Ⅳ 至高たる科学ⅰ
エントランスの扉をくぐり、続いて現れる二つの扉の、小さい方へと足を向ける。正面に構える堂々とした扉は聖堂へと続いているが、今晩用事があるのはそちらの方ではない。案の定、行くべき扉の前にはドアマンがやわらかな笑みで佇んでいた。
「ようこそ、いらっしゃいました。第五聖地預言者シオン様」
慣れた風に彼は言うと、シオンが差し出した招待状を受け取った。
シオンは彼のエスコートに従って扉をくぐった。扉くらい開けられるのに、と慣れない気分を隠しながら。
長く伸びる廊下はベルベットの絨毯が敷かれている。壁には地界から持ち込んだらしい額縁入りの絵画。
第二聖地に来るのは随分久しぶりだけれど、こんなにゴテゴテした内装だっただろうか。
聖堂は天にそびえる荘厳な尖塔。しかし内側はエリーシャらしく、もっと素朴な感じだった。今絵画が掛っていた所にはドライフラワーが飾られていた気がする。
御芯体がレスターさんに変わってから、貴族趣味な聖堂にされたんだな。シオンは軽い嫌悪感と共に納得した。
――何でエリーシャは彼に好き勝手されても文句を言わないんだろう。
彼の利己的、そして極めて反則的な行為を、彼女はどうして見過ごしているんだろうか。
歩む先にドアマンを控えた扉が見えて来る。溢れるような生花の束と、ツタをモチーフにしたスクリプトのウェルカムボード。
「まさか、束縛されている――」
瞳が揺れる。
それと同時にシオンは、笑顔のドアマンに扉の中へといざなわれた。




