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絵ごころ引力  作者: yomo
20/21

「チケット」

 亜美の家をでた典秀。その途中で、事務所の吉田さんを見かけるが少し様子がおかしい……。声をかけて呼び止める典秀。訳を聞いてみるが複雑な思いになる。そして、亜美からのLINE。

 吉田さんを呼び止め私……

 良かったんだろうか?


 いや、そんな事は今はどうでもいい。


 私は、彼女を説得しました。

 車に乗ってもらい発進しました。


 詳しい話を聞くため、近くにあったコンビニの駐車場に入りました。



「そうだったんだ……。って、その話はもう解決したんじゃないの?」

「はい。でも、彼は納得できない部分があるらしんです。説明はしたんですけど……」


「あんまり時間は無いんだけど、自分が話しをしてみようか?」


 これは、早急に解決しなければ!

 私は、強く思いました。


「と、言っても案内してもらわないと住んでる所がわからないや……」

「そうですね。でも、すぐ近くですよ」


「近いんだ。じゃあ行きましょう!」


 コンビニの駐車場を出ました。

 吉田さんの案内で車を走らせます。


「あのマンションです!」

「でも、あのマンションって、3ヶ月くらい前にできたばかりじゃない?」


「よく知ってますね。実は、一緒に住んでいます……彼と」


 なんとぉぉぉ!


 ということは?

 私は、今から二人が住んでいる所に行こうとしているわけです。


 でも、今更やめるとも言えないし……


「一緒に住んでるんだ。じゃあ、付き合って長いの……?」

「もう少しで一年半になります」


「へぇ~……。車は、どこに止めればいいのかな?」


 さりげなく話しをそらしたが……

 私のせいで、周りに知られてしまったという事になるのではないでしょうか?


 これ以上は黙っていた方が良いでしょう。


 近くのパーキングに車を止めてマンションにむかいます。

 ちょっと、妙なドキドキ感があります。


 特に話す事もなく、玄関のドアの前まで来ました。

 吉田さんは、少しためらっている様子にも見えます。


 ゆっくりと、人差し指でインターホンを押しました……


 すると……


「はい」


 男の声がしました。


「私……」


 吉田さんは、控えめな声で返しました。


「ガチャッ!」と、ドアがひらき……


「自分の家なんだから、入ってくれば……。あっ」


 私と目があいました。


「麻牧さんがどうして? 美穂これはいったい?」

「偶然、麻牧さんと出会ったの。話しがしたいって言うから来てもらったの」


「……とりあえず入って下さい」


 私は、まだ真新しい玄関に足を踏み入れました。


「お邪魔します」


 まるで新婚だな……


「そこに掛けてください」

「ああ、ここね」


「……で、話しと言うのは何ですか?」


 機嫌がよろしくない様です。


「八坂、お前まだ何か誤解しているとか? 吉田さんとは、話していただけ。それだけ」

「そういわれても……。はい、そうですかって言えますか? 何を話していたんですか?」


「……吉田さん、話しても良いよね。誤解を解く為に」


 私は、吉田さんの方を見て言いました。

 吉田さんも覚悟を決めた様子で「はい」と返事をしました。


「実は、吉田さんに、お前の誕生日の事を持ち掛けられたんだよ。プレゼントのね」

「……どうして、麻牧さんにプレゼントの事を? 全然、関係ないんじゃないですか?」


「それは、亜美がそう言ったの!」


 吉田さんも必死です。


「宮本さんなら友達だから分からないでもないけど……。それがなぜ麻牧さんと言う事がになるんだよ」

「んん~……。まいったな~……」


「何がまいったんですか麻牧さん。……美穂まだ何かあるの?」


 私と亜美さんの事を出さないと、話しが進まないかな?

