「ショッピングモール!」
ボウリングの帰り道……。彼女の事を思う。自宅に帰ってからも物思いにふける典秀。しかし、彼女とのやり取りでショッピングモールに出かける事になる。楽しいお出かけです!
私の中の誰かが囁きます!
彼女の所に戻っても良いんじゃないのか?
寂しいんだよ!
きっと……
何分走ったでしょう……
私は、ブレーキを踏んで車を止めました。
チッカ!
チッカ!
チッカ…………
車の中にハザードランプの音が妙に響きます。
メールの着信音!?
亜美さんからのメールです。
「今日は、楽しかったです。
また行きましょう!
今、運転中ですよね。
私も乗って行けば良かったかな?
なんてね……。
では、お休みなさい」
…………戻るか?
彼女の元へ
「……」
お休みなさいと言っているんだ……
今戻ってもな~
私は、車を発進させました。
家に着いて、なんとなくボウリングのスコアを眺めていました。
また行きたい!
しかし……
もう少し上手くならないと格好がつかない。
でも、今日はこれで良しとしよう!
無理やり納得させました。
私は、ふとプレゼントの事を思い出しました。
空港で購入した彼女へのプレゼントの事です。
それを渡すタイミング……
平常勤務の早番なら良いんだけど……
何度も思いました。
なんかモヤモヤして落ち着かない。
ちょっとおそいけど電話をしてみるか?
それともメール?
メールだったら……
「何て送ろうか?」
文章に戸惑っている私がいます。
言葉って難しい。
「よし!」
いろいろ考えたあげく、何とか文章が出来ました。
出来たのは良いがなかなか送れない……
何をためらっている?
何だか、ちっぽけな自分が居ます。
あぁ……
無情な時間の流れを感じます。
私は、未送信のまま携帯を置きました。
どのくらい時間が経っただろう?
ふと時計を見ました。
「え!? ……」
まだ、30分くらいしか経っていませんでした。
自分では、2時間、3時間は経った感覚でした。
「よし! 送ろう!」
大げさな気もするのですが決めました。
「送った!」
彼女からのメールの返事は……
意外に早く戻って来ました。
「待っています。必ず来て下さいね」
自分が思っていたよりもあっさりしていました。
メールには、こうもありました。
来月、市の企画でスケッチのイベントが開催されると。
「スケッチか~」
2日間の日程で行われるようです。
来月のカレンダーを確認して見ました。
1日は大丈夫……
もう1日は、どうしても無理だな。
1日だけでも良いのかな?
私は、彼女にすぐ日程の事をメールしました。
彼女から電話です!
「さっきのスケッチの件は、聞いてみますよ」
「あ、ありがとう。誕生日の日だけど必ず行くから」
「はい! 楽しみにしてます」
なんだ?
直接話したら意外に言えました。
「ははは……。期待していてね」
「分かりました。明日も出勤ですよね。ゆっくり休んで下さい」
「うん。お休み」
モヤモヤしていた気持ちがスッキリしました。
そして、込み上げてきた抑えきれない感情!
「よし! よし!! よしっ~!!!」
思わず夜中にガッツポーズ!
本当に短い会話でしたが充実しました。
「あ~!! 寝るか~!」
私の勤務は、特殊なシフト……
次の日の仕事は、問題なく進んで行きました。
「お疲れさん! 休みだね。どっか行くの?」
「いや~。どこにも行きませんよ!」
「そうなんだ……。 まっ良いんだけどね」
何だろう?
意味深な言い方……
「まさか!?」」
「どうした? 大きな声出して?」
「いや何でも……」
あぶないあぶない……
自分から墓穴を掘るところだった。
着替えて車に乗り込みました。
「ふぅ~」
携帯を見るとメールが来ていました。
スケッチの件でした。
1日だけでも良いと言う内容でした。
それと、明日少し遠くのモールの画材店に行きたいともありました。
なんでも、最近リニューアルしたみたいです。
私は、すぐに返事をしました。
もちろんOKと!
「さぁ! 帰ろう!」
ちょっと浮かれた感じで家に戻りました。
「明日、デートか~」
デートで良いんだよな?
結構大きなショッピングモールだしな!
何着て行こう?
「まぁ、気取らないで普通で良いか……」
お店に飾ってもらう絵のヒントになるかもしれない。
画材も……
水彩?
油絵?
パステル?
