希のクリスマス
12月24日クリスマス。
いつもなら、女神希は大切なパートナーの神島蓮と楽しくクリスマスパーティーを楽しんでいる最中のだった。
しかし、今、希は寒い冬の中、公園のベンチに1人で座っていた。
表情は重く、酷く落ち込んでいた。
どうして、あんな酷い事を蓮君に言ってしまったのだろう、、、。
確かに神島蓮にも落ち度はあったかもしれない。
しかし、それでも希は蓮に言ってしまった事を酷く後悔していた。
キッカケは大した事ではなかったと思う。
蓮君が自分をあそこまで大切にしてくれているのはとても嬉しい。
しかし、だからと言って、「希には戦わないでほしい。」と、言われれば、自分は役立たずなのか?と思ってしまう。
決して、蓮君がそう言う意味で言ったのではない。
少なくともそう思う。
しかし、自分が大切な蓮君に「こんな役立たずで、、、ごめんなさい!」と感情的に発言してしまった事に対して、希は罪悪感を覚えていた。
「どうして、、、あんな事を、、、。」
希は溜息を付いた。
そのまま家を飛び出してしまった希はこの先、どうすればいいのかと頭を悩ませていた。
改めて、希は今まで、蓮君がどれほど大切な存在だったかを思い出そうとしていた。
その時、希の耳に誰かの泣き声が聞こえた。
恐らく、子供の泣き声だ。
「こんな夜中に、、、?」
希は座っていたベンチから立ち上がり、辺りを見回した。
すると、5歳ぐらいだろうか?
1人の女の子が泣いているのを希は見かけた。
いてもたってもいられなくなった希はその泣いている女の子に声をかけた。
「今晩は。
どうしましたか?」
と、出来るだけ優しく話しかけた。
しかし、女の子は未だに泣いたままだった。
「、、、転んで怪我でもしちゃいました?」
すると、女の子は首を横に振った。
どうやら、違うらしい。
どうしようかと、希が迷っていると、その女の子が口を開いた。
「、、、鍵、、、。」
と、一言だけ発した。
「鍵、、、?
お家の鍵ですか?」
すると、女の子はまたもや、首を横に振った。
そして、
「、、、不思議な鍵なの、、、。」
「、、、不思議な、、、鍵、、、?」
この少し変わった女の子に希は少し困った顔を見せた。
だからと言い、放っておく訳にもいかない。
とりあえず、希はその女の子をベンチに座らせ、近くに設置されていた自動販売機で、暖かいココアを買い、女の子に渡した。
「さあ、これを飲んでください。
温まりますよ?」
そう言われた女の子はココアを受け取り、一口だけ飲んだ。
すると、
「、、、美味しい、、、。」
と、感想を述べた。
それを聞いた希は少し安心した。
しばらくして、段々と落ち着いてきたのか女の子は泣き止んだ。
更に
「ありがとう。
お姉ちゃん!」
と、お礼まで言えるようになった。
「どういたしまして。」
と、希は女の子に微笑んだ。
その後、女の子は、自分の名前はリンと名乗った。
「リンちゃんですね、私は希です。
宜しくお願いします。」
と、希も自己紹介をした。
「希お姉ちゃん!」
リンは嬉しそうに希の事をそう呼んだ。
やがて、完全に落ちついたリンは先程の不思議な鍵について話してくれた。
このリンと言う女の子が話す事はどうやら本当の事らしい。
その鍵と言うのは、リンが元の世界に帰る為に必要な鍵だと言う。
リンは元々、別の世界からこの世界にやってきたと言う。
本来なら、兄と一緒にきたのだが、ちょっとした事が原因で喧嘩になり1人になってしまったと言う。
更に、先程の鍵も無くしてしまい、どうしようも出来なくなってしまったと言う。
それを聞いた希はどうにか、リンちゃんを元の世界に戻してあげたいと思った。
「そうだったんですね。
それなら、私が一緒にその不思議な鍵を探します。」
「本当?」
はい。と、頷く希。
リンは嬉しそうに微笑んだ。
「でも、お兄ちゃんが、、、。」
それを聞いた希は
「大丈夫ですよ。
私も一緒に仲直りするの、お手伝いしますから。」
と言いつつ、希も蓮とどうにか仲直りしたいと心の中で強く思いはじめていた。
それを聞いたリンは
「ありがとう!」
と、お礼を述べた。
「さて、、、その鍵はどの辺で落としたか覚えていますか?」