 このままだと、ずっと平行線のままだ……

 堂々巡りだ。


 私の方が覚悟を決めなくてはいけない状況です。

 こんな展開は、少なからず予想はしていましたが……


 実際となると、このカミングアウトは勇気がいります。


「あぁ……。付き合ってるんだよ。宮本さんとは……」

「誰が?」


「はぁ? 本人がここまで言ってるんだよ! それで誰が? って……」



 私は、吉田さんを連れて場をちょっと離れました。


「もしかしてさ~。八坂って、言っちゃ悪いけど……。にぶい?」

「あはは……。少しあるかも」


「そう……かぁ。もっとはっきりと言わないとダメなのかな?」


 私たち二人を見ている八坂……


「何を隅っこで話してるんですか?」

「ゴメン。この話を解決する為の話しを……」


「解決も何も、本当の事を話してくれれば良いんですよ」


 だから、今からその本当の事を話すんだよ!

 せっかちだな八坂は……


 私は、意を決して亜美さんとの事を話しました。

 でも八坂は、初め私が話している事が冗談だと思っていたらしいのです。


「こんな時に、冗談を言っている場合か!」

「すみません……」


「多分、プレゼントの事も憶測だけど、亜美さんは……」


 私は、亜美さんにプレゼントした小さなサプライズの事を話しました。


「そんなことがあったんですか。じゃあ本当に美穂とは何でもなかったんですね」

「だから、そう言ってるじゃないか」


「美穂……ごめん」


 良かった帰れる。


 時間は……?

 結構居たんだな。


「プレゼントは、楽しみに待ってればいいんじゃないの! 八坂君!」

「……そうします。今日、夜勤ですよね。すみませんでした。貴重な時間を……」


「まぁ、良いよ。それじゃあ帰るね」


 私は、このまま出勤する事にしました。

 それでも、時間はギリギリだと思います。


「私、そこまで麻牧さんの事見送ってくる」

「あぁ、大丈夫だよ。吉田さん。せっかく誤解が解けたんだ」


「……はい。ありがとうございました」


 私は、ちょっと小走りに車に戻りました。


「コンビニに寄るくらいの時間はあるよな……」


 車を発進させ、自宅ではなく会社に直接向かう事にしました。

 作業服は、着替え用で置いてあるので問題はないのですが……


 個人的には、時間がギリギリなのが許せないのです。



 会社に到着して、着替えて工場内へ……


「あれ? どうした? 今日は、何かあった? こんなギリギリに」

「まぁ、いろいろとあって……」


 私は、引き継ぎをして作業に取り掛かりました。


 良い感じに仕事は進んでいます。

 無心に作業に取り組みました。


 時は流れ、時刻は午前6時45分。

 もう少しで上がれます。


 のはずが……


 7時5分になっても交代する人が来ません。

 連絡もありません。


 私は、そのまま作業を続けました。


「どうしたんだろう?」


 時刻は、7時37分です。


 少し時間に余裕があるので、休憩をする事にしました。

 紙コップのコーヒーが妙に熱い気がしました。


「さて戻るかな」


 まだ、帰れない様です。


 時刻は、7時54分。


「あれ? まだ居たの?」


 隣のラインの人に言われてしまいました。


 時刻は、8時2分です。


 私は、オーブンの出口を見に行きました。

 最近、ここのトラブルが多いので最終チェックです。



 見回りを終えて、持ち場に戻って来ました。


「いや~悪い悪い! 流れは分かったんで交代するよ」


 私は、1時間遅れで上がる事になりました。


 更衣室で、携帯を見ると亜美さんからLINEが来ていました。


 1つ目は、「美穂の事ありがとうございました」

 2つ目は、「来月のスケッチ会出れません」


 喜びと悲しみのスタンプがそれぞれに付いていました。


 スケッチ会に参加できない?

 どうしたのでしょう……


 出れないとしかないので分かりません。

 何か急な事でもあったのでしょうか?


 私は、答えを問いかける内容でLINEを送りました。


「って、もう会社にいるじゃないか……」


 時刻は、8時16分。


「これは……。送る時間を間違ったか?」


 仕事中ですね。



 自宅に戻っても気になって仕方がありません。


「どうして参加できないんだろう?」


 LINE、休憩時間に見てくれるかな?


