運命のチラシ
『このイベントは完全無料!自分が弱い、絶対泣きたくないと思ってる人必見!!』
こんなチラシがなぜか床の上においてあった。
たぶん母親がポストに入っていたのを僕の部屋に置いておいたのだろう。
こんな嘘くさいイベントに誰が参加するのか。
俺はそれを丸めてゴミ箱に捨てた。
(そうだ、塾の宿題)
そしてすぐさま終わっていない塾の宿題に取り掛かった。
"2次方程式x2+px-3=0 の解のひとつがx=3である。pの値ともうひとつの解を求めなさい。"
(わからない...)
5分が経過した。
シャーペンを回す回数が増え、速度が加速していた。
(わかんねぇ...)
15分が経過した。
シャーペンはまだ失敗せずに回し続けている。
ノートを見返すことにした、が、同じような問題がなく、進展がなかった。
20分が経過した。
ついにシャーペンは音を立て手から落ちた。
限界がきた。あと5分で家を出なければ塾に遅刻する。仕方なく、俺は諦めて家を出ることにした。
「…ここの問題は?」
先生に問われた。正直に答えるしかない。俺はプライドが高い、しかしかといって嘘をつくのも嫌いだ。
「分かりませんでした。」
もちろん先生はけなしたりせずに素直に教えてくれた。
なんだろう、今まではこれくらい耐えられたのに、今日は悔しすぎて泣きたい。
これくらいがなんだ。
悔しすぎて、家に帰ってすぐに宿題に取り掛かることにした。しかし逆効果だった。解ける問題が一つもない。シャーペンを強く握りしめた。
"ポキッ"
折れた。
僕の心はもう限界だった。心も同時に折れた気がした。イライラしてたまらない。そんな時、ゴミ箱からちょろりと見えた紙があった。
気になったので開いて見てみると、つい数時間前にゴミ箱に捨てたチラシだった。
今回はそれが輝いて見えた。二度と捨てようとは思わない。
それは、今の自分に必要なものに思えた。