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絵ごころ引力  作者: yomo
4/21

「魅力的」

典秀のりひでは、明日のスケッチの為の道具を買いに久しぶりに画材店に行く。そこで元奥さんと会うが、もう彼女は彼女の物語を進んでいた。準備を整えた次の朝は良い天気です。待ち合わせの時間より早く着く典秀。宮元さんと行きます電車に揺られて……。

 彼女からのメールが来たのがもう先月の事。

 あっという間に時は過ぎていました。

 特にメールも無く、する事もありませんでした。


 付き合っている訳ではないので気にしていませんでした。

 彼氏がいると言う事もあるからでしょう。

 人の恋路こいじを邪魔すつもりはありません。


 今の私の勤務は夜勤ですが……。

 先月から生産数が増えて、工場は24時間稼働しても足りないくらいです。


 そして、今週の週末が宮元さんとの約束の日となります。

 まだ、画材店には実の所行けてません。

 夜勤明けに行こうと思っています。


 「絵ごころの家」にも寄って行こうと思います。



 いよいよ今日が最終日です。

 生産は、今週が山場で来週は通常くらいに戻る予定。 


 朝日が昇って来たようです。

 勤務時間も終わりが近づいています。


「お疲れさん!」

「上がります! ふぅ~」


 何とかトラブルもなく終了です。

 これから「絵ごころの家」に向かいます。


 ……また渋滞しています。

 着いた頃は、8時になろうとしていました。


「おや? やってない? 「close」となっています」


 7時43分に宮元さんからメールが届いていました。


「お疲れ様です。

 まだ車の中でしょうか?

 明日の予定ですが8時に駅でいいですか?

 小さな椅子があったら楽ですよ」


 もしかして忙しいのを気づかって…………


「やっぱりいい女性です。彼氏がうらやましい」


 それにしても、「絵ごころの家」はどうした?

 朝もやっていたはず。


 もう閉店してしまった??


 どこを見てもその様な張り紙は見あたらない。

 たまたま休みなだけの様です。


 私は、コンビニで朝と昼の食べる分を買って戻る事にしました。

 いつもの様に洗濯をした後、今日は彼女にメールをしました。


「明日、晴れるといいですね。問題ないです。色は要らないよね? では明日」


 簡易的なものなら100円ショップでも見た事がある。

 心配ないだろう。


 ……睡魔には勝てません!


 午後12時20分、アラームが鳴りました。


「う~……だるい~」


 私は、もう一度シャワーを浴びて気分を切り替えました。

 そして、車で画材店に向かっています。

 その画材店は、昔だったら大型かも知れないショッピングセンターの中にあります。


 久しぶりです!

 ありました!

 全然変わっていません!


 私は、2B、4Bの鉛筆を手に取りました。


「8Bは要らないかな? スケッチブックは……」


 スケッチブックも色々です。

 なんか懐かしい……。

 

「あれ? 典君!?」

「奈緒……」


「久しぶりだね。また描いてるの?」


 顔を上げて見ると……

 10年前に別れた元奥さんでした。


「ちょっとね。必要になって」

「出会った時もこんな感じだったね」


「あぁ、そうだね」


 それは、20年以上も前の話しです。

 忘れもしません。


「麻牧君って、絵描くの?」

「えっ? 誰?」


「ひど~い! 同じ会社でしょ!」


 この時は、全く他の人に興味がありませんでした。

 それから何度か出かけるようになりました。

 そして、籍を入れて……


 この後、一戸建て住宅を購入!

 キツかったが、そこまでは良かったのです。

 今も私はそこに住んでいる……。


 奈緒なおは、ある理由で私の前から去って行きました。

 色んな原因が重なったのだと思います。

 今考えると……。



「どうしたの? 典君!? ねぇ」

「はっ!! あぁ……何でもない」


「これからどうすんの?」


 どうすんのって言われても……

 関係ないよな。


「もうちょっと、ここに居るつもりだけど」

「私も居ようかな~」


「なんか用事あるんじゃないの?」


 関係ない。

 関係ない。


「冷たいねなんだか。……そう用事あるの。じゃあね~」

「あぁ……」


 どっちが冷たいんだよと思いながら少し素気なく答えました。

 彼女は、足早に行ってしまいました。


 あの時も、こんな別れだった気がします。

 要らない事を思い出してしまいました。


「あれ? 典君!?」

「奈緒……。ドッキリかい!?」


「嫌じゃない? あの時みたいで」


 確かに……

 私は、会計を済ませました。


「ねぇ。ちょっと時間ある?」

「いいけど。用事は?」


「ほらまた! 良くないよ典君。その突き放す感じ」


 相手の事を思って言っているだけなのに言い方が悪いのか?

 せっかく会ったんだし気まずいのも嫌だな。

 コーヒーでも飲む事にしました。


「へぇ~、そうなんだ。明日ね~。いいんじゃない」

「変な誤解しないでくれよ。純粋に絵をだな~」


「はいはい。相変わらず真面目ね~」


 世の中には、こんな男もいるんだよ!

 一度一緒になったくせに……

 こんな事言うと、また何か言われそうだ。


「あっ! ごめん。子供むかえに行かなくちゃ!」

「子供いるんだ?」


「そうよ~。じゃあね。会計払っておくね」


 行ってしまいました。

 なんだか幸せそうで良かった。


「すみません! コーヒーセットを一つ下さい」


 冷めたコーヒーを下げてもらい、もうしばらく居る事にしましたが……


 さっきまで会話をしていた事が嘘の様に思えてきました。

 周りの声が妙にはっきり聞こえてきます。

 私は、注文したコーヒーセットを食べて店を出ました。


 こんな事、今まで思った事がありませんでした。

 ……いや、前にもありました。

 奈緒が出て行ったあの時です。


 何を私はブルーになっているんだ?

