「不覚?」
いとこのよっちゃん! なぜ貴方が私の隣に? と何度も思った典秀でしたが仕方がない。自ら招いた事、割り切る事にしました。日食の当日の天気は? そして、うかつにも典秀は……。会社から帰宅した典秀の携帯にメールと着信!? 出かける事になる。
亜美さんの家を離れスーパーに向かいます。
車の中は少々重たい空気?
二人の男が何も話すこと無く乗ってます。
何か無いか……
私は、口を開きました。
何でも良いからと思いました。
「よっちゃんて呼ばれているけど?」
「佐久間洋平といいます。だから……よっちゃんです」
「なるほどね。取りあえず洋平君でいいかな」
私は、人を呼び捨てとか出来ない性格なので……
「じゃあ、僕は牧さんで良いですか?」
「あぁ、いいよ」
「亜美ちゃん、今日機嫌悪かったですね」
君のせいだよ!
君の!
「いや! 彼女の家に行ってからだよ」
「え~。そうなんですか? なんでだろう?」
「えっ!? そういう感覚?」
これは、亜美さんも大変だ……
って、この状況は自分が大変な前触れ?
スーパーに着きました。
昨日も来たよな。
「結構、飲む方なの?」
「あぁ……。そんなには飲めないですね」
「そうなんだ」
一応、買う物は買って、自宅に戻って来ました。
「さぁ、何があったんだい? 聞くだけは聞くよ」
「実は……。あっ! 飲んで良いですか?」
「あぁ、どうぞ」
飲まないと言えないって事もあるか……
「ふ~……! 実はですね……。じつは…………」
「おいっ!? お~~い? 全然、酒弱いじゃないか! この男もか……」
「みきちゃ~ん……。あぁ……」
彼女の名前って、みきって言うんだな。
どうせ、しょうが無い事でケンカしたんだろう。
犬も食わないか?
「どうするか? このままソファで寝てもらうか」
明日も少し早起きしないといけないな?
全く今週は慌ただしい……
寝よ!
いよいよ今日は、皆既日食の日です。
天気予報では、一部の地域では朝方小雨がパラつくとか……
昼頃には、全国的に晴れるそうです。
「あれ?」
「おはようございます! キッチン借りてます! 昨日は……どうも」
「これ作ったの? 昨日っていっても特に何も聞いてないよ」
彼女の名前くらいかな……
本題的な物は、一切分からない。
「食べましょう! 食べた後、その……。送ってもらいたいんですけど」
「それは、構わないけど。結局? 何があったの?」
「そうです! 聞いて下さい! みきちゃんが悪いんだ……」
唐突だな~
まるで、自分に全く非がない様な言い方。
まぁ、聞いてみますか……
「で? 何が悪いんだい? 彼女の……」
「それがですね~……。僕の原チャリのヘルメットにハートのステッカーを貼って」
「原チャリ? ハートのステッカー?」
本当にしょうが無い事なのか?
この人は、原チャリで通勤してるんだ。
ハートか~。
「……そのステッカーが、どうしても恥ずかしくて取っちゃたです。……これ」
「これ? この小さなステッカーがダメなの?」
「それだけじゃないんですよ! この間だって……」
これは、本当に犬も食わないよ……
どうするかな~。
「あ~。でも、よく考えてみたら? 彼女は誰の事を思ってやったのか?」
「でも……。ハートですよ! ハート」
「甘い! 甘いな! ケンカしてもいいじゃん! それとも別れるかい!?」
つい熱が入ってしまいました。
洋平君は、すこしシュンとしています。
言い過ぎた?
いや、そんなはずは無い!
「まぁ、もう一度彼女と話し合ってみたら? ……!」
「あぁ~、みきちゃん……? うん! うん!」
「もう話し合ってるし……」
支度でもしようかな?
