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絵ごころ引力  作者: yomo
2/21

「待ち合わせ」

 勤務時間が変わり夜勤は続いた。眠くても頑張れる!始まる2日間のために!

 夜勤は、あと一日。


「今週パワフルだね。来週もいけるんじゃねぇ?」


 と、昼勤の佐久さくさん。


「あぁ~。それは無理でしょ」

「冗談だけどね。そのくらいの勢いあるよ。何かあった?」


「あはは……特に。じゃあ上がりますよ」


 そそくさと佐久さんの前から姿を消した私であった。

 着替えて車に乗り込み、まだ暗い事務所を横目で見ながら会社を出た。

 途中のコンビニで弁当を二つ購入。

 一つは、温めてもらった。


「ありがとうございます。いってらっしゃい!」


 そう言われても、これから帰って食べて寝るんだけどね。

 コンビニの前の県道を通って行く車両に、彼女の車を探してしまう……。


「8時出勤だからな~。まだ早いよな。ははっ」


 一人照れながら車に戻りコンビニを出た。


「何? この渋滞?」


 警察の車両が止まっているのが見えた。


「朝からご苦労な……」


 現場を横目に何とか通過した。


「あ~……」


 自宅に到着したが、せっかく温めてもらった弁当は冷め気味になっていた。

 仕方なく、自分でもう一度レンジで温め直した。


 テレビを点けると、昔から知っている有名アーティストの事をやっていた。

 原画と新作の発表、それと来日の情報も一緒に告知していた。


「へぇ~。行ってみようかな?」


 この人の作品は、小さいけど持っている。

 今は、大切にしまっている。


「……ダメだ。シャワー浴びて寝よ」


 急激に眠気がおそって来た。

 でも、脱衣所で溜まっている洗濯物を見て少しブルー化した。


「あぁ……。洗濯か~……」


 いさぎよく気持ち切り替えた!


「明日でいいよな」


 シャワーを浴びたのに眠気に勝てない。


 午後12時20分

 目覚ましのアラームが鳴った。


「あぁ~。だるい~」


 取りあえず昼はなんとか食べた。

 そして、昔購入した作品を引っ張り出した。


「懐かしい」


 購入した当時の状況がよみがえった。

 恥ずかしい……。


 おもむろに作品を壁に掛けてみた。


「よしっ! いいじゃん!」


 私は、1枚の写真をカバンに入れ出かけた!

 電車を乗り継いで約50分。


「こちらにご署名をお願い致します」

「え~と。作品……」


「お持ちなら、お願いします」


 小さい作品だけど……

 良いよな!


「先生の初期の頃の作品ですね」

「20年くらい前に手に入れたんです。手放せなくて」


 私は、写真を取り出して受付の林さんに見せた。


「先生! へぇ~お若い!」

「まぁ、20年も前ですからね」


「先生は、午前中までのスケジュールでしたので残念でしたね」

「忙しいんですね」


「そうなんですよ。最近、大きなプロジェクトを成功させてから」


 そう言えば半年前に聞いた事がある。


「良かったら、私がご案内致しましょうか?」

「えっ!? でも受付は?」


「大丈夫です。あっ! 西高にしたかさん受付ここお願いできる?」


 私の為に?

 ただ見に来ただけなのに、気楽に見れなくなった気がする。


「どうぞ~。最新作もありますので」

「やっぱり良いなぁ~」


「そうですよね~。あれっ!? 先生!」


 私の後方に林さんの視線が向いた!

 振り返ると先生本人の姿がありました。


「ちょっと待っていて下さい」


 林さんが、先生の所に駆け寄って話しをている。

 その後、二人が私に近付いて来る!


「わざわざありがとう来てくれて。拝見出来るかな写真」

「えっ! あ~はい! どうぞ!」


「これは懐かしいね~! ……思い出しましたよ!」


 思い出してしまいましたか?

 恥ずかしい……。


「後にも先にも、会場であんなインパクトのある表現の喜びをしたのは一人しかいないからね」

「恥ずかしいですね。若気の至りです。はは……」


「申し訳ない。もう行かなくてはならない」


 いやいや、この数分間だけでも十分です。

 そして、新たに写真が増えました。


「自分もこれで帰ります。これから仕事なんで」

「そうなんですか。気になる作品はありましたか?」


「まぁ、どれもこれも……。次は、もっと時間がある時に来ますよ」


 私は、会場を後にした。


「さぁ! ラスト1日! 行くか!」


 出勤時刻です。

 車に乗り込み会社に向かった。


「お疲れさん! 代わります」

「事務所の宮元みやもとさんからこれ預かってるよ」


「封筒? 何だろう? あっ、どうも」


 封筒は、二つ折りにして胸のポケットに入れた。

 夜勤のスタートです!