「……やばい。眠くなってきた」


 朝食はかろうじて食べました。


 亜美さんからの返事が来る事を願いつつ……

 私は睡魔に飲み込まれました。



 ……ん?


 時刻は、12時11分。

 アラームが止まっている。

 私が止めたのか?


 記憶がない……


 携帯を見ると、亜美さんからLINEが来ていました。


 参加できない理由わけは、なんでも美術展に出展するからだそうです。


 その日は、搬入とかいろいろあるそうです。

 でも、2日も掛かるのかな?


 その日から、亜美さんとの会える回数が減りました……

 仕方がないのは分かっています。


 何だか、亜美さんが少し遠くなった様な気がしました。


 亜美さんには、良い作品を描いてほしいと思っています。

 ただ、救いは会えない時のLINEです。


 この数週間、こっちの回数が少し増えた気がします。

 まぁ、でも邪魔にならない程度だと思うのですが……


 当日まで、あと2週間くらいでしょうか?

 全力で応援します!


 お百度参りとはいきませんが……

 そのくらいの想いという訳です。



 時間ときは、止まることなく過ぎて行きました。


 スケッチ会当日……

 私は、指定された場所に来ました。


 ここは、大きなバラ園で有名な公園です。

 管理事務所の前に集合との事でした。


「え~。スケッチ会に参加の方はこちらに集まって下さい」


 亜美さんは、当然いません。


「麻牧さん。おはようございます」

「吉田さん……。それに八坂」


「亜美来れなくて残念ですね。でも、頑張りましょう!」


 吉田さんは、亜美さんと友達だから私が来る事は知っていたみたいです。

 まさか、八坂も来てるとは思いませんでした。

 彼氏だから納得はいくけど……


 絵なんか描けるのか?


 八坂が口を開いた。


「麻牧さんて、テレビとかでたまに見るバラエティの画伯じゃないですよね?」

「何を言うんだい八坂君は……。後で素晴らしいもののを見せてあげますよ! ははは」


「それは期待しています。受付行きましょう!」


 なんという挑戦的な!

 今日は、最後に目にものを見せてあげましょう!


 私たちは、受付を済ませました。

 そのあと、説明を聞き簡易的ではあるけど画材の道具を受け取りました。


 いざ出陣です!


 吉田さんたちとは、反対方向に足を向けました。


 何だか、八坂と対決をしているみたいでワクワクします。

 私は、広い園内を少し歩いて見る事にしました。


 もうスケッチを始めている人も見受けられます。


「おぉ! なんかいい感じ! 写真も撮っておこう!」


 小さな真っ赤なバラがたくさん咲いています!


 なかなかバラって難しい感じがします。


 クシュクシュっとした所が……

 甘く見ていたかな?


「よし!」


 色塗りも上手くいきました。



「この黄色い色のもいいねぇ~」


 私は腰を下ろして、この黄色のバラを描く事にしました。


 黄色と言っても、花の先の方が赤くなっていて綺麗なバラです。


「今日は、何だか上手く描けるな~」


 私は、この公園にある丘の上の休憩所?

 配布された園内マップには、カフェと書いています。


 そこで、少し休もうと思います。


 吉田さんたちは、どうしているかな?

 余裕ではありませんが、ちょっと気になります。


 気になるといえば、亜美さんはどうしているだろうか?


 そんな事を思いながら、一人バラの回廊を進んでいます。


 一人で……


 亜美さんと一緒だったら、また全然違ったのでしょうね。


 再びそんな事を思いつつ、私はカフェに到着しました。


「アイスコーヒーをお願いします。あと、ここからの風景を描いていいですか?」


 お店の人は、こころよく許可してくれました。


 私は、歩いている吉田さんを見つけました。

 隣には、八坂の姿が見当たりません?


 別行動でもしているのでしょうか?


