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第1話 胡桃は結構お喋り

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 新品の制服に身を包み、トーストとリンゴジュースだけの朝食を終えた俺は、「行ってきます」とだけ言って家を出る。

 今日は入学式だけで、教科書も事前に配送されるシステムなので、荷物はそう多くない。鞄に詰めたスマホと筆記具、それぐらいだ。


 ちなみに、スマホを買ってもらったのはこの春休みだったりする。

 うちの親は前時代的――とでも表現すべきなのか、小中学生にスマホは要らない! と思っているタイプなので、高校生になるまでは買ってもらえなかった。

 なので、俺のスマホの連絡先は、今の所両親と幼馴染の胡桃ぐらいしか登録されていない。

 まあ、元々特に人と関わる気が無いので、連絡先を増やそうというつもりも無い。


 思考を打ち消し、ドアを閉めて、しばらくマンションの廊下の壁に寄り掛かってスマホを弄る。

 昨日の夜、RINEで胡桃に『明日は一緒に行こうね!』と言われたので、彼女の待たなければいけない。

 目立ちそうな容姿をしている胡桃と一緒に歩くのは少し不安だが、まあ今日だけと思えば良いだろう。幼馴染だと言っておけば、他の奴らの俺に対する興味もその内冷めるだろう。


 夜の間にネッ友――去年の夏休みから遊ぶようになった――から送られてきていたチャットを適当に返していると、正面のドアが開いた。

 出て来たのは、すれ違ったら十人中十人が振り向くであろう美少女。

 胡桃は白いロングの髪の毛を揺らしながら、玄関に居る母親に「行ってきます!」と元気良く言っていた。


 確か、父親がどこかの国とのハーフだとかで、胡桃はクォーターなのだ。なので、あの枝毛一つ見えない美しい白髪は地毛である。

 名前に桃の漢字が入る癖に、髪の毛は白いのだ。いや、胡桃という植物自体は桃色とは少し違うし、そう言う俺だって、名前が真白なのに全然白要素は無いのだが……。


 つまらない思考を振り払い、スマホを鞄に仕舞う。

 ドアを閉じていた胡桃も俺の存在に気付いたのか、こちらに元気な笑顔を向けてきた。


「おはよう! ごめん、待った?」


「いや、ついさっきだ」


 まるでデートの待ち合わせをしている恋人の様な会話をして、俺達はマンションを出た。


「いやー、入学式、楽しみだね! まあ私は中学の時から居たから、あんまり入学式っぽく無いけど、今年は真白くんが居るから、楽しみ! 同じクラスになるといいね! 真白くんもそう思うでしょ?」


「ああ、そうだな」


 苦笑しながらそう答える。


 胡桃は結構お喋りなのだ。

 まあ、胡桃と一緒に居るのは退屈では無いし、他の有象無象よりは信じられる相手ではある。それでも、油断は出来ないが。


「そういえば真白くんってさ、結構変わったよね? 中学校に入ったばっかりの時は髪切ってたし、顔ももっと格好良かったし――って、あ、今が格好良くない訳じゃないよっ!? 今も今で格好良いけど、なんかちょっと丸くなったというか……。うん、今の真白くんも良いと思うよ?」


「……ははっ、ありがとな」


 わたわたと手を振って、失言を誤魔化そうとする胡桃に、思わず笑みが漏れる。

 本心が少し零れ出ただけで、そう取り乱す事も無いだろうに。俺が格好良くない事は事実だ。


 髪を切ったって良いとは思うが、なんだかそれだと視野が広くて、周りの視線に敏感になってしまって落ち着かない。

 顔が丸くなったのに関しては――恐らくストレスだろう。食生活に関してはずっと健康的な内容だし、暇な時には少しだが筋トレもしている。体重も、平均より少し低いぐらいだ。


「まあ……美少女の胡桃と隣に居たら、どんなに格好良い奴でも霞むだろうさ」


 ポツリと呟いたその言葉は、俺の本心だった。


 きっと今日も、惰性で幼馴染の俺と通学しているだけで、本来であれば女友達か、あるいはもっと格好良い男と歩いている筈だ。


 そんなネガティブな思考から漏れた言葉だったが、胡桃は変な風に受け取った様で。


「え、そ、そうかなぁ!? えへへ、嬉しいなぁ、美少女……。でもでも、真白くん、いきなりは卑怯だと思うんだっ! 私にも心の準備というのがあるんだよっ! まあでも、ありがとう? って言っておこうかな?」


 顔を赤くしているのを悟られない為にか、胡桃は顔の前に手を置いて、早口で言葉を紡いだ。


 なんだ、褒められ慣れていないのか? でもなければ、俺みたいな奴に褒められた所で、そこまで嬉しくないだろうに。


 そんな会話をしている間に、高校に辿り着いた。俺達の住んでいるマンションから徒歩圏内、しかもかなり近いので、意外とあっさりと到着するのだ。


 『私立椎井高等学校入学式』と書かれた立て看板を見て、俺は少しだけ憂鬱な気持ちになった。


 どうか、中学時代の知り合いが居ませんように――。

 どうか、平穏な生活が送れますように――。


 俺は心の中で祈りながら、高校の門をくぐった。

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