 空港でのデートみたいだ……

 空港デートだ!


 初のプレゼントを是非、見つけたい!

 そばにあったフリーの冊子を開いて見ました。

 宮元さんもぞき込みます。


「あっ! これかわいいですね~! でも高いですね」

「……そうだね」


「これ空港限定ですって! 行ってみましょ!」


 すごく楽しそうです!

 もちろん私も……


 なんか良い雰囲気です!

 酔いしれそうです!



次話へつづく

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