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なろうパートナープログラムについて(2026年8月) ~小説家になろうの高いアクセス数下落率と復活方法

掲載日:2026/08/23

 ■はじめに 衰退し続ける小説家になろう

 

 2026年7月現在、“小説家になろう”のアクセス数の減少が止まりません。2024年3月にアクセス解析サイトのアクセス数のカウント方法が変わったらしく、過去のデータとの連続性が失われてしまったので、それ以降のデータ比較しかできないのですが、前年同月の下落率を出してみたので、まずはそれを提示しておきます。

 

 202404→202504 下落率9%

 202405→202505 下落率12%

 202406→202506 下落率6%

 202407→202507 下落率8%

 202408→202508 下落率8%

 202409→202509 下落率5%

 202410→202510 下落率9%

 202411→202511 下落率7%

 202412→202512 下落率7%

 202501→202601 下落率8%

 202502→202602 下落率9%

 202503→202603 下落率9%

 202504→202604 下落率11%

 202505→202605 下落率12%

 202506→202606 下落率15%

 202507→202607 下落率20%

 

 前月のアクセス数との比較は、日数や休日の数などに大きく影響を受けるので避け、代わりに前年同月との比較をしています。これを見れば明らかなように、小説家になろうのアクセス数は、1年毎に10%前後の下落をしています(そして、直近ではそれが加速しています)。

 注釈を入れておくと、なろう原作コミックの販売や映画との協賛などがノイズになっているので、この下落率をそのままなろう人気の下落と理解する事はできません。例えば、2024年9月はなろうが協賛し、劇中になろうサイトが出て来る映画が公開されたので、その宣伝効果でアクセス数が増えているはずですから影響を差し引かなくてはなりません。また、3月、9月、12月はコミックの新刊販売が多い月だそうですから、コミカライズ作品による宣伝でアクセス数が増えている可能性が考えられます。

 ただし、細かい差異はあるにせよ、小説家なろうが衰退をし続けている点はまず間違いない事実だろうと考えられます。

 僕はもう何年も前からなろうの衰退を予想してきました(もっとも、僕以外にも同様の予想をしていた人は多数いるでしょうから、別に自慢できた話でもないのですが)。そして、だからこそ小説家になろうの運営さんが、どんな対策を執るのか注目をして来たのです。その上での僕の結論ですが、

 「何にも分かってねぇな」

 です。

 何かしら対策を執り続けているのは分かるのですが、どれも足りなかったりまったく無意味だったりで効果が薄いものばかりでした。

 今まで、僕はなろう衰退への警鐘だけじゃなく、なろう改善案も述べて来たのですが、仮にそれを運営が読んでくれていたとしても、そもそも需要・供給・宣伝という基礎を理解していないように思えるので、有効には活用できないかもしれません。

 すいません。

 傲慢に思えるかもしれませんが、理屈を説明すれば納得してくれると思います。

 

 ■需要、供給、宣伝

 

 小説に限らず、何かを人間に消費してもらおうと思ったのなら、需要、供給、宣伝が必要になって来ます。

 例えば、お米。

 お米の需要があり、それを供給する農家さんがいて、そこにお米がある事を消費者に宣伝する事で、お米は消費されます。

 なろうでもこれは同じですね。

 ファンタジー作品への需要があって、それを供給する創作者がいて、更にファンタジー作品がなろうにある事を消費者に宣伝する事で、はじめてなろうへのアクセスが発生するのです。

 だから、まずは需要予測から始めなくてはなりません。需要の限界を超えた供給や宣伝をいくら行っても、なろうのアクセス数は増えないからです。

 仮に、作品への限界需要が以下だったとしましょう(単位は特に重要ではないので、気にしないでください。数字も、もちろんいい加減です)。

 

 ファンタジー 10

 ミステリー 7

 政治経済 3

 

 限界需要が10なのだから、供給量や宣伝を20に増やしても、30に増やしても、消費されるのは10だけです。

 つまり、無駄です。

 どれだけファンタジーが人気であったとしても、ファンタジーばかりを供給、宣伝していてはなろうのアクセス数は増えないという事ですね。

 が、今の小説家になろうは、恐らくは以下のような状態になってしまっていると思われます。

 

 ファンタジー 需要10、供給30、宣伝30

 ミステリー 需要7、供給3、宣伝2

 政治経済 需要3、供給1、宣伝1

 

 自分事で恐縮なのですが、僕が書いてなろうに投稿したエッセイに『国の借金の仕組みと、それに絡む話を簡単に説明してみました』というものがあります。ポイントは、たったの79ポイントしか付いていません。なろうでの宣伝力はほとんどポイントと同義ですから、つまりはそれほど宣伝されていない事になります。

 が、しかし、ユニークアクセス数は7万を超えています。これは随分と前にとある経済サイトの目に留まって紹介されたからなのですが、つまりは“政治経済”というジャンルについての需要もこの程度は見込めるという事になります(参考までに、自分の作品の中で最高の2706ポイントの『盲目の女と醜い男』のユニークアクセス数は4万6千くらいです)。実際、YouTubeでは政治経済コンテンツは人気で解説動画等が大いに賑わっていますから、小説家になろうでも宣伝を行い、何らかの手段で創作を促せば、政治経済というジャンルでもっとアクセス数を伸ばせる可能性があります。

 ……もっとも、宣伝にもコストがかかりますから、コストに見合った結果が得られるとは限りませんし、各サイトでそれぞれのカラーがある点を考えるなら、本当に政治経済を伸ばす事が小説家になろうにとって有益かどうかは議論の余地がありますが(ただし、小説家になろうくらいに巨大になれば、“くだらない作品もあれば、真面目な作品もある”という売り方も選択肢の一つとして現実的ではあります)。

 一般的な小説作品で最も人気があるジャンルはミステリーなので、“埋もれている需要を掘る”という観点から判断するのなら、最も運営が力を入れるべきなのは恐らくミステリーでしょう(具体的な方法については後述します)。

 ですが、実は通常のサイトの“宣伝”となろうの“宣伝”は別物だと考えるべきです。何故なら、小説家になろうの宣伝手段は非常に特殊で、一般的な企業とはまるで違う特性があるからです。次にその点を説明します。

 

 ■小説家になろうの宣伝

 

 説明する前に断っておきますが、これは飽くまで“小説家になろう”というサイトについての宣伝であって、小説家になろうに掲載されている作品の宣伝ではありません。小説家になろうにおいては、ポイントランキングの上位に入る事が非常に強力な作品の宣伝手段になっていますが、だからここではそれは含みません。では、説明をします。

 小説家になろうがテレビCMを利用していた事はありますが、それは一時的なものに過ぎず無視しても良い程度のものでしょう。サイト自体の宣伝は、大きく以下の3つになるのではないかと思われます。

 

 1.投稿者による宣伝

 

 小説の投稿主が、自身の小説を宣伝する為に行うSNSなどでの宣伝行為です。これは結果的に、小説家になろう全体の宣伝にもなっています。

 ただし、現在ではなろうポイントランキング上位の宣伝力があまりに強力である為、実質的にポイントを得る為の宣伝になってしまっている可能性がかなり高いです。つまり、なろう登録者への宣伝であり、新規層を呼び込む効果は薄いのではないかと思われます。

 

 2.外部サイト(読者)による宣伝

 

 小説家になろうには、読者が好きな作品を宣伝する機能があります。それがどれだけ効果を発揮しているのかは分かりませんが、時折、小説家になろうの作品が外部サイトで話題になる事があります(僕の経済エッセイのアクセス数が伸びたのも、このカテゴリに含まれます)。ほとんどがネタ枠…… あまりの馬鹿な内容にツッコミを入れていたり、作者の素行の悪さが叩かてしまっていたりするものですが、中には「こんなに面白い作品があった」と紹介されるケースもあります。

