表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絵ごころ引力  作者: yomo
1/21

「期待」

 いつもと変わらない休日。のはずだった麻牧あさまき 典秀のりひでに昔の自分(趣味)が呼びかけて来た。その感情に任せて会社に向かう。

 私が働いている24時間稼働のこの工場は、昼勤、遅番、夜勤というふうに3交代制で回っている。

 遅番の最終日の今日は、22時までの勤務。

 シフトの為、休みとなるはずだった。

 しかし、今日は交代の数田かずたさんが2時間ほど遅れると連絡があった。

 まぁ、そんな時もあるさと気持ちを切り替え勤務にあたった。


 工場の時計は、23時58分。

 数田さんが姿を現した。


「ありがとさん。お疲れっ!」

「それじゃあ。あがりますよ」


 何だろう?

 今日のこの達成感は?

 そう思いながら、休憩室にある自販機のコーヒーを飲んでから帰る事にした。

 ふと掲示板に貼ってある物に目がいった。

 デッサン教室?

 うちの会社が主催なんだ。


「こんなの何時いつ貼ったんだ?」


 内容は、2日間の日程で二つ絵を完成させるというもの。

 定員が、15人。 


「2,700円なんだ」


 高いのか?

 安いのか?

 まぁ、いいか……。


 申し込みが明日の昼までとなっている。


「牧さん、あがり?」


 バイトの佐々木君が休憩室に入って来た。


「あぁ、帰るところ。じゃあ頑張って」

「お疲れ様でした!!」


 いつも元気な兄ちゃんである。


 着替えて駐車場に向かった。

 車に乗り……


「ETCカードが挿入されていません!」

「はいはい。そうでだな……」


 何気なく答えてしまった。

 いつものコンビニに寄った。

 タイミングが悪かったのか弁当が無い。


「あぁ、どうすっかな~?」


 結局、何も買わずに店を出た。


「ありがとうございました~」


 何がありがとうなんだか?


「牛丼でも食べて行くか」


 少し車を走らせて、24時間営業の店へ向かった。


「えっ!? マジか~」


 やっていない?

 照明が落ちている……よな?


「うわぁ~。マジかぁ~」


 ファミレスはあるけど一人は無理だな。

 自分がよく知っている。


「じゃあ酒とつまみでも買って帰ろうか」


 別のコンビニへ向かう事にした。


「弁当あるじゃん!」


 運よく?

 弁当を入手する事が出来た。

 ついでに、酒も購入!


「画面にタッチしてください」


 って、どう見ても未成年には見えないよな。

 まぁ、しょうがない。


「ありがとうございました!」


 最初のコンビニに配送のトラックが止まっていた。


「そんな事もあるか。タイミングだな」


 家に帰り、何となくネットで動画を見ていた…………


「うわっ!!? もう朝! 寝落ちした~!」


 8時03分!


 驚いて起きたけど、特に予定は無かった~!

 パチンコでもやれば暇つぶしにもなるんだろうけど興味が無い。


「あ~あっ……!?」


 手足を伸ばしたとたん!

 ドサッと棚の上のものが落ちて来た!


「イッテ~! 何~?」


 結構、部屋が揺れてもこんな事は今まで無かった。

 見ると落ちて来たのは、20年くらい前に描いた下手くそなイラストだった。


「懐かしい~。……あっ!」


 休憩室のデッサン教室の事を思い出した。

 すごく気になってきた。


「いいんじゃないかな~描けるさ」

「誰!? でも会社か……」


 電話で?

 いや行こう!

 休日は、土日とは限らない。

 ちなみに今日は、普通に平日である。

 そんな平日に私服で会社に行くのは照れくさい。

 普段、作業服で事務所に入るのも独特な感じがするのに。


「麻牧さん? どうしました?」

「あ……。休憩室に貼ってるデッサン教室が気になって……」


「あぁ。あれですか。持って来ましょうか?」


 私は、照れくさそうに首を縦に振った。


「これですね」

「まだ大丈夫かな~って」


「確認して見ましょうか?」


 再び、私は首を縦に振った。


「はい。あっ、そうですか! 1名分空いているそうです。どうしますか?」

「じゃあ、お願します」


 ここまで来て断れないでしょう!


「じゃあ、一緒に行きましょうか」

「おっ?」


「実は、私も申し込んでるんです」


 マジかぁ~!

 ちょっと待て!?

 日付は?

 申し込んでおいて日付が合わないなんて事は……。


「良かった~!」


 つい声を出してしまった!


「どうしたんですか?」

「いや、ほら日付の事。大丈夫! 行きましょう!」


「はい。頑張りましょうね!」


 私は、ちょっとだけ口角の上がったのを感じながら事務所を出た。


 女性と出かける未来の現実。

 落ち着け!

 落ち着くんだ~……


「あぁ~! でも当日が楽しみだ!」


 両手を上げて、思わず晴れた青空を見上げてしまった!


 仕事がんばろう!!

 心の中で思いっきり叫んでしまった!


次話へつづく

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