 時間が立つにつれて、次第に窓の外が明るくなって来た。

 もうすぐ日の出の時刻が近い証拠です。

 ラストスパートといった感じです。


 時計は、6時55分


「おはよう! 流れは順調?」

「おはようございます。OKですよ! 順調です」


「今日出荷の製品もの多いからな」


 引き継ぎも完了して、7時になったので私は上がる事にした。

 コンビニに寄り……


「いってらっしゃい!」


 今日は、昨日のような渋滞も無く帰れた。


「洗濯! 洗濯!」


 作業服を洗濯機に入れて水を……!?


「あっ!」


 急いで作業服の胸ポケットの封筒を取り出した!


「大丈夫だ」


 少し緊張?

 ドキドキした感覚で封筒を開けた。

 中身は、明日のデッサン教室の場所の変更の事でした。


「場所ね……。3階から4階の会議室ね。 これはっ!?」


 変更の内容の下に…………

 携帯番号とメールアドレスが手書きで書いてあった。

 すぐ登録しました。


「明日か~! あれ?」


 これって、私から掛けないと宮元さんから掛かって来る事はない。

 そういう事だよな。


「うぁ……。どうしよう」


 私は、夜勤明けだから休みだけど……

 無理だな。

 会社に掛けるのも違うかな。


 9時33分。


「このままでは眠れないぞ~。決めた!」


 簡単に「変更の件、了解しました。明日が楽しみです。(`・ω・´)b」と。


「……最後の要らなかったかな~? しかも合ってたか? もう、送っちゃったし」


 全身に、ものすごい照れ照れ感が襲って来ました。


「あれ? 彼氏いたよな確か……」


 私は、思い出した。

 事務所に彼氏がいたのを……。

 見た事がある!


「そうだよな。こんなオッサンが……あぶね~」


 教室の時間がやって来ます!

 テンションもさほど上がる事もなく施設の前で一応待っていました。


「おはようございます」

「おはよう。一人……?」


「えっ? はい。一人ですけど」


 彼氏は、興味が無いだけの事かも知れない。

 私達は、4階の会議室に向かいました。


 半円形の形になって座席が用意されています。

 私の隣りに宮元さんが座りました。


「初めての方もいらっしゃると思いますが、物の質感をじっくり観察して描いて下さい」


 そこには、果物などテーブルの上に盛り付けてあった。


「この間は、大きなカボチャがメインだったんですよ」

「へぇ~。そうなんだ」


 じゃあ、今日のメインはみやも……

 あぁ~、なんだ意識してしまう!


「さぁ、はじめましょう」

「そ、そうだね」


 あらためて何がメインなのか見てみた。


「カメラ?」

「ですよね? くすっ」


 「くすっ」て宮元さん……

 ダメだよ、隣りを直視できない!


 そんな感情の高ぶりを目の前の白い空間にぶつけた!

 いつしか時間の流れるのも忘れる程でした。


「それでは、少し休憩にしましょう」

「何か疲れた……」


「麻牧さんて、絵上手いんですね」


 ははっ、特にメカは得意ですよ。

 カメラは、メカですからね。

 講師の先生が話しかけて来た。


「ダイナミック! 麻牧さんいい感じですよ。その調子です」

「そうですか? ありがとうございます」


「はい! じゃぁ後半戦です。完成まで仕上げて下さい。質感ですよ~」


 宮元さんに先生がアドバイスをしている。

 でも、特に宮元さんに集中しているような気がする?

 気のせい、気のせいと思いこんだ。


「さあ! 皆さんの力作を見てみましょう!」


 完成した作品を一列に並べて披露!


「上手いね。宮元さん」

「ありがとうございます」


 口元にやった手の仕草が……

 可愛すぎるよ~宮元さん!


「麻牧さんのも、さっきより迫力出ましたね」

「あぁ~。ちょっと黒くなっちゃったけど」


「作品は、明日のと一緒に持ち帰ってもらいます」


 一日目終了です。

 来ていたのは、事務所の人が多かった。


「これからどうするの? 宮元さんは?」

「用事があって……」


 何を聞いてるんだ私は……

 ヤボな事を聞いてしまった。


「じゃぁ、また明日という事で」


 施設の前で宮元さんと別れた。


 次の朝……

 私は、小雨がパラつくなか施設の前で宮元さんを待っていた。

 しかし、彼女の姿を確認出来ない。

 始まりの時間まで、6分ほど……

 携帯を見ると、15分前にメールが来ていました。


「そんな……」


 内容は「一緒に行けなくなりました」というものでした。

 私は、一人教室に向かいました。


「今日は、人物を描いてもらいます」


 宮元さん!!?



次話へつづく

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