 因みに、昔はかなり盛んに小説家になろう作品の原作がネタ枠で話題にされていましたが、今では当たり前になってしまったから、滅多に話題になりません。恐らくこれは、なろうアクセス数減少の大きな原因になっているものと思われます。

 

 3.メディア展開による宣伝

 

 これが現在の小説家になろうの本丸ではないかと思われます。メディア展開によって作品が話題になり、それによって小説家になろうも宣伝されるという流れですね。

 因みに、生成AI作品ではこれができません。現段階では、生成AI作品は著作権の扱いが非常に難しく、“著作権は発生しない”と判断されても不思議ではない状況です。その為、商業化したとしても利益を出し難いのです(仮にヒットしても著作権で保護されていないので独占ができません)。また、生成AI作品に敵意を持っている人も少なくないので、商業化しただけで恐らくは炎上します。

 生成AI作品の集客力が非常に高いのであればその限りにあらずですが、ですから小説家になろう運営にとってポイントランキングなどで生成AI作品を宣伝するメリットはありません。宣伝リソースを奪うことで機会損失が発生してしまいますから、現段階ではデメリットの方が遥かに大きいでしょう。

 もし仮にポイントランキングが生成AI作品ばかりになってしまったなら、長期的には小説家になろう衰退を決定づける要因になるのではないかと予想できます。だからこそ、僕は生成AIが登場した初期の段階から、「生成AI作品を区別できるようにするべきだ」と提案していたのですが、小説家になろう運営が対応したのはなんとつい最近の2026年6月です。なんでこんなに遅いのでしょうかね……。

 

 冒頭で説明した通り、現在、小説家になろう全体のアクセス数は減少をし続けています。作品投稿数は十分ですから、「需要のない作品の供給を行い、しかもそれの宣伝をし続けてしまっている」という事になります。

 次は、なろうで代表的な“異世界なろう系ファンタジー”を分析しつつ、その原因についてより深く考えていきましょう。

 

 ■異世界なろう系ファンタジーの分類と価値

 

 世間での異世界なろう系ファンタジーの評価を観ていると気になる点があります。一口に“異世界なろう系ファンタジー”と言っても様々な作品があり、様々な需要や扱われ方をしている訳ですが、それらを乱暴にひとまとめにして、「人気がある」或いは「人気がない」などと論じてしまっているのです。

 例えば、ある記事では、あらすじを読んだだけでテンプレ作品ではないと簡単に分かる『勇者刑に処す』をなろう系テンプレ作品として紹介していました(世間一般的に、なろう発ではない場合も、似たような系統の作品は“なろう系”と表現されています)。メディアの上層部でも恐らくこれは同じで、区別が付いていないのではないかと思われます。例えば、アニメ映画『果てしなきスカーレット』は興行的に大失敗をしていますが、この作品にはなろう系テンプレ作品の要素があります。確かになろう系テンプレアニメ作品には需要がありますが、飽くまでネタ枠でしかありません。有料で、大喜利やツッコミをして皆で楽しめない映画作品には不向きです。これをテレビ局上層部の人間は理解しておらず、『果てしなきスカーレット』の企画にオーケーを出してしまったのではないでしょうか?

 そこで異世界なろう系ファンタジーの価値をより正確に把握する為に、まずは以下のように分類したいと思います。

 

 1.ネタ枠(テンプレ作品)

 2.ガチ枠

 3.ネタ枠でガチ枠

 

 各々説明していきます。

 『1.ネタ枠(テンプレ作品)』は、作品そのものではなく、ネタとしての需要がある作品です。例えば、ほとんど擬音だけで戦闘シーンが表現されていたり、誤字脱字や後書きまでコピペという著作権法違反で訴えられないのが不思議でさえある作品がこれに該当します。これら作品には、恐らくは作者の意図とは違った需要が発生しているのではないかと思われます。

 このタイプの作品は、特にアニメ化において価値が高いと考えられます。何故なら、低品質であっても、それがネタとしての面白さに繋がる為、費用対効果が高くなるからです(ネタ枠の作品の強みは、視聴者が自身のツッコミなどを皆で共有したがるので、必然的に宣伝効果が高くなる点にあります。つまり、視聴者参加型のエンタメになっているのです。だからこそ、評価は低いのに再生回数が多くなるといった奇妙な現象も起こります)。ただし、コミカライズ作品は一部では成功してはいるものの、打ち切り作品が非常に多いのでそこまでの価値はないと思われます。そして、なろうにとって最も重要な“原作”ですが、これは現在は価値が非常に低いと言わざるを得なくなっています。

 価値が低いと断じる何よりの証拠は原作の売上げが非常に低く、供給量が多過ぎる点です。なろう作家自身が公表しているのですが、コミカライズされなければあまり稼げないそうです。ただし、それでもかつては巨大匿名掲示板や動画などでネタ枠のなろう作品の原作は頻繁に取り上げられていました。酷い内容の作品、或いは作者が問題などを起こした時に、作品もセットで散々に話題になっていたのです(一応、断っておくと、ほとんど悪評ばかりです)。ですが、ある時から取り上げられる事が少なくなっていき、今ではほとんど関心が持たれていません。

 今でも、なろう系コミカライズ作品などがネタにされる事はありますが、原作や原作者にはほとんど触れられません(一部、過去に有名になった原作者は触れらる場合もありますが)。

 なろう系テンプレ作品の原作や原作者を弄ることで有名になったレビュアーの方がいるのですが、現在は原作のレビューを止めている上にアクセス数が随分と下がってしまっています。これはなろう原作や原作者への世間の関心が薄れているからでしょう。また、別のあるなろう系コミカライズ作品のレビュアーは「原作はもう確認しない」と公言しています。それまでそのレビュアーは原作もチェックし、その上でレビューをしていたのですが、それを無意味と判断したのですね。そして、実際にそれでも彼のレビューのアクセス数には何の影響もないように思えます。

 “小説家になろうテンプレ作品の原作の酷さ”は既に当たり前になってしまっており、話題としての新鮮味を失ってしまっているのです。そして、それに伴ってなろうへの宣伝効果も低下してしまったと考えるべきです。

 先にも述べましたが、これが小説家になろうのアクセス数下落の大きな原因の一つになっていると思われます。

 まとめると、『1.ネタ枠(テンプレ作品)』の価値判断は以下になります。

 アニメ化:〇 ネタ作品として価値あり。低品質でもアクセス数が伸びるので、費用対効果が高い。

 コミカライズ:△ 現在でも、一部で成功例有り。ただし、打ち切り作品の数が多過ぎるので、全体としてはマイナスであると思われる(アニメが放映されている最中に打ち切られるというケースまで存在する)。

 原作:× 原作の売上げは非常に低く、にも拘らず、供給量が非常に多い。また、アニメ化されても、コミカライズされても原作に興味が持たれていない(なろうへの貢献度も低いと考えられる)。

 これらテンプレ作品の悪評は、間違いなく小説家になろうのブランド価値を低下させていました。或いは、なろう運営さんはそれでもアクセス数が増えているのだから問題はないと判断していたのかもしれませんが、長期的に観れば問題があるのは明らかです。それが今になってアクセス数の減少として現れているのではないでしょうか? 本来ならば、悪評が大きく話題になっていた時期に手を打っておくべきでした。