飾ってあった絵は、皆さん上手い人達ばかりだしな……
「やっぱりキャンバスに描いた方がいいかな?」
自分だってそこそこ描ける方だと思う。
自画自賛……
明日が楽しみです。
次の日、私は自宅を9時15分に出ました。
モールは、10時から開店します。
彼女の所に寄ってからでも、10時30分くらいまでには到着するでしょう。
渋滞が無ければ……
「おはよう」
「おはようございます。典秀さん」
「さぁ、行こう! 乗って乗って」
彼女を車に乗せ出発しました。
到着するまでの間、お店に絵が増えて来ている事を知りました。
「亜美さんも、描いてるの?」
「もう少しで出来上がりますよ」
「えっ!? こっちは、まだ進んでいないよ」
やばい……
なんとかしないと……
でも、浮かばないんだよな。
「描いてと言われて、すぐ描ける物でもないと思いますよ」
「あ、ありがとう」
「画材だけでも準備しておいたらどうですか?」
そうだよな。
準備さえしておけば……
モールに到着しました。
時刻は、10時27分と予定通りです。
まだ、駐車場はそんなに混雑していませんでした。
「さぁ、行きましょう!」
「ここ久しぶりだな」
「そうなんですか? 今日は楽しみましょう!」
彼女が、ギュッと腕に抱き付いて来ました!
「早く行きましょう!」
「あぁ……」
「何か楽しい!」
私もです。
楽しい1日になりそうです。
「画材店ってこんなに大きかったっけ?」
「だから、リニューアルしたんですよ!」
「前より良いね~」
以前来た時よりも、店のスペースがかなり広くなっています。
彼女の目が輝いてます!
「おっ!? これボールペン? こんなにも種類あるの?」
「すごいですよね」
「あっ! 何か必要な物があるんだよね?」
ボールペンに見惚れている場合じゃない。
「じゃあ、ちょっと別行動する?」
「えっ? そうです……ね」
「お互いの探し物が見つかるといいね」
……これで良かったのか?
気持ち的に何かが残った。
そして、私達はそれぞれの目的の物を探す事にしました。
私は……
「にしても広いな……」
キャンバスの所はどこだ?
「……あっ! あそこだ!」
問題は、大きさだよな。
大きいサイズは、ちょっと無理かもしれない。
「6号か8号かな?」
6号サイズだと、410×318なのか。
8号だと、それよりひと回り大きい……
新参者だから、6号くらいでいいか?
「よし! 6号にしよう!」
今、これを持って歩き回るのは面倒だな。
じゃあ、キープと言う事にしておこう。
筆は、2本くらい買っておくかな?
「なにで描くかだな……。ん~~」
水彩色鉛筆?
私は、説明書きを読みました。
「へぇ~、こんなのもあるんだ」
あっ!!
亜美さんだ!
「なにそれ? でかっ!? 絵具?」
「あらっ!? 良いの見つかりました?」
「なにで描こうかってね。それは?」
彼女は、歯磨きのチューブの様なのを持っていました。
「アクリル絵具です。まだ使う感じなので多いのを選びました」
「へぇ~。アクリル……」
「私は、ずっとこれを使っていますよ」
確か……
乾くと耐水性になると思いました。
良いかも知れない。
私も使ってみようかな?
……でも、値段が意外とするんだな。
「どうしました?」
「何か迷っちゃうよね。こんなにあると」
「そうですね。この辺じゃ最大級の品揃えですね。きっと」
納得です。
何だか買う物が結構ありそうです。
絵具だったら、パレットも必要です。
結局、全て買わなくてはいけないようです。
まぁ、購入する物の目星は付けたから、あとは集結です!
「典秀さん? まだ何も持っていないみたいですけど」
「もう買ったの? それスケッチブック?」
「はい。ケント紙のです。なかなか良いんですよ」
集結したのは良いのだけれど……
「買ったら、ひとまず車に置きに行こう」
「ふふふ。そしましょう」
「はははっ! じゃあ、買って来る」
私達は、車に戻って買った物を置きました。
そして、再びモールへ……
広いフロアに沢山の人が集まっています。
「なんだろうね?」
「アイドルですよっ!! 典秀さん」
「亜美さんどうしたの? 何!?」
フロアのステージには、女の子のグループの姿がありました。
私は、全く知りません。
亜美さんは、知ってるんだ。
て言うか、前に居るファンの人の声援がすごいです。
パワーに圧倒されます。
私は、近くに貼ってあるポスターを見ました。
「新曲発売のキャンペーンね」
亜美さんも好きなのでしょうか?
それとも、ただ知っているだけなのでしょうか?