「吉田さ~ん!!」


 声をかけてみました。


「麻牧さん!? 休憩ですか? 良いの描けました?」

「ちょっと休みませんか? 八坂は?」


「ここにいますよ!」


 ぬ~っと、八坂が立ち上がりました。


 座って描いていたので見えなかったみたいです。

 その八坂に向かって、吉田さんが歩いて来ていたというわけです。


 ……何だか、ちょっと声を出したのが恥ずかしく思えてきました。


「休憩しようか。美穂」

「麻牧さん! 今、二人でそっちに行きますね」


「ここは、見晴らしが良いよっ!」


 二人は、どんな絵を描いているのでしょう?

 まぁ、それは最後に取って置きましよう。


 最後は、ここの管理棟の一室でお披露目会をするそうです。


「麻牧さん、ここで描いていたんですか?」

「そう。でも、ちゃんと許可はもらっているよ」


「すごいですねここは、いろんな種類のバラが咲いてますよね」


 うまい具合にいってるのかな?


「アイスコーヒーを2つお願いします。いいよね。さぁ座てすわって」

「本当に眺めが良いですね」


「ほらっ、八坂も座ってくれ!」


 八坂をイスに着かせて、ちょっと休憩です。


 私に呼ばれたのが気にさわったのでしょうか?

 この前の問題は解決したはずです。


「吉田さんは、もう何枚か描いた? おっと! 今は、見せなくていいよ」

「そうですね。後でのお楽しみと言う事にしましょう。麻牧さんは、何だか余裕ですね」


「そんな風に見える? 八坂は? 見せなくていいから」


 ちょっと気になります。

 上手いのかと……


「ま、まぁ。そこそこ描けてますよ」

「へぇ~、それは楽しみだね!」


「麻牧さんこそ、ガッカリさせないでくださいよ」


 またもや挑戦的だな!

 まぁ、そこそこと言った時点で自信はあるようです。


「ご心配なく八坂君!」

「二人とも、ちょっと穏やかにいきましょう!」


「はははっ! そうですよ麻牧さん。さぁ、描きに戻りましょう」


 私たちは、再びバラ園に戻りスケッチに専念する事にしました。


「それじゃあ、また後で」

「そうですね。麻牧さんはどっちに行きますか?」


「ここにある、バラの館の方に行ってみようと思う」


 二人も来るかな?


「私たちは、向こうの恋人の鐘の方に行きます」

「そうなんだ。逆の方向だね」


「お互い頑張りましょう!」


 私は、館の方に向かい歩き出しました。



「しかし……。広いなここは」


 天使の園?

 フェアリーガーデン?

 バラのステージ?

 癒しのせせらぎ……


 天使と妖精のエリアってどう違うんだろう?


 館が見えてきました。

 洋館風な建物の周りには、たくさんの色のバラが咲き誇っています!

 その隣には、真っ白で小さな教会がありました。


 私は、洋館との角度を決め描き始めました。



「あの~……。この辺良いですか? あなたも参加者ですよね」

「えっ? あぁ、どうぞかまいませんが」


「ありがとうございます。私、金澤かなざわと言います」


 この会に参加している人なのでしょう。

 私から結構近い所でスケッチを始めました。


 私も続きを始めました…… 


「よし!」


 集中をしていたので、金澤さんの事は気になっていませんでした。


 どんな感じなんだろう?

 ちょっと気になりました。


 でも、まだ描いているみたいです。


 ここを離れて、隣の教会の方に行こうと思います。


「あっ! ちょっと待ってください!」

「……」


「もうすぐ終わりますから」


 呼び止められた私……


 とりあえず、その場に留まりました。


「すみません。呼び止めて……。一緒に回りませんか?」

「えっ!? 一緒に?」


「ダメですか? どうしても無理ならいいんですけど……」


 ダメですかって……

 何だか、どこかであった場面です。


「ダメではないですけど……」

「え~と、名前をまだ聞いてないですね」


「えっ! あ……。麻牧です」


 どうして緊張しているのか?