 アニメ化されているなろうテンプレ作品には、コミカライズや原作が数年前にネタとして盛り上がっているものが少なくありません。ですが、現在はそういった作品は少なくなって来ています。もし仮に、高い再生回数がそのお陰であったとしたら、これからは作品数が減っていくか、アニメ化されたとしても再生回数が下がるかもしれません(国外でも、再生回数は高いらしいので、あまり関係がない可能性はあります)。

 

 なお、原作ではネタ枠(テンプレ作品)であった作品が、漫画家の手によって、ガチ枠になるというケースも稀にではありますが存在します。その場合の、なろうへのアクセス数の貢献度は未知ではありますが、コミカライズに際しては、優秀な漫画家に「自由に改変してオーケーです」という形で依頼をした方が良いのかもしれません。

 

 次に『2.ガチ枠』について説明します。

 小説家になろうにも、テンプレ作品ではなく、高いオリジナリティと高いクオリティがある作品が存在します。多少のテンプレ要素がある場合も多いのですが、作品全体に大きな影響を与えているとは思えず、なくしてしまっても支障はないように思えます。何作か僕はこういった作品を目にしているのですが、コミカライズがレビューで高い評価を受けているだけでなく、原作もお薦めされている場合が多かったです。

 作品に魅力があれば、当然ながら、原作もチェックしたくなるでしょうから、ガチ枠の小説家になろうへの貢献度は高いだろうと予想できます。『薬屋のひとりごと』や、『無職転生』といった非常に人気のある作品が頻繁に出て来るのであれば、小説家になろうは安泰でしょう。ですが、近年はそのような作品は出て来てはいません。恐らくは、テンプレ作品が支配的になってしまっている事が原因ではないかと思われます。オリジナリティを尊ぶ精神がない評価土壌では、オリジナリティのある作品は育ちません。

 

 最後は『3.ネタ枠でガチ枠』です。

 これはネタ枠として話題になる事を狙いつつ、オリジナリティが高く、確りとクオリティも高い作品です。ネタ枠との明確な違いは、製作者側が意図的にネタを作品に活かしている事が分かる点です。

 ただし、僕が知らないだけかもしれませんが、こういった作品を創作するのは、なろう作家以外のプロだけのように思えます。プロがなろうのテンプレ作品のネタ要素を巧みに活かしているのですね。

 

 以上、なろう系ファンタジー作品を分類してみましたが、『1.ネタ枠(テンプレ作品)』の原作…… 小説作品がほとんど話題にならない現状を鑑みるに、『2.ガチ枠』、『3.ネタ枠でガチ枠』を増やす試みが、小説家になろうにとって重要であることが分かります。

 

 次に、以上を踏まえて、“なろうチアーズプログラムの失敗”について考えてみます。

 

 ■なろうチアーズプログラムの失敗について

 

 なろうチアーズプログラムは、2025年11月に始まりました。この月の下落率の7%は低い数字に思えますが、比較している昨年2024年11月は、既に協賛していた映画の宣伝効果が薄らいでいるはずなので、前月の下落率9%を考慮に入れると、本来ならば下落率はもっと低くなっていなければいけないはずです。

 なろうチアーズプログラムは、アクセス数を増やせば増やすほど収益が増える仕組みなので、ユーザーが宣伝活動を熱心に行うだろう点から即効性があると予想できますが、それが観られません。作品執筆に時間がかかると想定するのなら、遅効性である可能性もありますが、1月、2月の結果を考えるとそれもなさそうです。むしろ悪化していますから。

 アクセス数が低くなっていくと、普通は下落率は低くなっていくはずです。それを勘案してもこれは酷い数字です。

 ――つまり、なろうチアーズプログラムは今のところは失敗したと判断するべきなのです。

 僕はなろうチアーズプログラムが始まる前からその効果を疑問視していました。2025年10月のエッセイで、「効果は限定的」とはっきり述べています(もっとも、ここまで効果が低いとは流石に予想できていませんでしたが)。理由は色々とありますが、ざっくり述べてしまうと、「なろうチアーズプログラムは、なろうポイントランキングシステムの問題点を悪化させてしまう」のです。

 なろうチアーズプログラムは、アクセス数が増えれば増える程、お金が稼げるシステムです。そして、なろうでアクセス数を増やそうと思ったのなら、ポイントランキングで上位に入るのが最も効果的です。しかし、現在のなろうポイントランキングは、非常に偏ったジャンルの作品で占められているので、上位に入ろうと思ったのなら、それらジャンルの作品を投稿せざるをえません。が、それらジャンルの作品は、明らかに供給過多状態なのです。

 つまり、なろうチアーズプログラムが始まる前が、

 

 ファンタジー 需要10、供給30、宣伝30。

 ミステリー 需要7、供給3、宣伝2

 

 であったとするのなら、始まった後は、

 

 ファンタジー 需要10、供給40、宣伝50。

 ミステリー 需要7、供給1、宣伝1

 

 のような状態になってしまっているという事です。

 実際、これは起こったと考えるべきです。僕はミステリー(推理)も書くのですが、なろうチアーズプログラムが始まってから、わずか2ポイントしか入らなかった作品が、週間どころか月間のランキング100位以内にランクインするようにすらなってしまったのです。明らかに、推理ジャンルの作品の投稿数が減っているのです(一応断っておくと、世間一般的には、小説で最も人気のジャンルはミステリーです)。

 もちろん、ミステリー以外のジャンルでもこれは同じでしょう。

 要するに、なろうチアーズプログラムは、歪なポイントランキングとの組み合わせによって、供給過多のテンプレファンタジー作品の供給量や宣伝を更に増やしてしまい、逆に需要に対し供給量が少ない、本来は増やすべきジャンルの供給量や宣伝を減らしてしまったのです。人気ジャンル以外の作品に関しては“供給量が減れば読者が減り、読者が減れば更に供給量が減る”という負のスパイラルが起こっているのだろうと容易に想像ができます。

 小説家になろうの、カクヨムやアルファポリスなどの他の小説投稿サイトにはない独自の強みは、人気ジャンル以外にも幅の広い作品がある事だという指摘がありますが、なろうチアーズプログラムは、この強みを失わせてしまっているかもしれないのです。或いはこれを放置すればカクヨムやアルファポリス程度にまでなろうのアクセス数は下がってしまうかもしれません。

 ――そろそろ、なろうの運営はポイントランキングシステムの問題点にもっと真摯に向き合うべき時期なのではないでしょうか?

 これはプロのある有名ななろう作家さんが実際に言っていた事なのですが、「ポイントランキングを利用すれば、あまり面白くない作品でも商業化が可能で、大金を稼げる」のだそうです。当然、“あまり面白くない作品”が商業化されれば、出版社に損失を与え、小説家になろうのブランド価値は低下します(補足しておくと、彼の作品は打ち切りになっています)。ポイントランキングの問題点は、それだけではありません。先にも述べた通り、“強すぎるポイントランキング”は、なろうに機会損失を発生させる生成AI作品も増やしてしまいますし、それ以外の不正も招きます。

 ――だからこそ、僕はなろうチアーズプログラムが始まる時に「ポイントランキングからのアクセスにはあまりお金を支払うべきではない」と主張したのです。

 その代わり、それ以外でのアクセス数で支払う金額を上げ、ポイントランキング上位に入らなくても努力すれば小遣い稼ぎくらいならばできるようにするのです。そうすれば、例えば、料理研究家がレシピを掲載するといった利用をする可能性も出て来るようになり、小説家になろう作品の多様性を促し、より多くの需要を満たす事でアクセス数も復活していたでしょう。

