第2話 親睦を深める事の何が悪い
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胡桃と並んで、昇降口の近くに貼られたクラス名簿を見る。
内部進学組と思わしき奴らがわーきゃー騒いでいるのを横目に、俺は自分の名前を黙々と探す。
俺は苗字が赤月なので、最初の方だけ見れば分かるので、こういう時は助かる。
今回も、すぐに俺の名前が見つかった。
「1年2組か……」
パッと見た感じ、知っている名前は居ない――いや、一人だけ居たか。
「やったー! おんなじクラスだよ、真白くん!!」
「分かったから、ひっつくな、暑苦しい……」
俺と同じく2組になった胡桃は、叫びながら俺に抱き着いてきた。
歳相応の柔らかさが伝わってきて嬉しくはあるが、人目に付くのでやめて欲しい。
文句を言いながらひっぺがすと、胡桃は他の友人の元へ行く事にした様で、女子生徒の誰かに話し掛けに行った。
「……さて」
今の内に、中に入ろう。
昇降口で靴を履き替え、案内用の看板を見る。
教室まで行って荷物を置いてから、順次体育館に向かうそうだ。
面倒だし、早めに行って始まるまで寝よう。
入学式は特に問題も無く終了した。
尤も、俺は半分ぐらい寝ていたので、話のほとんどを覚えていない。
ただ、何故か一部の生徒からの視線が痛かった。多分、主に内部進学組だろう。
式の途中に眠る奴が居たからって、なんだというんだ……思いっ切りいびきをかいて、教師に怒られていた奴だって居ただろうに。
心の中で毒を吐きつつ、教室を出て行った教師の背中を見送る。
この後は、まず隣の席になった人と五分程話し、それが終わったらあとは自由。適当なタイミングで帰れ、との事だった。
教師も出て行ったので、従わずに自由に話し始める奴も居たが、半分ぐらいは素直に従っている。
俺の隣もその口らしいし、面倒だが五分だけ話に興じるとしよう。
一番前から二番目の廊下側の俺の席の隣は、気弱そうな女子生徒だった。眼鏡を掛けておさげ、典型的な文学少女といった感じだ。
先程からこちらを見てもじもじしているので、可哀想だし俺から先に自己紹介してあげよう。
「俺、赤月真白。外部進学組なんだ。趣味はゲームかな? よろしく」
我ながら素っ気無い自己紹介だと思ったが、陰キャにはこれぐらいが限界。
あちらも今ので満足したのか、言葉を詰まらせながらも自己紹介を返してくれた。
「あ、あの、高原詩乃って言います……。内部進学です。え、えと、趣味は読書です……。よ、よろしくお願いしますっ」
うん、趣味を話してくれたので、会話を広げられそうで助かる。
本は俺も時々読むし、大丈夫だろう。
「読書好きなんだ。どんなジャンルの読むの?」
「ミステリーとか、恋愛とか……あ、ラノベとかも、結構読みます」
「あ、ラノベは俺も結構読むかも。まあ、ファンタジーがメインだけど……」
「わ、私もたまにですけど、ファンタジー読みますよ! 最近アニメになったやつとか――」
そんな感じで、好きな本を喜々として語る高原に、適当な相槌を打つだけで五分間が過ぎていった。
相手の好きな話題を引き出せば、あとは嬉しそうに語るのを見ていればいいだけなので、楽なものだ。
まあ、高原の話し様が凄くて、追加で二、三分程持っていかれたのは誤算だったが……。
そんな俺を救済したのは、陽キャっぽいオーラの茶髪男子だった。どこかで見覚えがあるような、無いような……。
「ねえ二人共、楽しそうに話してるとこ悪いんだけど、クラスRINE作ったから、入ってくれる?」
「あ、は、はいっ!」「分かった」
俺と高原は同時に頷き、それぞれの鞄からスマホを取り出す。
「あっ、そういえばさ、君って外部進学だよね? 俺、青木晴翔って言うんだ! よろしくな!」
ああ、なるほど、見覚えがあると思ったのは、コイツが俺の前の席だったからか……。
違和感の理由が判明してスッキリしつつ、自己紹介を返す。
「俺は赤月真白だ。よろしく」
「で、そっちは高原さん……で合ってるよね?」
「は、はいっ」
「そっかそっか! 確か、二年の時同じクラスだったよね? いやー、また同じクラスになれて嬉しいよ!」
「は、はいっ! 私も、嬉しいです……!」
流石陽の者。大人しそうな子相手にもグイグイ行くなぁ……。
青木メインに適当な雑談をしつつ、俺は青木の連絡先とクラスRINEを頂き、青木は帰って行った。
アイツの連絡先までは要らなかったが、まあいいか……。特に話す事も無いだろうし。
「…………」
ん?何か視線が……。
スマホから顔を上げてみると、何か言いたげにこちらをチラチラ見ている高原が。
「ん? どうした?」
「え、えと、その……」
あー……あれかな、俺と青木がサラッと連絡先交換したのを見て、自分も交換したかったとか?