 金澤さんは、参加者の一人なのに……


「よろしくお願いします。都内で輸入雑貨の店をやってます。金澤 あゆ美と言います」


 あゆ美さんね。

 輸入雑貨の店をねぇ~。


 やってるって事は、経営しているって事だよな……

 オーナーという事……


 私は、名刺をもらいました。

 こちらは、返すものがありません。


 仕方がありませんね。


「隣の教会の方に行こうと思っているんですけど。金澤さんは、もう行きました?」

「まだですけど。行ってみましょう!」


「行きましょう!」


 白い教会の周りには、たくさんの真っ赤なバラが咲いています。


 カ~ン!

 カ~ン!


 鐘の音が聞こえて来ました。


 もしかして、吉田さんたちかな?


「麻牧さん行ってみませんか? 鐘の所に」

「でも、ここから近いフェアリーガーデンにも行きたいんだよね」


「……私そっちから来たんですよ」


 マップをみると……

 フェアリーガーデンと恋人の鐘は、またもや反対方向なのです。


「まだ時間もあるし……。もう一回行ってみませんか?」

「……そうですね。分かりました。行きましょう」


「フェアリーガーデンというくらいだから、見ごたえがあるんでしょうね」


 あゆ美さんは、もう行っているからどんな所か分かっているはず。


「ええ。とても綺麗でしたよ。癒しのせせらぎがその前にあるんです」

「へぇ~。楽しみだな」


「期待は、裏切りませんよ!」


 さずが、もう見ただけの事はあります。

 自信をもって言っています。


 目の前に、小さな小川が見えてきました。


「これが、癒しのせせらぎ?」

「いえいえ。癒しのせせらぎはもうちょっと先です」


「ここもいい感じに癒しな雰囲気がするんだけど……」


 この場所じゃないんだ。


「麻牧さん、唐突ですが何歳なんですか?」

「えっ!? 本当に唐突ですね……。42ですけど……」


「見えない! 見えないですよ! 42歳には……。同じくらいかな~って」


 同じくらいって、何歳なんでしょう?

 見た感じでは……


 金澤さんは、30半ばくらいに見えます。

 どうなんでしょうね?


「私、37なんです。麻牧さん若く見えるんですよ、とっても」

「そ、そう。お世辞でも嬉しいですね。じゃあ結婚は?」


「どう思います?」


 どうなの?


「まだ、独身……かな?」

「ブ~! 残念! 旦那様がいます!」


「ははは……。これは、失礼しました」


 このスケッチ会に来ているのかな?


「別行動してるの? 一人で行動しているみたいだし?」

「こういうイベントには、特に絵のイベントは一人で来るんです」


「へぇ~。そうなんだ」


 人それぞれって事ですね。


 私たちは、バラの香りの漂う公園を進み続けています。

 フェアリーガーデンを目指して……


 進んでいくと、他よりも淡い色の?

 パステルカラーと言った方が良いのでしょうか?


 少し、雰囲気が変わってきた様な気がします。


「ほら! 見えてきましたよ!」

「園内マップでは、癒しのせせらぎの奥にフェアリーガーデンがあるとなっているけど……。こうなっているんだ~」


「ねっ! 良い感じでしょう」


 そこには、小川が流れています。

 そして、真っ白なベンチが一つ……


 座ってスケッチをしている人がいます。


 小川は、フェアリーガーデンの方から流れて来ている様です。


 小さな橋をいくつか渡ってフェアリーガーデンに入りました。

 そこは、黄色と白のバラだけの世界が広がっていました。


 2色のこの色は、逆に描くのが難しいという感じもあります。


 特に全部の場所を描かなければいけないという訳でもないし、ここは写真を撮って終わっておこうと思います。


「金澤さん、鐘の方に行きましょうか」

「いいんですか? 描かなくても?」


「大丈夫。写真撮ったしね」


 時間もあと1時間ちょっとしかない事だし……

 上手く描けたのもあるし、恋人の鐘も気になります。


 歩いている途中……!


「あっ……。吉田さん」

「麻牧さん!? ちょっ、ちょっとこっちに来てください」


「何々? どうしたの吉田さん?」


 私は、吉田さんに引っ張られて少し離れた所に……


「どういう事ですかこれは! 誰ですかあの女性ひとは?」

「ああ~。金澤さんの事? 特に……。途中から一緒に回っているだけだけど」


「……それだけですか!?」


 なんでしょうか……

 この疑われようは?