 初めからの方針ならば、それほどの反発はなかったかもしれませんが、今から「ポイントランキングからのアクセスに支払う金額を下げる」と方針転換をすると抗議をする人も現れるでしょうから、いきなり全てのポイントランキングからのアクセスに支払う金額を減らしてしまうのは下策です。ポイントランキングからのアクセス数に支払う上限を設け、それ以上は支払わないといった対応が良いかと思います(それでも怒る人はいるでしょうが)。例えば、100万アクセスまでは支払うがそれ以上は支払わないとすれば、ポイントランキングの悪影響を緩和できます。

 

 なろうチアーズプログラムは、どう考えても失敗していますが、そのお陰ではっきりと分かった点があります。

 それは“なろうテンプレ作品は既に需要の限界を迎えている”点です。

 先にも述べた通り、僕はなろうチアーズプログラムの効果を疑問視していたのですが、それでも宣伝力を強める効果はあるはずなので、少なくとも初期にはそれなりの効果があるのではないかと予想していました。にも拘らず、当初からアクセス数はあまり増えなかったのです。

 宣伝を増やしたのに、十分な効果がない。

 これは主な宣伝対象であろうなろうテンプレ作品の需要が、これ以上は増えないだろう事を意味しています。

 ただし、これは全てのファンタジー作品の需要が限界である事を意味している訳ではありません。テンプレ作品はその名の通り、パターン数が少ないのです。多種多様なファンタジー作品を生み出しさえすれば、必ずまだファンタジー作品の需要は見つけられるはずです。

 では、多種多様なファンタジー作品を生み出す為にはどうすれば良いのでしょうか?

 それには何らかの方法で“実験”を促す必要があります。

 

 ■“実験”の重要性について

 

 2026年5月、出版事業を手掛ける株式会社KADOKAWAが赤字決算の理由として、「なろう異世界系へ偏重していた」という点を挙げました。前述しましたが、小説家になろう原作作品は数多く打ち切られているので、この主張に納得した人は多くいるでしょう。

 ――がしかし、ここで疑問にするべき点があります。

 実は小説家になろう発に限らず、作品があまり伸びず打ち切られるのは当たり前にある事なのです。魚が産んだ無数の卵の内、生き残り、成魚になるのがほんのわずかしかないのと同じ様に、創作物のほとんどは陽の目を見ずに消えていってしまうのですね。

 ただし、それでもKADOKAWAのなろう系への施策には異常な点がありました。それは、“打ち切りになったタイプと似たようなタイプの作品を数えきれない程商業化した”点です。KADOKAWAは同じ様なキャラクターが活躍する、同じ様なストーリーの作品を何度も何度も商業化していたのですね(そもそも作品のクオリティが低いという指摘もありますが)。普通は、打ち切りになったなら、次はその作品とは別タイプの作品を試してみるものだと思うのですが、そうしなかったのです。様々な作品を試してみるからこそ、その中からヒットする作品が出て来るのです。人間は飽きる動物ですから、過去のヒット作の刷り直しでは成功しません。漫画雑誌を観ると、その為の実験を行っている事がよく分かります。例えば、週刊少年ジャンプですが、時折、これまでのジャンプにはない、驚くような新しい作風の作品を掲載する事があります。

 『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』、『磯部磯兵衛物語』、『純情パイン』、『モンモンモン』……(すいません。パッと思い付いたのがギャグマンガだけでした)

 それらは大成功だったり、多少は成功、ビジネス的には失敗だったりする訳ですが(失敗だった場合でも、唯一無二の作品世界を世に出したという点で評価に値するとは思います)、いずれにしろ、こういった挑戦的な姿勢がなければ、新しい作風を拒絶し続けたアメコミ作品が現在は衰退してしまっているように、ジャンプは衰退してしまっていたでしょう。漫画ジャンル全体で観るのなら、SNSなどで話題になった実験的な作品を商業化する事で、新しい息吹を業界全体に取り入れています。

 つまり、“実験”がマンネリを防ぎ、業界全体を活性化させ続けているのです。実験がいかに重要かが分かるでしょう。

 しかしです。実験には、コストの問題が付きまといます。実験作は、実績のない作品を世に出すのですから、失敗して当然です。大きなコストをかける訳にはいきません。

 

 ■実験はコストをあまりかけずに行うべき

 

 細田守監督作品の“果てしなきスカーレット”は、前述した通り、興行的には大失敗をしています。これまでの細田守監督作品の需要を考慮した上で作品分析を行っていれば、この大失敗は防げていたと僕は考えているのですが、仮に分析をしていなくても、常識的な安全策を取っているだけで、この大失敗は防げていたはずです。

 “果てしなきスカーレット”は、実験作でもありました。これまでの細田守監督作品とは違ったジャンルの違った作風なので、そう判断するべきでしょう。がしかし、「失敗して当然」の実験作にしては、コストをかけ過ぎています。

 まずは15分~30分程度の短編作品として似たような作風のアニメ作品を発表し、世間の反応を観た上で、長編アニメ企画をスタートさせるというプロセスを執っていたなら、本格スタートの前に企画の練り直しが行われていたはずです。

 つまり、“実験”は業界全体の活性化の為に必要ですが、あまりコストをかけてもいけないのです。コストをかけず、できるだけ数多く実験する事で費用対効果が上がるからです。漫画雑誌では、ですから、まずは読み切りの短編として作品を発表し、次に連載に進むという段取りを執るのが普通になっています(今はウェブ掲載というパターンもありますが)。

 ところで、現在、小説家になろうは、メディア展開が主流になっています。“小説家になろう”ではなく、“漫画原作者になろう”になってしまっているのですね。そして、漫画やアニメなどの作画表現に関しては、どうしても“実験”は実際に作ってみるしかありませんが、キャラクターや設定、ストーリーに関しては、小説でも実験は可能なのです。そして、恐らくは、最もコストのかからない小説での実験方法は、小説投稿サイトでの発表なのです。

 現在、小説家になろうでは、出版社におけるユーザーの投稿作品の商業化が欠かせなくなっています。商業化した作品がなろうを宣伝してもいますし、また、商業化できる可能性があるからこそ、投稿をし続けているユーザーも多いでしょう。

 つまり、出版社の為の、小説家になろうにおいて実験は、小説家になろうにとってもメリットがあるのです。一応断っておくと、前述した通り、多種多様な作品を生み出し、「新しい需要を開発する」点から、小説家になろう単体でも実験は重要です。

 

 ■小説家になろうが執るべき全体的な方針の整理

 

 ここで、今まで論じて来たポイントの整理をします。

 

 1.ネタ枠(テンプレ作品)の需要は既に限界なので、供給量を増やしたり宣伝を増やしたりしても読者アクセス数は増え難い。

 2.ミステリーや歴史、政治経済といったジャンルは、需要があるにも拘らず小説家になろうにおいての供給量・宣伝は少ないので、何らかの方法でアピールすれば読者アクセス数を増やせる可能性が高い。

 3.ファンタジー作品についても、実験作を促す方策を執れば、新たな需要は喚起でき、出版社を介してのメディア展開にとっても価値がある(ただし、もちろんガチ枠)。

 

 さて。

 恐らく小説家になろうは、アクセス数の減少を受けて、2026年7月からなろうパートナープログラムというものを開始しました。

 今のところ、まだ全容が不明なので、何をするつもりなのかはっきりとは分かりませんが、上記の3点を踏まえた上での現段階での考察をしていきたいと思います。

 

 ■なろうパートナープログラムは、何を狙っているのか?