と、希はリンに尋ねた。
しかし、リンは首を横に振った。
「覚えてないの、、、。
ごめんなさい、、、。」
と言ったが、
「でも、この世界に来る途中で落としたから、ここに来るまでの世界を辿っていけば、、、見つかると思う。」
すると、リンは両手を前に翳した。
すると、
不思議な丸いゲートのような扉が現れた。
「これは、、、?」
と、驚く希。
「私とお兄ちゃんはこのゲートを辿って、この世界に来たの。
このゲートから色々な世界に行けるんだけど、私とお兄ちゃんが居る元の世界には、さっき言った鍵が必要なの。
だから、鍵を見つけないと、、、。」
それを聞いた希は
「分かりました。
一緒に探しましょう!」
と、リンに微笑んだ。
「うん!」
嬉しそうに頷くリン。
そして、希とリンは手を繋ぎ、ゲートに足を踏み入れた。
「参ったなあ、、、。」
蓮は呟いた。
出て行ってしまった希を探しに外へ出たものの、どこに行ったか全く検討も付かないまま、蓮は希を探していた。
よりによって、本来なら希と楽しくクリスマスを楽しんでいたはずなのに、、、。
「どうして、あんな酷い事を、、、。」
希と同じく、蓮自身も自分が言ってしまった事に罪悪感を抱いていた。
いくら希に危険な目に合わせたくないとは言え、あそこまで言う必要は無かった、、、。
もし、希とまた会えたらちゃんと謝ろう。
そう心に決め、蓮は希を探し続けた。
希とリンが最初に辿り着いた世界は、謎の空間だった。
空間の色は色鮮やかなオレンジ色でとても暖かいイメージだった。
「ここは、、、?」
希が尋ねると、リンは
「ここは色々な人達のプラスのイメージや気持ちが集まっているの。」
「プラスの?」
うん。と頷くリン。
「人々の暖かいイメージ、夢とか希望とか優しさとか愛とか。
それらが集まっているの。
だから、ここはこんなにも暖かいオレンジ色なの。
それらをイメージしてるかのように。」
そう言われると、確かにここはとても暖かい。
この空間に居るだけで、気持ちが暖かくなってくる。
「私とお兄ちゃんも、よくこの空間で一緒に遊んだりしたの。
とても仲良くて、とっても楽しかった!」
「そうだったんですね。」
それを聞いた希は心の中でとあるイメージを思い出していた。
蓮と出会い、一緒にパートナーとして様々な事を乗り越えてきた。
希にとって、蓮は大切な存在であると言う事を希は改めて思い出した。
帰ってきたら、蓮君にちゃんと謝ろう。
希も蓮と同じく、そう心に決めた。
しかし、この空間にはリンが言っていた不思議な鍵は見当たらなかった。
「、、、ここにはないみたい、、、。」
落ち込むリン。
「もしかしたら、別の空間なのでは?」と希が言うと、
「それじゃ、次の空間を出すね。」
そう言い、リンは再び両手を前に翳し新たなゲートを出現させた。
2人はそのゲートに足を踏み入れた。
次の空間は、先程の暖かいイメージの空間とは違い、黒く、そして暗いどちらかと言えば、マイナスなイメージを連想させる空間だった。
この空間にいるだけで、不安や恐怖を感じさせるような空間だった。
「ここは、、、人々のマイナスのイメージ。
不安、恐怖、恨み、絶望とかそう言うのが集まった空間なの。」
更にリンは
「さっきはお兄ちゃんとよく一緒に遊んだって言ったけど、時には喧嘩もしちゃったりして、、、。
お兄ちゃんに酷い事も言ったりしちゃったの、、、、。
」
目に涙を浮かべながら、リンは言った。
そんな落ち込んでいるリンの頭を希は優しく撫でてあげたい。
「私も大切な人と喧嘩をしてしまいました。
でも、だからこそ、その人がどれほど大切な人か、改めて知る事も出来ますよ?」
更に
「私も一緒についててあげます。
だから、お兄さんに会えたらちゃんと、謝りましょう。
私も大切な人にきちんと謝ります。」
そう言うと、リンは嬉しそうに頷いた。
しかし、ここにも鍵は無かった。
2人はめげずに次の空間へと足を踏み入れた。
次に来た空間は、目が眩しくなる程の光をもたらすとても明るい空間だった。
そして、2人の目の前には、、、
「あった!!」
リンはそう叫び、その空間に落ちていた鍵を拾った。
「あったよ!