「何かあったら、許しませんからね!」

「吉田さん、どうしたの? 大丈夫だって」


「くれぐれもですよ! いいですね!」


 何だか、すごく釘を刺された感があります……


「大丈夫ですよ。吉田さん」



 私たちは、吉田さんたちと別れ恋人の鐘に向かいます。


「麻牧さんは、彼女いるんですか? ……奥さんの方かな?」

「まぁ~。結婚はしていないけど、彼女はいますよ」


「どんな感じの人ですか? かわいい系? それとも……」


 金澤さんって、好奇心旺盛……?


「どっちかという、きれい系……かな。そう思うけど私は」

「へぇ~。会ってみたですね!」


「またまた冗談を……。あっ! あれが恋人の鐘じゃない?」


 恋人の鐘は、ちょっと小高い丘の上にありました。

 周りには、ピンクと白のバラがたくさん咲いています。



 !?


 LINEが来ました。


「搬入完了です! そちらはどうですか?」


 亜美さんの方は、一段落したみたいですね。


「お疲れ様! こっちは、バラが美しいです」


「うらやましい~! 楽しんでくださいね」


 私は、返事を返して時間的にも最後のスケッチを始めました。


 金澤さんは、もう始めています。



 描き始めたのだけれども……


「……何か違う」


 私は、鐘の近くに寄って見る事にしました。


「こうなっているんだ」


 思い切って、ドローンから風の斜め上からのアングルで描いてみる事にしました。。

 これが、思ったよりも良い感じに進んでいます。



「…………よし!」


 これでも良いのかな?

 スケッチになるのでしょうか?


 一番良く描けた気がします。

 なんだか……


「麻牧さんどうですか~? 描けました?」

「はい。良い感じに」


「それじゃあ、戻りましょうか」


 他の参加者の人も管理事務所に動き始めた様です。

 同じ方向に向かっている人は、大体この参加者だと思います。


「スケッチ会の参加者の方は、管理事務所の中の突き当りの部屋に進んで下さい」


 スタッフの人がメガホンで案内をしています。


 吉田さんたちは、もう中に入ったのでしょうか?

 私たちも支持された部屋に向かいました。


「あっ!」


 吉田さんたちは、もうイスに座っているのが確認が出来ました。

 部屋は、半円状にイスが設置されています。


 私たちも空いている席に座って、参加者が集まるのを待ちました。

 しばらくして、最後の人が座りスタッフによる話しが始まりました。


「参加者の皆さんお疲れ様でした。早速ですがお披露目の会を始めたいと思います!」


 吉田さんは、どんな?

 八坂は、上手いのか?


「その前に、ゲストの方を紹介します」


 誰でしょう?


「今、注目されているアーティストの一人でもあります、三笠みかさ明夫先生です」

「今日は、皆さんの素晴らしい作品を拝見に来ました。楽しみですね」


「では、始めたいと思います」


 お披露目の会とやらが始まりました。


 一人、約3分ほどでしょうか。

 前に出て自信の作を披露しています。


「皆さん、レベルが高いですね。素人さんとは思えませんね」


 ゲストの三笠先生が褒めたたえています。


 さて次は、吉田さん。

 そして、八坂の番です。


「では、次の方お願いします」

「吉田です……。よろしくお願いします」


「ダイナミックですね! 素晴らしいです」


 先生の言う通り、なんかすごい……

 上手です。


 さあ、八坂が前に出てきました。


 ……!!


 上手い!

 何なんだ、この男は?

 何者?