 

 冒頭で下落率を示しましたが、小説家になろうの直近の下落率は特に大きく、

 202504→202604 下落率11%

 202505→202605 下落率12%

 202506→202606 下落率15%

 202507→202607 下落率20%

 と加速度的にアクセス数が減っています。

 この原因ですが、前述した通り、2026年5月、株式会社KADOKAWAが赤字決算の理由として、「なろう異世界系へ偏重していた」という点を挙げていますから、その影響とも考えられますが、他のカクヨムやアルファポリスなどの小説投稿サイトでは目立った下落は観られません。アルファポリスの出版事業は、KADOKAWAとはあまり関係がないでしょうから影響がなくても不思議ではありませんが、カクヨムが影響を受けていないのは不自然です。

 カクヨムにはない、小説家になろうの特性は“ジャンルの幅が広い”点と、“女性ユーザーが多い”点です。ですから、前述した通り、なろうチアーズプログラムの失敗の影響で、小説家になろうのジャンルの幅が狭くなってしまった所為でユーザー離れが起こったか、或いは、KADOKAWAの発表を受けて、男性ユーザーは離れなかったが、女性ユーザーは離れてしまったと考えるのならば納得ができます(まさか、始まってもいない“なろうパートナープログラム”に絶望した訳でもないでしょうから)。

 実際、かつてに比べれば、ポイントランキング上位に入っている女性向け作品は減っています。以前はアクセス解析サイトで男女比が無料で観れたのですが、現在は観られなくなってしまったので、確かな事は言えないのですが、女性は男性よりもグループ内の結び付きが強いので、一部のグループが一斉に離れてしまった可能性はあるのではないかと思われます。

 ただ、仮に切っ掛けがKADOKAWAの発表であったとしても、本当の原因だと決めつけるのは早計でしょう。それ以前から小説家になろうでの作品投稿に辟易していて、止めるタイミングを探していただけかもしれません。下落率の加速は、発表前の4月から始まっていますしね。

 いずれにせよ、なろう発の作品が出版社で商業化し、成功しなければ、小説家になろうのアクセス数の復活はほぼないので、執るべき内容は大きくは変わらないのですが。

 そして、恐らく、なろうパートナープログラムは、この下落の影響を受けているのではないかと思われます。

 

 なろうパートナープログラムは、“メディア化打診のサポート”をオンにした作品が小説家になろう運営の目に留まれば、出版社などに営業をかけてくれるというものらしいです。作品分析を行った上で評価するといった説明がありますから、アクセス数が低くとも評価対象になるかのような印象を受けますが、この時点で様々な疑問が浮かびます。

 

 1.膨大な数の作品をどうやって分析するのか?

 僕はなろうパートナープログラムを初めて知った時、AIによる作品分析を行うのかと思っていたのですが、そんな記述は見当たりません。人手で行うのなら、コストの面から結局はポイント上位作品に限られてしまうように思えます。

 

 2.小説家になろう運営に本当に作品分析能力があるのか?

 今までの小説家になろう発の作品を観ると、作品のクオリティに対して無関心だったか、或いは作品分析能力がないようにしか思えません。つまり、実績がないのです。

 

 3.出版社に営業をかけようと考えるまで高く評価した作品があるのなら、何故、運営は読者にそれを紹介しないのか?

 ハイレベルな作品を宣伝すれば、小説家になろう全体のアクセス数を増やす効果も期待でき、ブランド価値も上がるでしょうから、不可解です。

 

 4.何を根拠に、小説家になろう作品を出版社に売り込むつもりでいるのかが分からない

 今まで、出版社は恐らくなろう作品の膨大なアクセス数を根拠にして商業化を決定していたのでしょう。KADOKAWAが、何度打ち切りになってもテンプレ作品を商業化し続けた理由は恐らく膨大なアクセス数があるからだと思われます。なろう運営に作品分析能力の実績がなく、宣伝もしないままでは売り込みようがありません。

 それとも、強力なコネでも使うのでしょうか?

 

 5.なろうパートナープログラムから商業化作品が出なければ、ユーザーの信頼が失われる

 これだけ大体的に宣伝をし、営業をすると宣言をしているのですから、何かしら成果が出なければユーザーの小説家になろう運営に対する信頼は失われてしまうでしょう。また、ポイントランキング上位の作品が商業化されたなら、ユーザーはそれを小説家になろう運営の営業力の力ではなく、アクセス数のお陰だと判断するでしょう。これでは、なろうパートナープログラムはユーザーにとって無意味に見えてしまいます。

 

 6.なろうパートナープログラムから商業化した作品がコケてしまった場合、ユーザーだけなく、出版社の信頼も失う

 仮になろうパートナープログラムによって、商業化に成功したとしても、その作品の売上げが芳しくなかったなら、ユーザーだけでなく、出版社も小説家になろう運営を信頼しなくなるでしょう。だからこそ、なろうパートナープログラムで選ばれた作品を、小説家になろうで宣伝しない点には不審を抱かざるを得ません。本気でこの企画を成功させたいと思っていたなら、選んだ作品の宣伝は必須です。

 また、もしなろう運営が営業をかけた作品が、生成AI作品だった場合、その責任を問われるだろう事は想像に難しくありません。現在、AI利用作品である事を明示するルールにはなっていますが、嘘をつくユーザーはいくらでもいます。

 

 7.なろうパートナープログラムを利用した作品を対象に、“なろう異世界ファンタジーフェス! 2026”を開催しているが、小説家になろう主催のコンテストで充分足りるように思える

 なろうパートナープログラムなど、わざわざ介さなくても、“なろう異世界ファンタジーフェス! 2026”は開催が可能です。

 

 以上です。

 正直に言わせてもらうと、何を狙っているのかがよく分かりません。果たして、なろう運営は、本気でこの企画を成功させようとしているのでしょうか?

 もしかしたら、「商業化をサポートするので、どんどん投稿してください」というメッセージなのかもしれませんが、疑問点で挙げた通り、作品分析の量には限界があり、作品分析力についても未知で、また宣伝がない点を考慮すると現時点ではポイントランキング下位の作品では商業化は難しく、言い方は悪いですが、もしそうならば、利用者を騙しているようにすら感じます。実際はポイントランキング上位の作品しか選ばれないのではないでしょうか? 仮に運営がアクセス数の少ない作品を選んでいたとしても、出版社がその作品の商業化を決めるようには思えません。

 が、メリットもあります。現時点の情報で、明確になろうパートナープログラムのメリットだと思えるのは“作品の品質管理ができるようになる”点です。

 前述した通り、小説家になろう運営は、今まで商業化作品の品質管理を行って来ませんでした。

 結果として、ブランド価値を低下させるような作品が何作も商業化され続け、今ではなろう作品は一部では“レベルの低い作品の代名詞”のような扱いを受けるまでになってしまっています。なろう作品の品質管理不足は、KADOKAWAに「なろう異世界系へ偏重していた」とまで言わせた大きな失敗の原因の一つでもあるでしょう。

 小説家になろう運営は、積極的に商業化に関わる事で、これを防ごうとしているのかもしれません。つまり、商業化前に、品質の低い作品を除外するフィルターの役割を果たそうとしているのです(信じられない事に、商業化されたなろう作品の中には、作品分析能力などなくても容易に判断できるほどに低いレベルのものが含まれています)。しかし、それをそのまま説明すると、ユーザーの心象を悪くしてしまうので、いかにもサポートをするかのような表現にしているのではないでしょうか?