まだ話しているし。
「あの~……典さん」
「今、すぐ出れる様に支度してるから、ちょっと待って」
「分かりました。ありがとうございます」
洋平君を車に乗せて家を出ました。
彼の話しによると、家の近くのコンビニまででいいとか……
私は、てっき亜美さんの所にバイクで来たのかと思っていました。
しかし、歩いて来たようです。
「今日って、日食あるんだよね。知ってた?」
「そうなんですか? 何時頃ですか?」
「ちょうど、お昼頃だよ。…………あのコンビニだよね」
駐車場に車を止めて、洋平君と別れました。
携帯を見ると、亜美さんからメールが来ていました。
申し訳ないという意味合いのメールでした。
今、洋平君と別れたと返しました。
こんな朝に見てくれるとは思わないけど……
しかし、甘やかしてはいけないというメールがすぐ戻って来ました。
その後、起きている事を知ったので直接会話をしました。
私は、コーヒーを買って会社に向かいました。
雲の無い空!
皆既日食を見る為のコンディションは最高です。
雲が少しあった方が良いのかもしれないけど……
これを見に行った人達も喜んでいる事でしょう!
知っているだけでも4人いますね。
昼食を食べ終えた頃、周りがざわつき始めました。
「始まったよ~!」
私は、太陽の見れる下敷きという物を数枚持参していました。
もちろん1枚は、亜美さんに……
近くに亜美さんがいます!
「宮元さん! これで見てみなよ!」
「ありがとうございます」
「あと、2枚あるけど……」
私は、そばに居た事務所の女性従業員に貸しました。
「すごいね……」
次第に、辺りが暗くなって来ました。
というより、暗くなってしまいました。
周りからは……
「おぉ~!」
「すげぇ~!?」
そんな歓声が聞こえます。
そろそろです!!
更に!
「おぉぉ~!」
「これが~!」
そうです。
ダイヤモンドリングです!
「すごいね。亜美さん……!」
「そうですね。神秘的ですね」
「そう、神秘的だね宮元さん……」
私は、さりげなく言い直した。
気付いてないかな?
今、さりげなく亜美さんって言ってしまいました。
さっき下敷きを貸した2人が近寄って来ました。
「はい。麻牧さんありがとうございます」
「いいもの見れました。 さっき……。亜美さんって言ってました?」
「あぁ……あ~。そういう時もあるんじゃない? ははは……」
聞こえていたんだ。
鋭い質問だまったく……
「さぁ! 午後の作業開始だ! はは」
「どうしたんですか? 麻牧さん急に?」
「お二人さん? 前からこんなに仲良かった?」
うぉぉぉぉぉ~!
またもや鋭い質問です!!
どうしょう……
「はい! 良いですよ! 知りませんでした?」
「あっ、そうなの?」
「亜美ちゃん達、実は付き合ってたりして?」
この女性従業員の二人は、亜美さんの2年先輩です。
こう言う話題が好きそうです。
「じゃあ、これからですね! もうチャイムが鳴ります。戻りましょう」
「そうね。3時からの会議の資料くばらないといけないしね」
「麻牧さん、ありがとうございました」
…………。
こんなに穏やかな日なのに、私の前を風が吹き抜けて行きました。
ポツンと取り残された感じです。
あぁ……
女性は分かりません。
亜美さんが、臨機応変に対応しただけなのか?
午後の作業は、何だか落ち着かない感じでした。
一大イベントも終わって……?
いや!
私には、まだ来週に控えている更なる一大イベントが!?
そうです。
彼女の誕生日です。
でも、来週は遅番になるから……
帰宅時間が遅くなる。
22時過ぎになるから食事はどうかな?
あと、自宅でさっと空港で買ったプレゼントを渡すか?
最悪これか……?
私は、帰宅する車の中であれこれ考えていました。
帰宅し、携帯にメール?
見てみると、母さんからでした。
今日の日食の時のうす暗くなった写真と……
それと、仲の良さそうな4人の写真!?
亜美さんのお母さんと雪村画伯の姿が一緒に写っていました。
どうして?
同じ所に行ったんだね。
うらやましい!!
メールの最後に、空港への迎えは要らないとの文字がありました。
ある意味……
ラッキーと思いました。
普段走らない空港までの道のりが緊張して、緊張して……
どう帰って来るかは知らないけど不安が一つ消えました。
「あっ!!」
雪村画伯たちと一緒って事は、もしかして帰りは……
おそらく一緒?
