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Ⅱ ⅹⅶ

「なっ、何で知ってるの!?」

「何でって、契約が結ばれたら分かるネ。わたしも預言者ヨ。第五聖地の浮力がちょっとだけ戻ったことくらい分かって当然ネ」

 呆れたように教えるチェンリー。

「至高圏のみんなも知ってるヨ。シオン兄サマが次の誰かと仮契約したテ。だからあの人もこんな誘いよこしたネ」

 シオンの手にある招待状を見る。そう言えば、新しいメンバーの歓迎パーティだと書いてあった。

「じゃ、じゃあ主役はアベルだってことか」

「アベル言う名前? 女の子ネ?」

「うん。アレックスの妹なんだ」

 妹、とチェンリーは目を丸くして繰り返した。

「アレックス、何考えてるネ。継代の儀式の事ちゃんと説明してたカ?」

「彼自身もそうして御芯体を継いだんだから、分かってるはずだよ」

 ただ、まだアベルには伝えていない。再認すると途端に気が重くなった。

「アベルは納得したネ? もしかして言わないまま仮契約したとか言わないネ?」

「……」

 チェンリーはため息をついた。

「図星ネ。シオン兄サマ、恨まれても知らないヨ。これじゃテッド兄サマの二の舞ネ」

 シオンは即座に首を振った。

「僕はテッドみたいに強引な手を使うつもりは無い。何とかしてアベル自身の意思でやってもらうつもりだ」

「それならいいヨ。シオン兄サマは今まで通り、優しい兄サマでいてほしいネ」

 チェンリーは聖堂の中を覗き込んだ。

「入っていいカ? アレックスにお別れ言いたいネ」

「うん。是非会ってあげて」

 シオンの脇をすり抜け、少女が聖堂に入る。薄闇の中に、鮮やかな衣装が花のように浮かび上がる。ふわふわと揺れる袖を眺めながら、シオンは少女の背に続いた。

 チェンリーは祭壇に置かれた棺の前に辿りつくと、蓋に両手を付けて覗きこんだ。背伸びをし、内側に眠るアレックスへと目を細める。

「アレックス……変わってないネ。眠ってるだけみたいヨ」

 穏やかな寝姿は、誰の目にもそう映るようだ。

「久しぶりネ、アレックス。第八聖地のチェンリー、ヨ。覚えてるカ?」

 少女は静かな声で語りかけた。

 忘れないよ。シオンは微笑みながら思った。第五聖地と第八聖地は近いから、君はよく遊びに来ていたじゃないか。

 アレックスと時間を共有したのはたった五年だけれど、僕ら預言者と違って、彼ら人間は何倍も密度の濃い時間を過ごしている。僕らがとうに忘れてしまった五年間の感覚の中に、君の記憶はきっと色濃く刻まれている。

「シオン兄サマ」

「うん?」

「……アレックスとお別れするのは悲しいヨ。でもわたし、アベルに会うのも楽しみネ」

 ドキリと心臓が鳴る。

「アレックスの妹ネ。仲良くなれると嬉しいヨ」

 振り返り、少女は微笑んだ。

「ところでアベル、どこにいるネ?」

 屈託のない笑みが、闇の中で固まっているシオンを包み込んだ。

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