希お姉ちゃん!!」
と、嬉しそうに鍵を見せた。
「良かったですね!」
希も嬉しそうに微笑んだ。
その時、
「リン?」
と、ある男の子の声がした。
辺りを見渡すと、そこには
「お兄ちゃん!」
と、リンの言っていたお兄ちゃんがそこには居た。
「リン!」
「お兄ちゃん!」
2人は互いに抱き合った。
「良かった、、、!
無事で!」
「うん!」
そして、リンは
「ごめんなさい!!
お兄ちゃんに、、、酷い事言って、、、!」
と、涙をこぼした。
すると、リンのお兄ちゃんは
「いいんだよ、俺の方こそ、ごめん、、、!
ひとりぼっちにさせて、、、!」
そして、互いに仲直りをした。
「リンが色々とお世話になりました。」
と、お兄ちゃんが希に頭を下げた。
それを聞いた希は
「いいえ。
良かったです。
無事に仲直りも出来て、鍵も見つかって。」
「うん!
ありがとう、
希お姉ちゃん!!」
と、リンは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「これで元の世界に帰れるな。
リン、そろそろ行こう。」
と、お兄ちゃんが言うと
[うん、、、。」
と、寂しげな声で頷いた。
「リンちゃん?」
と、希がどうしたのかと聞くと
「、、、せっかく仲良くなれたのに、、、お別れなんだね、、、。」
と、希を見つめた。
それを聞いたお兄ちゃんも、どうしたらいいのか分からず俯くだけだった。
すると、希は
「リンちゃん。
確かにお別れですけど、リンちゃんの事は絶対に忘れません。
私はリンちゃんに出会えてとても嬉しかったですよ?だから、そんな顔をしないでください。」
と、頭を撫でた。
そして、
「それに、リンちゃんのおかげで私も大切な人との事を思い出せました。
私も元の世界に帰ったら、仲直りします。」
それを聞いたリンは頷いた。
「元の世界でも、お兄ちゃんと仲良くするんですよ?」
「うん!」
すると、リンは先程のゲートを召喚させるかのように、両手を前に出した。
見ると、2つの神秘的な光を放つ小さな球状の物を召喚させた。
「ありがとう!
希お姉ちゃん!!
これは、私からのお礼!」
と、その球状の物を希に渡した。
希はそれを受け取るとその球状の物は細長い形の綺麗な光を放つカプセルに姿を変えた。
「これは?」
「私からのお礼だよ!
いつか必要になる時がきっと、来るから!」
すると、リンのお兄ちゃんも
「受け取ってあげて下さい。
リンが言うならいずれそのカプセルが役に立つ時が来ます。」
少し驚いたものの、それを聞いた希は、頷いた。
「ありがとうございます。
大切にしますね。」
そして、リンはお兄ちゃんと手を繋ぎ、2人は元の世界へと帰って行った。
手を振る希。
すると、目の前が真っ白になり、気がつくと希は元いた公園にいた。
あれは夢だったのだろうか、、、?
違うと、希は強く思った。
リンちゃんのおかげで大切な事を思い出せたのだ。
そして、希は自分がやるべき事を思い出し、家に帰ろうとしたその時、
「希!!」
と、声が聞こえた。
声のした方を見ると、
「蓮君?」
と、蓮が息を切らしながら立っていた。
恐らく、ずーっと探し回ってくれていたのだろう。
「良かった、、、!」
と、希の方へ歩み寄る蓮。
すると、希は
「蓮君!!」
と、蓮に抱きついた。
「希!?」
「良かったです、、、!
