第11話 ほら、あーん
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半ば流れで胡桃の提案に乗せられた後、俺は自室で後悔していた。
「……なんで頷いちゃったかなぁ、俺」
ていうか、付き合うって何すればいいんだ。これまで恋人ゼロだったから分からんぞ。
まあ、取り敢えず、昼飯まで適当にゲームでもして時間潰すか。
『胡桃)ねーねー、お昼ごはんたべいこー』
『真白)いいぞ』
昼前に胡桃から送られてきたメッセージに返信し、制服から適当な服に着替える。
……てかなんか、早退したのに外食するとか、何とも言えない背徳感があるな……。
スマホと財布を掴み、ポケットに突っ込んで家を出る。
胡桃は廊下で佇んで、俺の事を待っていた。
「すまん、待たせたか?」
「ううん、全然! よし、行こう!」
胡桃は元気良く俺の手を握り、歩き始めた。
しかも、当然の様に恋人繋ぎである。
「な、なあ……」
「んー? なーに?」
「これ……どうなんだ?」
これ、とは恋人繋ぎの事だ。
こんな手の繋ぎ方をするのは初めてなので、俺は少しドキドキしてしまっている。
「え、ごめん、私手汗ひどい?」
「いや、そんな事は無いんだが……ドキドキするというか」
「ふふ、そう? じゃあ……えいっ」
俺の心情を聞いた胡桃は、可愛らしい掛け声とともに、恋人繋ぎを解いて俺の腕に抱き着いてきた。
「うぇっ!?」
思わず変な声が出た。
コイツ……話を聞いていたのか!? こっちの方が、さっきよりもドキドキするに決まってるだろ!?
そう思いながら胡桃を見ると――満足気な笑顔を浮かべていた。
「……はぁ」
「どうかした?」
「っ……いや、なんでもない」
不覚にも、腕に抱き着きながら上目遣いで尋ねてくる胡桃に、少しだけドキッとしてしまった。
前に学校でも同じ事をされたのに、今はそれ以上に心臓がうるさいのは、一体何故なのだろうか。
移動中の視線が、凄く痛かった。
視線を感じながらファミレスに入る。
……席に案内してくれる店員さんの視線が、とても痛い。「イチャつくな」って思ってそう。
胡桃はそんな事を意に介さず、案内された席に座る。
「……なあ」
「なーに?」
「普通、向かいじゃないのか」
胡桃は俺の対面では無く、わざわざ俺の横に座った。なので、対面が空く形になる。
「えー? いいじゃん、恋人なんだから」
「……まあいいか」
もう諦める事にした。
注文中もずっと俺の腕に抱き着いているので、本当に周りからの視線が痛い。
俺はハンバーグ、胡桃はパスタと食後のパフェを注文した。
それぞれの品が届くと、流石の胡桃も俺から離れてくれた。
「いっただっきまーす!」「……いただきます」
同時に手を合わせて、食事に手を付ける。
……そういえば、晴翔には悪い事したかもな。明日会ったら、謝ろう。
そんな事を考えながら、ハンバーグを減らしていく。
「ねねー、ハンバーグ一口ちょうだい?」
胡桃が突然そんな事を言い出した。
サイズまあまあ小さいけど……まあいいか。
「ほれ」
ハンバーグの皿を手に取って胡桃の方に寄せると、何故かむくれた顔をされた。
「……なんだよ」
「私達、恋人だよね?」
「あ、ああ、そう……だな……」
胡桃のジト目での問いに、狼狽えながら答える。
すると胡桃は、俺の持っているフォークを指差し、次に自分の口を指差した。
「…………」
言いたい事は分かった。しかし、実行するのは少々ハードルが高いのだが……。
胡桃は親が餌を口に入れるのを待つ雛鳥の様に、こちらに口を突き出してきた。
……ええい、ままよ。
ハンバーグを一口サイズに切り、フォークでそれを刺す。
そして、「あーん」と言いながら口を開いている胡桃の口に、ハンバーグを突っ込む。
「んー、美味しい! いつもの五倍は美味しいね!」
「……変わらんだろ」
「いいや、変わるよっ! 真白くんからの愛を感じる!」
……真顔でそんな事を宣えるコイツが凄い。
気恥ずかしさを押し殺す様に、残ったハンバーグを機械的に口に詰め込んでいく。
俺のハンバーグと胡桃のパスタが無くなった頃に、丁度パフェが運ばれてきた。
……最近甘い物あんまり食ってなかったけど、美味そうだな。
そんな事を思いながらパフェを眺めていたせいか、胡桃がスプーンをこちらに突き出してきた。
「はい、さっきのお返し」
「い、いや、いいから……」
「ほら、あーん」
首を振りながら拒否する俺の口に、半ば強引にパフェを突っ込んでくる。
久々に食べた甘味は、想像以上に甘かった。
「……甘い」
「あれ? 真白くんって、甘い物苦手だっけ?」
「いや。むしろ好きだ」
「じゃあなんでそんな不服そうなの……」
「……お前のせいだよ」
顔を背けながら俺がそう言うと、胡桃は顎に手を当てて「ははーん」と言い出した。
そして、更にパフェをスプーンですくい、俺の口に入れようとしてくる。
「ほれほれー、食べたいんでしょ? うりうりー」
「い、要らんから! トイレ行ってくる!」
胡桃のスプーン攻撃を回避し、席を立ち上がる。
胡桃は「ちぇー」と不満そうにしときながらも、ちゃんと俺が通路に出れる様に隙間を作ってくれた。
「あとでまたあーんするからねー」
「要らんわ」
……まったく。
恋人になったからと言って、そんなハードル高い事をすぐ実行してきやがって。
俺は心の中で溜め息とともに愚痴を吐きながら、トイレに向かった。
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