 がしかし、その程度では、世間に根付いたイメージを払拭する事はできないでしょう。

 “なろう異世界ファンタジーフェス! 2026”のコンテストに至っては、そもそも“作品分析によってヒット作を抽出する”という発想そのものが間違っています。

 

 ■作品分析は“売れる可能性が極めて低い作品”を判断する事しかできない

 

 世間で行われている賞やコンテストの評価には、実はいい加減なものが多い点が指摘されています。例えば、恐らく世界で最も有名な映画賞であるアカデミー賞ですが、一部の審査員が、映画を観もせずに投票していた点が問題になった事があります。小説家になろう関連でも、レビュアー達の意見を信じるのなら、大賞を受賞した作品のクオリティが非常に低い場合があるのだそうです。実際、小説家になろうにおいて、様々な賞が毎年開催されていますが、受賞作がヒットしたという話は聞いた事がありません。

 ただし、それでは作品分析を的確に行えば、ヒット作が選べるのかと言えば、それも違います。一部にしか知られていませんが、作品のヒットに関する特性は研究されていて、様々な実例や実験などで、ランダム性がある事が分かっているからです。そういった研究を扱っている書籍を軽く紹介しておくと、

 『ネットワーク科学が解明した成功者の法則 アルバート=ラズロ・バラバシ 光文社未来ライブラリー』、『偶然の科学 ダンカン・ワッツ 早川書房』、『AI過大評価社会 アルヴィンド・ナラヤネン、サヤシュ・カプール 草思社』などなど…… (まだまだたくさんあります)。

 もちろん、作品のヒットには作品のクオリティも大いに関係していますが、ある程度のクオリティがあるのなら、どんな作品がヒットするのかは誰にも分からないのです。分からない以上、できるだけ多種多様なタイプの作品を宣伝してみるしかありません。

 作品分析が有効なのは、“ヒットする可能性がほとんどない”作品の判別であって、“ヒットする作品”を判別できる訳ではないのです。

 現在のコンテストは、わずかな作品しか選ばないのが普通ですが、ですからこれは非常に不効率なのです。数十作以上の候補作を選出した上でネット上に公開して宣伝をし、アクセス数や世間の反応を観た上で受賞作を決め、本格的に商業化を始める方がより効率的でしょう。ネット社会の現代でなら、それは容易に可能なのですから(わずかな作品しか選ばないのは、恐らくアナログ時代から残った慣習みたいなもので、誰もその固定概念を変えられないだけなのだと思われます)。

 さて。

 以上を踏まえた上で、“なろう異世界ファンタジーフェス! 2026”を考えてみましょうか。

 

 “なろう異世界ファンタジーフェス! 2026”では、営業確約作品が12作選ばれる事になっています。どの程度宣伝されるのかはまだ不明ですから、それについては何とも言えませんが、企画を成功させるつもりでいるのなら、少々心もとない作品数と言わざるを得ません。

 どうせなら、多種多様なタイプの作品を100作くらいを選出した上で、サイトの目立つ位置で宣伝を行い(順番はランダムに一時間くらい毎に変わる)、最低でも一ヶ月はそれを続けてアクセス数や世間の反応を観た上で、企業に対して営業をかける…… といった方法が良いかと思います。

 今の“コンテストで選ぶ”という方法でも商業化くらいなら可能でしょうが(コネもあるでしょうし)、ヒット作を出すのは難しいでしょう。

 また、“注目の作品要素”の説明を観ると、ネタ枠(テンプレ作品)を推奨しているかのように見えます。「本コンテストの商業化ご相談先の企業・レーベルが注目する要素となります」という事らしいのですが、普通、どんな企業でも、オリジナリティある作品を求めるものだと思うのですが、そこは強調しなくて良いのでしょうか?

 これは或いは邪推に過ぎるのかもしれないのですが、「小説家になろうに小説を投稿するユーザーには、オリジナリティある作品を書く実力がない」と運営は判断していて、敢えてオリジナリティを求めていないのかもしれません。このコンテストは飽くまでユーザーに対するご機嫌取り的なイベントに過ぎず、ヒットする作品を選ぶつもりはない…… とすら感じてしまいます。

 

 ■小説家になろう運営は、宣伝活動を熱心に行う投稿者に配慮するあまり、読者を蔑ろにしているように思える

 

 小説投稿サイトが大きくする為には、何よりもまず作品を投稿してくれる人を集めなくてはなりません。ですから、小説家になろう運営が、投稿者に気を遣わざる得ない点は理解できます。

 ただ、それは飽くまで初期段階の話であって、現在は必ずしもそうとは言い切れないのではないでしょうか?

 『薬屋のひとりごと』や、『無職転生』といった人気のあるメディア展開作品で読者は呼び込めます。そうして集まった読者に、クオリティの高い作品を紹介さえできたなら、ヘビーユーザーになってくれる層は必ずいるでしょうし、その作品が更なる宣伝効果を生み、メディア展開にまで至れば、それでまた広く世間から読者を呼び込めるという良循環を作り出せます。

 ……今は、オリジナリティのないネタ枠(テンプレ作品)が原因で、この良循環が壊れてしまっている訳ですが。

 小説家になろう運営は、投稿者に対して、自身の作品を宣伝するように促しています。投稿後に、別のSNSサイトにワンボタンで宣伝できる画面が出て来ますし、それ以外にも似たような機能があります。

 恐らくは、小説家になろう運営は“小説投稿者自身による宣伝”を重要だと考えているのでしょう。だから、クオリティの低い作品でも切る事ができないでいるのではないでしょうか? 作品の質を重視し、質を競わせるシステムを作ってしまうと、その作品を宣伝する意味が低くなってしまいます。つまり、投稿者に宣伝を促せなくなってしまうのです。仮にそれが組織票であったとしても、ポイントを入れに来ている時点でアクセス数を増やす効果はあるのですから。しかし、それは同時に読者を蔑ろにする方針でもあるのです。

 いくつか例を挙げましょう。

 仮にポイントを入れてくれるとオマケが見られる機能を小説家になろうに実装したとしましょう(オマケはもちろん投稿者が用意します)。“面白い”と思った作品のオマケは見たがるのが普通ですから、こうすると作品にポイントが入り易くなり、クオリティの高い作品ならば、わざわざ宣伝に力を入れなくても済みます。つまり、その分、小説家になろう全体の宣伝が減ります。

 ですが、読者にとってはクオリティの高い作品がポイントランキング上位に入り難くなるので、優良な作品に出合う機会を奪われてしまいます。もちろん、作品の魅力で読者を呼び込む効果もあまり期待できなくなります。

 小説家になろうでは、前述した通り、生成AI作品であるかどうかが2026年6月まで分かり難かったのですが、これは生成AIを利用している投稿者にとってみれば都合が良い事でした。生成AIを敵視している人が世の中には少なくないからです。

 ですが、読者への配慮には欠けていました。「生成AI作品なんて読みたくない」、「生成AI作品の応援はしたくない」という読者も世間にはいるのです。

 前述しましたが、なろうパートナープログラムでは、運営が作品を選出し、出版社に営業をかけるのだそうですが、その作品を読者に紹介しようとはしていません。これは宣伝活動を重視している投稿者にとっては都合が良いかもしれませんが、読者の立場なら、そんなに魅力的な作品があるのなら、是非とも読んでみたいと思うでしょう。つまり、読者を軽視しているのです。

 

 小説家になろうには膨大な投稿者がいますから、それら投稿者達による宣伝は、間違いなくサイト全体にとってプラスになります。ですから、作品の質よりも、宣伝活動を競わせるという方針に、特に短期間でのメリットがある点は否定できません。

 がしかし、それには当然ながら副作用があって、作品の質を下げてしまいます。近年の小説家になろうはヒット作が随分と少なくなっていますが、その原因の一つは、間違いなくこの作品の質と読者を軽視する方針の所為でしょう。

