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Ⅳ ⅹⅲ

「これが最後のお誘いです。第一聖地芯体リゼッタ嬢。私と、そして第五聖地の芯体の座を得た私の配下と共に至高圏――そして世界へ、新たなる統治者として君臨しましょう」

 男は確信の笑みを浮かべた。

「新たなる賢者、そう、千年前に天へと隠れたノアの再来として!」

 まるで天へと発したような、高らかな言葉が空気を振るわせた。


 同じ頃、ゲストルームでは、何も知らないゲストたちが折り重なって眠っていた。

 屋敷の一室では、少年が銃を前に拳を握りしめていた。

 迷路のような廊下では、少女が出口を求めて辺りを見回していた。

 遥か向こうの聖地では、青年が静かに虚空を眺めていた。

 そしてとある空間では、青年と少女が急激な速度で空を切っていた。


「……」

 宵闇のバルコニーでは、止まない風が二人の御芯体を撫でていた。

 長い髪が、ふわりと羽のように躍った。

「お断りだわ」

 少女の唇がそう告げた。

 男は一瞬目を見開く。そして直後、残念そうに眉を下げた。

「そうですか。……では、覚悟は出来ていると言う事でよろしいですね?」

 レスターが握手を求める手を引いた。

 高い破裂音が響く。バルコニーから続く部屋から、次々と男たちが躍り出て来た。

「っ」

 リゼッタは身を引いた。

「申し上げましたね。私の屋敷の使用人は皆、腕の立つ技師なんですよ」

 男たちの手には変換機が握られている。武器の効果を持つ代物だと一目で分かった。

「なびかないと分かったら力ずくで屈服させるつもり?」

「いいえ。拷問よりも遥かに確実で単純な策を取りますよ」

 男たちの武器がリゼッタに照準を定めた。

「殺して、第一聖地芯体の資格を奪い取ればいいだけだ」

 変換機の一つが火を噴いた。拳ほどもある金属球がリゼッタへと突き進んだ。

 砲弾はリゼッタの脇を掠め、ベランダの手すりを穿った。ビギっと音が立ち、手すりに蜘蛛の巣状のヒビが走った。

「誰でもいい! この娘を殺せ!」

 レスターの命令が響く。男たちは弾かれたように地を蹴った。

 少女は一瞬で屈すと思われた。争いなど知らぬ箱庭の姫君なのだから。レスターは勝利を確信し唇を笑ませた。

 しかし――ナイフの一閃が少女のドレスを引き裂いた、その時だった。

 現れた細い足には、銃を収めたガーターベルトが巻かれていた。

 リゼッタはホルスターから銃を抜いた。ほんの手の平ほどの拳銃を両手で構え、男の一人へ引き金を引いた。

 発射された超短波長波が頭に衝突した。

「ブっ! うぐぐぎぁっ」

 捻じれた悲鳴が上がった。

 男は激しく震えながら昏倒した。途中、男の頭部からぶしゅっと血液が吹き上がった。

「は……?」

 レスターは唖然と、男の死体を見下ろした。男の両目は破裂し、深紅の泉となった眼窩からドクドクと血液が湧き出していた。

 レスターはわななく瞳を少女へと向けた。

 再び少女が引き金を引いた。

 キンと頭を突く異音と共に、別の男の頭が激震した。風船のように眼球が膨張し破裂する。噴き上がる血液。レスターはスローになった視界にそれを認めた。

 ドザっ、と音を立てて男が倒れる。

 コンクリートの床に、使用人姿の死体が二つ転がった。そしてレスターと同じように、五人の男たちが唖然と仲間の死体を眺めた。

「胸を撃てば心臓が爆発するわ。悪いけれど、振動数の加減はまだできないのよ」

 ちゃっ、と少女の銃が鳴った。

「……へ、変換機を」

「ええ。こちらに来てから修得したのよ。ひとまず殺傷能力の高い変換機を、ね」

 冷静な少女の両目に、レスターはゾクリと背筋が粟立つのを感じた。

「こんな所で役に立つとは思わなかったわ。……素知らぬ顔で迎えに来るでしょうあの人にも、今日と言う今日は一発ブチ込んでやるつもりだけれど」

 リゼッタは不快そうに眉をひそめた。

 男たちが怯えたように後ずさった。ざりっ、と彼らの靴が立てた音でレスターは我に返った。

「おっ、お前たち! 娘を捉えないか!」

 腕を振って使用人たちを促す。しかし彼らは頬に冷や汗を伝わせながら躊躇した。無残な仲間の死にざまを見れば当然だ。

 こんな主、見切りをつけて降伏しなさい。

 リゼッタが言いかけた、その時だった。

「リゼッタ?」

 場違いな少女の声が飛び込んで来た。

 アベル。

「アベル、逃げて!」

 叫んだ時はもう遅かった。

 これと無い好機を察知した使用人が、即座にアベルを羽交い締めにしていた。

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