また会えて、、、!!」
と、涙をこぼした。
「そんな事が、、、?」
はい。と希は先程までの出来事を蓮に話した。
「そっか。
でも、無事に仲直り出来て良かったね。」
と、希は頭を下げた。
「ごめんなさい!」
「え?」
と、思わず驚く蓮。
「蓮君が本心であんな事言った訳じゃないのに、、、私、、、あんな酷い事を、、、。」
「希、、、。」
「元の世界に帰ったら、ちゃんと蓮君に謝りたいと思っていたんです。
だから、こうして謝りたくて、、、!」
すると、蓮は
「ううん。
俺の方こそ、ごめん!」
と、蓮も頭を下げた。
「俺もつい、希を危険な目に合わせたくないからと言ってあんな酷い事、、、。
本当にごめん!」
「蓮君、、、。」
こうして2人は、無事に仲直りする事が出来た。
その後、家に帰宅した2人は改めて、クリスマスパーティーをする事にした。
すると、蓮がある事を思い出し、側に置いてあった紙袋からある物を取り出した。
「そう言えばさっき、会長が家に来たんだ。
良かったら2人で使ってくれって、渡されたんだけど、、、。」
と、その取り出した物を見た2人は一気に気まずくなった。
会長から渡された物、それは、サンタのコスプレ衣装だった。
しかも、袋のタグには女性がそのコスプレ衣装を着た見本が載っていた。
いわゆる、セクシー系のコスプレ衣装なのだろう。
胸元が少し見えており、更にスカートになっていて、男なら足元に視線がいってしまうだろう。
「、、、。」
この時ほど、蓮は会長に対して怒りを覚えた事は無かった。
一体、会長は何をさせたいんだ、、、。
「えーと、、、。」
蓮がどう説明すればいいのか、混乱していると
「せっかくですから、私、着てみますね。」
と、意外な言葉が帰ってきた。
「え!?」
いきなりの発言に蓮は驚きを隠さなかった。
「いや、、、でも、、、。」
何故か、顔を赤面させる蓮。
しかし、希は
「実はこう言う可愛い衣装に、興味があって、、、。
少し、、、恥ずかしいですけど、、、。」
と、希も少しだけ顔を赤面させた。
「そ、そうなんだ、、、。」
と、言う事で希はそのサンタのコスプレ衣装に着替えた。
後ろを向いている間も、蓮は何故か心臓の音が早くなっていた。
そして、
「あの、着替え終わりました。」
と、声がした。
恐る恐る、振り返ると、、、
「!!」
蓮の目の前には、その名の通り、サンタ姿の希が立っていた。
蓮は目のやり場に混乱していた。
胸元や、足に思わず視線がいってしまう。
「ど、どうでしょうか、、、?」
「えーと、、、その、、、」
サンタ姿の希はこれ以上無いくらいの可愛さを出していた。
どう感想を言えばいいのか分からなかったが、思い切って蓮は
「、、、可愛い、、、よ、、、。」
と、本心を伝えた。
その言葉を聞いた希は嬉しそうに蓮に微笑んだ。
蓮は先程までの会長への怒りはどこへいったのやら、今では会長に感謝していた。
「それじゃ、メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
と、その後2人は乾杯をした。
お互い仲直りをした蓮と希はさっきまでの喧嘩は、嘘のように楽しくパーティを楽しんでいた。
すると、その途中で希はある事を思い出した。
「実は、リンちゃんと別れる際にこんな物を頂いたのですが。」
と、先程リンから貰ったあの細長い形の綺麗な光を放つカプセルを蓮に渡した。
「これは?」
「詳しい事は分からないのですが、、、いつか必ず役に立つ日が来ると言っていました。」
「いつか役に立つ日が、、、。」
すると、その細長いカプセルは2つに分裂した。
「!!」
驚く2人。
その2つに分裂したカプセルは、赤と白の輝きを放っていた。
それは蓮と希の色を表すかのようだった。
「そのリンちゃんが言っていたなら、大切に持っておこう。」
はい。と、希も頷く。
そして、楽しいクリスマスパーティーを終えた2人は片付けに入った。
「楽しかったね、クリスマスパーティー。」
「はい!」
お互いに笑い合う。
すると、蓮は
「あのさ、希。」
名前を呼ばれ、希は蓮の方を見た。
「さっき、希と喧嘩しちゃって希が居なくなった時、、、凄い不安になって、、、。
それで、改めて希が俺にとってどれ程大切な人か分かったんだ。」
「蓮君、、、。」
そして、蓮は希の目を真剣に見つめた。
「だからこれからは、お互いにどんな事でも協力し合って、希と大切な日々を過ごしていきたいんだ。
こんな俺だけど、、、これからも改めて、宜しくお願いします。」
と、蓮は希に頭を下げた。
「、、、。」
それを聞いた希は、蓮君。と、声をかけた。
「え?」
と、蓮が頭を上げたその瞬間、希は蓮をギュッと抱きしめた。
「希、、、。」
「私も、、、蓮君がどれ程大切なパートナーか、、、改めて知る事が出来ました。
私も家を飛び出して1人になった時、とても不安でした、、、。
だから、こうして蓮君が側に居てくれるだけで私はとても嬉しいです、、、!」
更に希は
「私も、、、こんな私ですけど蓮君と共にこれからの日々を過ごしていきたいです。
だから、こんな私ですがこれからも宜しくお願いします。」
と、蓮に言った。
それを聞いた蓮は笑顔で頷いた。
そして、2人は口付けを交わした。