 「なろうパートナープログラムは、なろう運営が商業化される作品の品質管理をしたいが為に始めたのではないか?」

 という推測を先に述べましたが、これは投稿者による宣伝活動を維持したまま、“作品の質の悪化”という副作用の軽減を目指しているのかもしれません。

 しかし、前述しましたが、それだけでは恐らく効果は薄いでしょう。実験の重要性については、説明した通りですが、少なくとも、ネタ枠…… テンプレ以外の作品をもっと増やさなくてはアクセス数の回復は難しいのではないかと思われます。過去の小説家になろう運営の執って来た方策を観ると、戦記物を促そうとしていたりとその為の努力はしているようですが、結果は芳しくありません。

 (どれくらいのユーザーが戦記物を書いたのかは分かりませんが、戦記物は大長編か長編に向いています。短時間で楽しめる作品…… 短編やショートショートを求めがちな、今のネット民の需要にはマッチしてはいませんので、失敗したのは当然ではないかと思われます)

 

 ――そこで、ほぼ確実に、小説家になろう作品のバリエーションを増やせる方法を二つほど考えてみました。

 

 まずは、“テンプレ作品の作者達に、新しいタイプの作品を書かせる方法”から説明をします。

 

 ■募集作品を固定化すれば、自ずからテンプレ以外の作品を投稿せざるを得なくなる

 

 ネット上で開催されているコンテストの募集要項を読むと、比較的自由である場合が多い点によく驚かされます。これでは当て嵌まる範囲が広い為、作品数が膨大になってしまうので、

 「本当に、全作品を真っ当に評価しているのだろうか?」

 という疑問が当然浮かぶ訳ですが、受賞する作品を観ると、テンプレ作品や、テンプレとまではいかなくても、オリジナリティがそれほど高くない場合が少なくなく、「果たして、“自由”とは何を意味しているのだろう?」と首を傾げたくなります。

 自由に作品を募集して、オリジナリティがない作品が受賞するのであれば、一体、どうすればオリジナリティある作品が出て来るのでしょう?

 (コンテストの主催者側が、選んでないだけだって話もありますが)

 自由に募集してテンプレだらけになるのなら、逆に、コンテスト主催者側が、設定、キャラクター、テーマなどの原案を固定化して提示すれば良いのではないでしょうか? 主催者側が提示した原案にオリジナリティがあれば、自ずからオリジナリティある作品を受賞作にすることができます。

 例えば、このような原案を作ります。

 

 魔女が支配する巨大な魔の森がある世界。

 その魔女は、膨大な魔力と優れた魔法技術を保持しており、世界各国から、軍事、経済の両面での協力を要請されていた、が、魔女は俗世間を疎んじている為に関わろうとしない。ところがある日、その魔女が死に、魔の森と魔法技術の全てを若い娘が受け継いだ。

 新たな魔の森の主である若い魔女の協力を得る為に、各国の政府は様々な手段で彼女を篭絡しようと動き始める……

 

 男性向けならば、素朴な若者がこの若い魔女と恋仲になり、世界の陰謀に巻き込まれていくといったストーリーなどが考えられ、女性向けならば若い魔女の心を各国の男達が奪い合うといったストーリーなどが考えられるでしょう。テーマを“感情と戦争抑止”にすれば、個人の恋愛模様と政治経済を結び付けた意義深い話を作る人も出て来そうです。

 キャラクターは、若い魔女や、彼女を落とそうとする各国の男達などを出し、イメージし易いようにイラストも付けます。全キャラを使う必要は必ずしもなく、サブキャラの追加も自由にします。

 もちろん、一度のコンテスト、一つの原案に拘る必要はありません。こういった案を他にも複数出し、その中から選べるようにした方がより面白いのではないかと思います。どの原案を選んだのかは、タグで判断できるようにし、かつ目立つ場所で応募作品を紹介しましょう。作品を選ぶ基準にアクセス数を含ませれば、投稿者達の宣伝活動を促せます。ただし、作品の選考はシンプルなアクセス数だけを基にするのでなく、以下のようなアクセス分析なども行います。

 

 1.一話目の1ポイント当たりのアクセス数

 『アクセス数÷獲得ポイント』で1ポイント当たりのアクセス数を求めます。一話目のみに絞ったのは、話数が多ければ多い程有利になってしまうからです。この指標で作品がどれだけキャッチ―かが分かります。

 2.継続率を求める

 各話のアクセス数を出し、その減少率を求めます。減少率が低い作品ほど、作品に“読ませる”魅力がある事が分かります。ただし、一括ダウンロードアプリなどを用いている場合があるので、飽くまで参考値です。継続率が低い作品の商業化が決まった場合は何らかの修正を検討するべきでしょう。

 3.アクセス数

 単純なアクセス数も、もちろん、評価指標の一つになります。

 4.小説家になろう以外で、どれだけ話題になっているかを調査する

 SNSなどで検索を行い、どれだけ話題になっているかを確認します。

 5.イラストコンテストを同時に開き、どの作品にどういったイラストが付き、閲覧回数がどれだけあるのかを確認する

 メディア展開を考えるのなら、ビジュアル化は非常に有効です。また、面白い作品には、必ずイラストを投稿したがるファンも付いてきます。ですから、イラスト(漫画でも可)コンテストを開き、投稿数と閲覧回数を確認するのです(もちろん、生成AI作品は除きます)。

 6.作品分析を行って、クオリティを判定する

 運良くアクセス数が多かった、或いは不正な手段を使ってアクセス数を稼いでいるケースも考えられます。反対に運悪くアクセス数が伸びなかったケースも考えられるでしょう。それを考慮し、作品内容のクオリティも判定します。

 

 このような指標を総合して基準にすれば、ヒットする可能性が高い作品をより効率良く選ぶ事ができるはずです。また、コンテスト主催者側が原案を示せば、ある程度の著作権を持てるので、商業化に成功した際の収益が大幅に増えます(これが最大のメリットになるかと思いますが)。

 また、これは生成AI作品問題対策にもなります。

 コンテストの後で、受賞作が生成AIを利用した事が判明した場合、著作権を失うケースすらありますが、主催者に著作権があるのなら問題になりません。ストーリーは真似されてしまうかもしれませんが、それはなろう界隈では既に手遅れです。

 主催者側による原案の提示は、出版社にとっても、小説家になろうにとっても、大きなメリットになるのではないでしょうか?