 明日の事を考えよう!


「あと椅子だよな。家にあったかも?」


 一旦、確認の為に戻る事にしました。


 物置きを探してみました。

 あるにはあったのですが……


「思ったよりボロボロだな。ん~」


 車を走らせ近くのホームセンターに向かいました。

 アウトドア用品の売り場にちょうど良いのがありました。

 座る所が三角で、たたむとコンパクト!

 

「500円くらいで買えるんだ~」


 これで、準備が整いました。

 後は、明日を待つだけです。 


「疲れた~」


 家に着いてほっとしたのか急に疲れが襲って来ました。

 宮元さんさんからのメールが…………


「……うわっ!? 寝てた! そうだメール! メールだよ!」


 時刻は、もう午後7時を回っていました。


「今、仕事終わりました。いよいよですね。

 遅れたら許しませんよ!

 冗談です……。

 行き先は、上野です。

 それでは、明日」


 あっ!


「行き先……!!」


 今知った私は、なんてうかつな奴だ。

 心配してくれたのか?

 絶対に遅れないと返信しました。


「なんかデートみたいだな。でも……」


 もしかして!?

 他にも誰か来たりして?

 二人だけでとは言ってなかったよな。


「まぁ、二人でも変な事になるとは思えないし」


 本当に遅刻したらしゃれにならないよな!

 素直に寝る事にしました。


 翌朝は、スッキリ目覚める事が出来ました。

 天気も良いようです。

 私は、少し余裕で着くバスに乗りました。

 駅には、15分前に着きました。


「宮元さんからメールだ!」


 もう一つ、うかつな事に気が付きました。

 携帯番号です……。

 これが、二人の境界線なのかも?

 くだらない妄想か?


 メールを見てみるとこうでした。


「おはようございます。

 目の前のカフェにいます。

 今そっちに行きます。

 そこにいて下さい」


 カフェの方を見ました。

 彼女が手を振っています。

 いつから居たんだろう?

 私よりも早かったという事になる。


「おはようございます」

「おはよう……。一人?」


「はい。そうですけど何か?」


 何だか自分が恥ずかしい……。

 でも、本当にこれは二人でという事になる。


「いや何でもないんだけど、か……」

「かぁ? 気になります。何ですか?」


「格好……どうかなって?」


 何を言ってるんだ?

 本音をなかなか言えない、こう言う奴の定番のセリフみたいです。


「普通でいいと思います。変じゃないですよ」

「そう? 良かった」


「もう少しで電車が来ますよ。乗っちゃいます?」


 彼女は、笑顔で楽しそうです。

 もう小さなスケッチ旅行は始まっています!


「うん! 乗っちゃおう!」


 絶対の自信を持って楽しくなると思います!

 電車に揺られて、数十分……


「やっぱり早く着いちゃいましたね。でも気持ちいい~! ん~~っ!」

「開園まで散歩でもし……」


「あっ! あの花きれいですよ!」


 駆け出したと思ったら、早速スケッチしてる?

 結構、描き慣れている感じです。


「絵描くの好きなんだね」

「はい! 大好きです! 麻牧さんもそうでしょ?」


「まぁ、そうだね。しばらく休んでたけど」


 そうだよ!

 私も絵を描くのが好きなんだよ!

 彼女の言う通りです!


 そろそろ開園の時間です。

 動物園なだけに家族連れが多いです。

 お目当ては、白黒のジャイアントパンダと言ったところでしょうか?


「私、描きたい動物がいるんですけどいいですか?」

「何? やっぱりパンダ?」


「いえ違います。コビトカバです」


 コビト?

 何だ?


「カバの事?」

「見た目は、カバに似ています。かわいいんですよ」


「カバ、好きなんだ。 園内マップで見ると……」


 お~、どこだ? 

 昔、一度来た事があるだけだから…… 

 言い訳になっちゃうかな?


「ここです!」

「ホントだ!? ちょっと遠いけど、そこをスタートにしよう!」


「ありがとうございます」


 他の動物をそれなりに横目で見ながら、そのコビトカバを目指します。

 私は、隣りのサイでも描いてみようかな?


「かわいい~! 丸みがいいですよね~」

「カバだよね? 小っちゃい……」


「よく見て下さい! 耳とか目とか全然違うでしょ!」


 そう言われればそうだけど……

 看板にも書いてある。


「では、始めますか!」

「はいっ! 12時頃に、ここでという事でどうですか?」 


「うん、オッケーだよ! じゃあ向こうのサイ描いてみる」


 私は、サイの方に移動しま……


「宮元さん!」

「はい……」


 振り返った彼女の一瞬!


「良いの撮れました!」

「……」


 いきなりはまずかったかな?


「気悪くしたかなぁ……」

「もう一回! もう一回コビトカバと撮って下さい! それからGOです!」


「分っかりました~! 今だ! 撮るよ! はいチーズ!」


 これも良い~!

 実に良い笑顔です!


「最高の笑顔です! 頂きました!」

「本当ですね! コビトカバ最高です!」


「……じゃあ、スタートです! いいの描きましょう!」


 改めて本当にスタートです。


 宮元さんは、早速始めています。

 真剣な横顔……

 オーラを感じます!


 一枚……

 押しちゃいました!


「麻牧さん!」

「よ~し! サイ描くぞ! サイ!」


 3枚も撮っちゃた!


「おお~! サイの角カッコイイ!」


 私もスケッチに入りました。



次話へつづく

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