見ると、いい感じに体を動かしています。
20~30分くらいでしょうか、ミニライブを観賞していました。
「ちょっと行って来ます!」
「えっ!? 亜美さん……」
「ここで待っていて下さい。」
そう言いながら、彼女は列に並びました。
結構かかりそうです。
私は、近くの柱に寄りかかりました。
「はぁ、はぁ……。お待たせしました~」
「CD買ったんだ。ん~」
「意外に女性にも人気あるんですよ。ほら!」
まだ列は続いているけど……
よく見ると、女性の人も並んでいるのが見えました。
サインももらったんだ。
「よかったね」
「はいっ! さぁ行きましょう!」
「お腹空かない? まだ、少し昼には早いけど……」
時刻は、11時40分です。
私は、何だかすごくお腹が空いています。
「じゃあ、2階のフードコートに行きましょう」
「行こう! 何を食べようかな~?」
「もう、典秀さんたら……」
2階のフードコートは、徐々に混んで来ている様子です。
私達は、席を一応確保しました。
「典秀さん、先に食べるもの決めてきて下さい」
「いいの? じゃあ、ちょっと行ってくる」
「いってらっしゃい」
何にしようかな?
ご飯ものがいいな。
「ん~……」
彼女をあんまり待たせても悪いしな。
早めに決めて席に戻ろう。
しかし、彼女の前には……
呼び出しベルが置かれていました。
「あれ? もう注文したの!?」
「……えぇ、ちょうど人が少ながったので頼んじゃいました」
「良いんじゃない? ……ずいぶん混んできたね」
私の選ぶ時間が意外と掛かってしまったのかも知れません。
本当に混んできました。
「こんなに混むんだね」
「そうですね~。もう座るところ無い感じですね」
「あっ! キタッ!」
ブザーが鳴りました。
「持って来るのがやっとだよ。おっ!? もうある!」
「鳴っちゃって……。でも、まだ食べてませんよ」
「じゃあ、食べよう! 食べよう!!」
食事をしている時も席が空くのを探している人達……
なんかピリピリしています。
食事を食べ終えた私達。
「さぁ、行こうか!」
「あの……。ここ良いですか?」
「あぁ。どうぞ」
立ち上がった瞬間、すかさず声を掛けられました。
私達は、フードコートを離れて専門店街へ向かいました。
「どうしようか? 洋服とか見る?」
「どちらかと言うと、雑貨のお店の方がいいですね」
「天然石とかの店はどう?」
私は、結構好きなんです。
天然石とか鉱石が……
「アクセサリーもあって好きですよ」
「本当!? 確かここのモールにもあったと思うけど」
「あぁ~、3階にありますね」
いつの間にフロアガイドを?
気付かなかった。
「あそこですね!」
「なんかいい物あるかな?」
「あると良いですね」
店に入りました。
「たま~に、ショーケースの中も穴場なんだよね」
「そうなんですか?」
「……今日は、目を引くのがないかな?」
亜美さんが、ピアスを見ています。
「似合うんじゃない! プレゼントするよ」
「えっ!? そんな~」
「良いから良いから……」
私は、レジへ向かいました。
「はい、どうぞ!」
「ありがとうございます」
「あっ! 隣り見てみない?」
私達は隣のアジアン雑貨の店に入りました。
その後も色々と回り、またフードコートに戻って来ました。
「なんか疲れたね」
「そうですか~?」
「なんか飲もう!」
彼女は、元気です!
「タピオカありましたよね?」
「あぁ~。あの黒い粒の?」
「それにしましょう!」
初めての飲み物です。
「おっ!! 連続で来るとすごいね」
「ふふっ! そうですね」
「結構入ってるね。これ!」
下から見ると、たくさん入っているのが分かります。
「あ~、亜美さんはどんな絵を描いてるの?」
「えぇ~。秘密ですよ~まだ」
「だよね~。どんなのにしよう?」
「お母さんも期待していますよ! 典秀さんの作品を」
「そうなの? じゃあ、気合を入れて描かなくちゃね」
いつの間にか、時間は過ぎて私達は帰る事にしました。
「今日は、ありがとうございました」
「こっちこそ! お互い、いいのが描けると良いね」
「はい! 頑張りましょう!」
彼女を家で降ろし、自宅に向かいます。
車には、たくさんの画材道具が乗っています。
結局、道具を買っただけで何を描くかはこれからです。
さぁ……
何を描こう!?
バラの花でも描こうか?
それとも、彼女……
次話へつづく