 ただし、出版社や小説家になろう(どちらが著作権を持つかは分かりませんが)のメリットが上がるという事は、逆に言えば、投稿者のメリットが下がる事でもあります。成功した場合のリターンは減少してしまいます。

 ……それでも、コンテスト参加者は十分に集まると思いますけどね。

 

 さて。

 以上は、テンプレ作品しか書こうとしないユーザーに、それ以外の作品を書かせる方法でしたが、これは一般的な消費者の需要に合わせた作品提供とは言い難いです。飽くまで、今の主ななろう作家達に書けるジャンルを選んだに過ぎません。

 一般的な小説の一番の人気ジャンルは、ミステリーです。そして、更に“可処分時間の奪い合い”を考慮するのなら、短編かショートショートがネットで公開するのなら、最も潜在需要が高いと判断できます(人が多く集まってくるようになれば、長編にも期待が持てます)。

 つまり、短編ミステリーを増やし、宣伝するのがアクセス数を増やす手段として一番ではないかと予想できるのです。

 では、その為の方法を具体的に述べていきます。

 

 ■犯人・トリック当てなどの、読者参加型のイベントを開催する

 

 過去、小説家になろうには、ポイントの平均点の表示がありました。ところが、その所為で平均点を下げて嫌がらせをしようとする輩が現れ、これは廃止になり、以降は加点方式にシフトしたと言われています。

 このエピソードは、小説家になろうの投稿者達がライバル関係にある事を意味しています。ですから、面白いと評価した作品に対しても正直にポイントを入れるとは限らないのです。だからこそ、組織票がとても有効で、一部のユーザーはそういった政治活動に熱心なのでしょう。

 これはクオリティの高い作品が、上位に入り難い原因の一つにもなっていると考えられます。

 がしかし、ならば、この“ライバル関係”という構図を変えてやれば、問題は解決するのではないでしょうか? その為には読者側にも読んだ作品のアクセス数を増やすメリットを与えてやれば良いのです。具体的には、以下のような方法が考えられます。

 

 1.アンケート機能を実装する

 小説家になろうにアンケートができる新機能を実装します。各話の最後に、ユーザーへの選択肢をチェックボックスかラジオボタンで示し、投稿者がそれを確認でき、かつそれに応えられるようにする機能です(チェックボックスかラジオボタンの判断は、投稿者が行えるようにします)。

 

 2.読者参加型のイベントを開催する

 ミステリー作品には言うまでもなく、犯人当てやトリック当ての要素があります。ですから、読者がそれらを当てるイベントを開く事が可能です。投稿者が解決編の手前までを投稿しておき、それを読んだ読者が、上記のアンケート機能によって、犯人やトリックを選択して答えるのです。

 

 3.“正解した作品のユニークアクセス数の合計”で読者に推理力ポイントが入るようにし、アマゾンギフトカードなどを賞品にすることで読者に競わせる

 読者は正解を出した作品のアクセス数の合計で、推理力ポイントを得られるようにし、順位に応じて賞品を獲得できるようにします。こうしておけば、賞品目当てで読者は犯人やトリックを当てようとするでしょう。

 あまりに高額過ぎると、不正者が続出し、深刻な問題になりかねないので、総額50万円分ほどにして、順位に応じて100位くらいまでは賞品が出るようにするのが良いのではないかと思われます。

 或いは、金額は最初は定めず、イベント全体のユニークアクセス数が増えれば増える程、賞品総額を増やすといった試みの方が面白いかもしれません。イベント参加者がより積極的に宣伝をしてくれそうです。

 このようなイベントを開けば、ポイントを得る為に、読者は正解した作品のアクセス数を増やす為の宣伝活動を行ってくれるはずです。

 仲間内でミステリー小説を書き、正解を伝えた上で、その作品の宣伝活動を行うといった不正方法が考えられますが、アクセス数を伸ばさなくてはならないといった点を考えるとそれなりのクオリティが求められます。ですから自分達で創作するよりも、正解した作品の内、クオリティの高いものに目を付け、その作品の宣伝活動を行ってアクセス数を増やす方がより効率的になるはずです(それでも不正をする輩は現れるでしょうが)。その為には、解決編の発表後、一定期間を設けた後でアクセス数の集計を行うべきでしょう。

 

 軽く説明を捕捉します。

 追加するのをアンケート機能にしたは、その方が汎用性が高いからです。アンケートという態にしておけば、人気キャラ投票や今後の展開の要望を読者に尋ねるといった使い方も可能です。事例ではジャンルをミステリーにしましたが、潜在需要が高い点と実施のし易さから選択しただけで、他のジャンルでも同様の事ができます。問題を“今後の展開予想”や、“一番人気のあるキャラクター”にすれば良いだけですから。

 ただし、現在でも供給量が過剰な、テンプレ作品だけは絶対に避けた方が良いです。

 

 このようなイベントを開催するに当たっての最も懸念すべき点は、既に“小説家になろう”というサイトから、一般的な読書好きが離れてしまっているだろう点です。恐らく、ただ単に開催を発表するだけでは集まって来てはくれないでしょう。そこで名の有るプロに依頼を出して、参加をしてもらいます。短編やショートショートならば、それほど時間もかかりませんし、原稿料もそこまではかからないはずです。作成した作品は、後の短編集などに収められるような契約にしておけば無駄にならず、作家自身の宣伝にもなりますから、作家にとってのメリットも充分にあるので、依頼もし易いと思われます。

 

 ■小説家になろうの復活を願って ~軽いまとめ

 

 「このままでは、小説家になろうは絶対に衰退する」

 あまりに酷いポイントランキングトップ層の作品を読んで、僕がそのように愕然となった時から随分と経ちました。メディア展開…… 特にコミカライズの影響もあってか、自分の予想したようには小説家になろうのアクセス数は下がらず、自分の作品評価能力を多少は疑いましたが、現在の状況を鑑みるに、思ったよりも時間はかかりましたが、概ね予想通りになっているようです。

 ただし、それでもネット小説には、ネット小説の需要があって、それは一般的な読書好きのものとは違うのだという点は考慮しなくてはならないでしょう。ベストセラー作家の百田尚樹さんが小説家になろうに作品を投稿した事があったのですが、なんと一位を取れませんでした。知名度実力を考えても常識では考えられない結果です。

 つまり、ネット小説界隈は、一般の出版業界とは別世界なのです。

 では、何がその違いを生む要因になっているのかと言えば、「投稿者、及びに投稿者の仲間達にその作品が執筆可能か否か」という点にあるのではないかと思われます。

 作中で何度も書いたように、ミステリー作品の読者側の需要は確かにありますが、創作するハードルは高く、その能力を持った人は希少です。それに対し、ファンタジーや恋愛…… 特にテンプレ作品と呼ばれる作品群は、他作品のコピーでも咎められ難いという謎の慣習もあってか多くの人に執筆が可能なので、執筆者がたくさんいます。そのたくさんいる執筆者達が一種のコミュニティを形成しており、それがこのジャンルを支える強力な武器になっていると考えられます。

 長い間、小説家になろう運営が、低レベルの作品を野放しにし、作品のクオリティで読者を呼ぶという発想を軽視して来たのも、そのテンプレ作品コミュニティに配慮したからなのでしょう。

 がしかし、テンプレ作品コミュニティには、作り手に対して読み手が少ないという致命的な弱点があります。作中で述べた通り、かつては、“ネタ”という疑似的な需要で小説家になろうのアクセス数を増やすのに貢献していましたが、現在はなろう原作や作家に世間の関心はほとんど向けられていません。以前は悪評ではあったとしても、話題にはなっていたのですが、現在はコミカライズやアニメ化作品が話題になってもほとんど触れられないのです。

 これはネットを観察した上での僕の感想に過ぎず、確りとした調査をした訳ではありません。ですが、なろうアニメ化作品の再生回数が未だに高いにも拘らず、小説家になろう本体のアクセス数が下がり続ている現状を観るに、この推測は正しいと考えた方が良さそうです。

 ――少なくとも、テンプレ作品にポイントランキングの上位のほとんどを占める程の価値はありません。

 分かっている人が多いとは思いますが、メディアの違いによって向いているジャンルは異なります。そして、アクションシーンを見せ場にするタイプのファンタジーは、漫画やアニメには向いていますが、小説作品にはそれほど向いていません。そういった作品は視覚化が重要だからです。知略や策略、心理描写などを売りにしているファンタジーならばまた違ってきますが、それらはテンプレ作品には少ないのが実情です。

 

 小説家になろうは、作品のクオリティでユーザーを呼ぶ発想を取り入れるべき時期に来ている…… いえ、既にずっと前にその時期を迎えていたのではないでしょうか?

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