陽キャっぽい女子だったら有り得ない話だろうけど、高原は陰キャ寄りっぽいし、少しでも話せる人が欲しいのだろう。青木とも交換していたが、それはまあ流れ作業みたいな感じだったし……。
「連絡先、交換するか?」
「は、はいっ!」
嬉しそうな笑顔で頷く高原。
うーん、俺の連絡先一つでそんな笑顔になるとは……演技か?実は高原は腹黒なのか?
いや、いかんな……これは流石に疑い過ぎか。俺を陥れようとしているんじゃないか、と疑うにはまだ早い。
すまん、高原。
心の中で詫びつつ、連絡先を交換した。
交換するなり、RINEで猫が『HELLO!』と言っているスタンプを笑顔で送ってくる。
その様子に思わず微笑を漏らしつつ、俺も適当なスタンプを送り返す。好きなゲームやラノベのスタンプばかりで焦ったが、少し探せば普通のスタンプが見つかって――。
「――楽しそうだねー、真白くーん?」
「うぉわっ!?」
低いトーンの声で後ろから肩を叩かれ、思わずスマホを取り落としそうになる。
振り返ると、笑顔で、しかし目だけ笑っていない胡桃が立っていた。背後に炎が見える様な気がするのは、気のせいだろうか……。
「ねえ真白くん、ちょっとこっちで話そうか?」
「え、あの、はい? ――ちょ、引っ張るなっ……高原、すまん! またな!」
笑顔の胡桃に首根っこを引っ張られ、廊下に引きずり出された。
他のクラスメイト達は談笑に夢中で、こちらを気にしていたのがごく少数だったのが、不幸中の幸いか。
「ねえ、真白くん?」
「なんだ――なんでしょう?」
やばい。
オーラが凄くて、思わず敬語になってしまった。
「私と言う幼馴染が居ながら、他の女の子と楽し気に話すなんて、良い度胸だね?」
「いや、何がだよ……。普通に隣と話せって言われたから話して、そのままの流れで連絡先交換しただけで――」
「嘘だぁ! 五分以上話してたし、それにそのまま流れでって何!? いつから真白くんはナンパチャラ男になっちゃったの!? 私だけじゃ満足出来ない体になっちゃったの!?」
「なん――誤解を招きそうな発言を大声で叫ぶのはやめろぉ!?」
まずい、コイツを放っておくと、今後の学校生活に支障が出そうな気がする。
人が集まってくる前に、どうにかしなければ……。
「クラスメイトと親睦を深める事の何が悪いんだよ……」
「先生の指示に従うのは良いけどさぁ、終わったら私に話し掛けてくれてもいいじゃん!? 私、こっち来てくれないかなぁって、チラチラ見てたんだよ!? 気付いてないの!? 鈍感!!」
「なんでそこまで言われなきゃいかん……あと、廊下だから少し静かにしてくれ」
「――あっ、ごめん……」
人が少しずつ集まってきている事に気付いたのか、慌てて謝りながら手で口を押さえる胡桃。
冷静さを取り戻してくれた様で重畳。
「――じゃあ、俺帰るから」
早口でそう言うと、俺は教室に戻り、自分の机からサッと鞄を回収する。
「ちょっとぉ!? そこで逃げるのは違くない!?」
胡桃が俺を追い掛けるようにして教室に入って来たが、関係無い。
俺を捕まえようと伸びてきた腕をスルっと避けて、教室から出る。
「あっ!?」
鞄を回収した時の高原の視線が、妙に痛かったのだけは覚えている。
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