そうなのでしょう。
「間違いないな……」
メールを閉じた瞬間!?
亜美さんからの着信です!
「今、お母さんからメールが来て、典秀さんのご両親と一緒の写真が添付されてたんです」
「偶然! 偶然! 今、こっちも見てたよ!」
「楽しそうですよね……」
どうしたんだろう?
一人で寂しいのかな?
かぁ~!!
……うぬぼれか?
自分がこんなキャラ?
なんて考えた事もありませんでした。
「あれ? お父さんたちをまた迎えに行くんですよね?」
「あぁ、それが何だか自分等で帰って来るみたいなんだ」
「そ、そうなんですか……」
会話が……
何か変に続かない。
「ボウリングにでも行かない?」
「えっ? 今からですか?」
「はは……。突然だったね」
私は、何を言っているんだろう。
何か言わなきゃと思って出た言葉が、ボウリングとは自分でも驚いています。
ダメかな~?
「良いですけど……」
「ホント!? よしっ! すぐ行くから」
「分かりました。待ってます」
これは、ラッキーな事です。
ボウリングをするのは、何年ぶりだろう?
行くって言っちゃったからな~。
私は、支度をして亜美さんの家に向かいました。
亜美さんは、すぐに出て来てくれました。
「典秀さんって、得意なんですか? ボウリング」
「いや~。全然だよ。ひさびさってところかな」
「そうなんですか? なんかワクワクしますね」
誘って正解だったかな?
「結構いますね人!」
「そうだね。混んでるね。じゃあ、早く受付済まそう」
「そうですね」
ゲームを始めるまでには、そんなに時間は掛かりませんでした。
「あ~。本当に久しぶりだな~」
「頑張って下さい!」
「よ~し!」
良い所を見せないとな!
少し緊張します。
亜美さんが見ているせいもあるからでしょうか?
私は、ボールを持ち……
構え……
小さな深呼吸をしました。
よしっ!!
ダッと転がって行くボール!
これは……!
「う~……! 9本か~」
「惜しかったですね。スペアを取りましょう!」
「よし!」
…………コン!
「よ~し! スペア!」
「今度は、私の番ですね」
「がんばって」
…………あっ!
「やりました~!」
「実は、上手いんじゃない?」
「たまにお母さん達と来てるんで……」
しまった~!
そうなのか。
これは、まずいぞ!
ブランクのある私に勝ち目はない……
楽しくやるしかないか~。
……次は、7本
スペア取れず。
「あれ? 亜美ちゃん。今日はお母さん達とじゃないんだね。デートかい?」
「あ~、こんばんわ~」
「ワシは、もう帰るんだけどね。じゃあね」
何だ何だ!?
この雰囲気は?
たまにじゃ無く……
常連さんという感じです。
私達は、2ゲームという長き戦いを終えました。
結果はと言うと……
私は、惨敗でした。
1ゲーム目は、126……
2ゲーム目は、124…………。
彼女は……
1ゲーム目は、168
2ゲーム目は、187
でも、まえやった時は100ちょい超えるくらいだった。
だから、良い方だと自分に言い聞かせ納得させました。
それにしても亜美さんなかなか上手いな。
私も負けない様に密かに来ようかな?
他のボウリング場の方がいいかな……
帰りの車の中……
「誘っておいてこれじゃあ情けないな~。はは……」
「じゃあ、また来ましょう! みんなで一緒に!」
「みんな!?」
このみんなとは……
みんな上手いんじゃないのか?
「ははは……。そうだね」
「楽しみです!」
「じゃあ、日をあらためてと言うことで」
やっぱり、秘密特訓しないといけないようです。
でも、時間が……
「約束ですよ! 本当に楽しみです!」
亜美さんは、案外スコアの事は気にしていない様子です。
そんな感じがしました。
「じゃあまた」
「楽しかったです」
「……あっ! いや、おやすみ」
車を発進させ、彼女が家に入るのをバックミラーで確認しました。
あぁ……。
これでいいのか!?
と、私の中の誰かがつぶやきました。
次話へつづく