 会場がざわついています……。

 プロなのと言う感じです。


 披露が続きます。


 金澤さんの番です。

 ……上手いです。


 続いて、私の番です。

 緊張してきました……


 前に出る私……

 注目されています。


 私が出したスケッチは……


「これは、おもしろいですね。飛んだのですか?」

「いや~……。良いかどうか迷ったのですが……。これに決めました」


「全然、問題ないですよ! むしろ自由で良いんじゃないですか!」


 恋人の鐘を斜め上から見たやつを出したのですが……

 思わぬ反響で照れます。


 拍手を受け、私は席に戻ります。



 お披露目もひと通り全員が終わりました。


 三笠先生が絶賛です。


「本当に、ここに居る皆さんは素晴らしいです。今日、来て正解でした」

「ありがとうございました。三笠先生」


「皆さん、これからも良い絵を描いて下さいね」


 先生の言葉を最後に会の方は終了しました。



 八坂が近づいて来ました!

 吉田さんよりも早く……


「麻牧さんって、意外に上手いじゃないですか」

「意外は余計だよ。そう言う自分はどうなんだよ! プロかい?」


「実は、昔……。本気で絵を勉強した時があったんですよ」


 本気で勉強した事があるって……

 そりゃ上手い訳です。


「じゃあ、今日は引き分けって事でいいよね」

「良いですよ。麻牧さんがそう言うなら」


「二人とも何話してたんです? ……帰りましょうか」


 私たちは会場を出る事にしました。


「麻牧さん、今日は楽しかったです。 それでは失礼します」


 金澤さんが挨拶をして出て行きました。



 これで、スケッチ会は終了です。


 明日は、アイドルのライブに行きます!

 新宿にあるライブハウスです。


 そのアイドルは、以前モールでみたアイドルです。

 ワンマンライブです。


 年甲斐もなく、わくわくしています。

 2部構成ですが、私は1部のみを観るつもりです。

 本当は、2部も観たいのですが……



 ライブ当日……


「さぁ! 行こう!」


 気合いいっぱいで家を出ました!

 電車に揺られて、はやる気持ちを周りに悟られない様に静かに、静かに…… 


 会場付近……


「あっ! 確か……。この近くだったような」


 私は、昨日もらった輸入雑貨の店の住所を確認しました。


「なんだ。会場のすぐ近くじゃないか!?」


 ライブの後に寄って見ようかな?

 これも、何かの縁だと思います。


 ライブ会場に着きました。


 ……ライブが始まり会場は大盛り上がりです!


 中に入ったら、年齢なんて関係ありません!

 私もリズムに乗って、コールをします。


 楽しい時間は、あっという間に過ぎて行きます。

 いよいよ、ラストの曲です。


 アンコールもあると思いますけど……


 サイリウムを振り、タオルを回してとても楽しい!


 ライブも終わり、会場を後に……


 !!?


 あの後姿……


「まさか!」


 私は、あまりにも似た後姿に声を掛けました!

 普段は、こんな事は絶対にしないのですが……


 テンションのせいでしょうか、つい声をかけてしまったのです。


「あの~……」

「……はい。あっ!! 典秀さん!?」


「やっぱり亜美さんだ! 来ていたんだ!」


 正解でした。


 でも、どうしているのでしょう?

 本来ならスケッチ会の2日目。

 参加できないとは知っていましたけど……


 この場で、出会えるとは思いませんでした。

 サプライズです!


「亜美さん、この後は?」

「2部は、観ないので特にありません」


「そう。これから輸入雑貨の店に行こうと思うんだけど、ここなんだけど。一緒に行かない?」


 私は、亜美さんを誘ってみました。


「知ってますよここは! かわいい小物とか結構あるんですよ」

「そう……。知ってるんだ。 あっ! そうそう来月の秋葉原での定期公演行かない?」


「良いですね! 行きましょう!」


 確か、チケットは発売中のはず。


 亜美さんは、おもむろにスマホを出して操作を始めました。


「これで良し! 1部、2部の両公演のチケットを購入しましたよ!」

「えっ!? 今! ははは……」


「さっ! 行きましょう!」


 亜美さんは、私の手をつかんで歩き出しました。


 定期公演のチケットを購入した事で、二人のイベントが増えました!



 今日は……

 デートですね。



次話へつづく

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