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第23話「一番だべさ」

 その日は広島でもう一泊して、翌日。

 九州新幹線に乗って今度は熊本へと向かった。


「そういや、そっちにトンネルってあるの?」

 ここまで何度も潜っておいて今更だけど。

「え、あるべさ。魔法で山をくり抜いて道作るべ」

「やっぱそうなんだ。じゃあ海の底には無い?」

「それは海の民が怒るからやらねえべさ」

「なにそれ?」

「海の生き物達だべ。海に住む人魚、魔物や精霊、魚達もそうだべ」

「待て、精霊や人魚はともかく魔物もいるのか?」

「そりゃいるべさ。陸の魔物と違って人間達を守ってくれるべ。けんど海を汚したら怒るべさ」

 ……いっそこっちにもいたら、いや大戦争になりそうだな。


「っと、こっちには浅い海の底にトンネルあるんだよ。もうじきそこを通るよ」


 調べたら完成当時は日本最長の鉄道トンネルで、今は七位。

 一位の青函トンネルは2016年にできたスイスのゴッタルドベーストンネルに抜かれるまで世界最長でもあった。

 大正時代から構想があったらしいし、なんつーか凄いわ。


 それを話しているうちに新幹線はトンネルに入った。


「これがだべか。海の底が見えるのかと思ったべ」

「流石にそれは無理だよ」

 俺が生きている間に……ないかもな。



 そして新幹線は博多を過ぎた。

 途中で買っておいた駅弁を食べながら景色を見ていて、しばらくすると熊本駅に着いた。

 目的地はまだもう少し先で、ここで乗り換えだが、


「俺も実際に見たの初めてだけど、でけえ」

 改札を出ると、そこにでっかいあの熊がいた。


「すっげえべさ。あ、この熊ってここの守り神様だべか?」

 キクコちゃんが熊を指して聞いてきた。

「いや、ゆるキャラって言ってね。えっと地域興しのキャラクターで」

 俺が知ってる限りで説明すると、


「へえ、あたすんとこのおとぎ話にも似たような熊の話あるべ」

「え、それってどんなの話?」

「寂れた村の村長さんが村の前で弱っていた熊を介抱してやったら、温泉掘り当てたり芸をして通りかかった旅人達を楽しませたりとかしたんだべ。それが噂になって人が集まりだして、村はたいそう栄えたって話だべさ」

「そりゃすげえ恩返しだね。まあそれはともかく今日はこの辺で一泊するよ。フォロワーさんと会う約束してたから」


「あ、出発前に話してた人だべな、この辺りの人だべか?」

「違うんだけどね、今は長期出張で熊本に来てるんだって」

「そうだべか。その人、なんか知ってたらいいんだけんどなあ」

「うん。さ、約束の時間まで間があるから、ちょっと見物して行こうか」

「んだ」


 俺達は少し歩き、路面電車の駅に行った。

 それに乗って十分ちょっとの駅で降りて、そこから少し歩いて着いた場所は。


「ひゃあ、あれってお城だべか? けんどなんか修理してるっぽいべ」

 そこは熊本城だった。

「うん、何年か前に地震があってあちこち壊れたんだよ」

 テレビやネットで見たけど、実際に見るとまた違うな……。


「そうだったべか。そんでいつ直るんだべ?」

「全部だとあと三十年以上後だよ」

 そういえば父さん、亡くなる少し前にテレビで熊本城の特集かなんか見ていて「完全復旧は生きている間に見れないな」なんて言ってたな。

 ほんとにそうなるなよ。


「こっちでもそんなにべか。あたすんとこでもたぶんおんなじくらいだべ」

 キクコちゃんが城を見ながら言った。

「え、そうなの? やっぱ魔法で?」

「流石に全部は無理だべさ、高い足場作ったり重たいもん運ぶくらいで、あとは職人さんがだべ」

「なるほど、それだけでも違うと思うよ」

 ほんとそれがこっちでもできたら……。


「あんら、あの人達って戦にでも行くだが?」

「え?」

 見ると武将姿の人達が歩いていた。


「いやあの人達はね、昔の人の恰好してイベントする人達だよ」

「あ、そうだったべか。しっかすあの鎧兜もお城もあたすんとこの大昔のにそっくりだべさ」

「……ほんと共通点多いね、キクコちゃんとこと日本って」



 熊本城を見終わった後、新幹線の駅まで戻ってその近くにあるホテルにチェックインし、一休みしたらちょうどいい時間になったので待ち合わせ場所である駅前に向かった。


「あ、DM来てた。えと、白いバンダナ巻いて待ってます?」

 なんだそりゃ?

「バンダナって頭や腕に巻くあれだが?」

「そっちにもあるんだね、そうだよ」

「じゃあ、あの人だべか?」

 キクコちゃんが指した方を見ると、たしかに頭に白いバンダナ巻いてサングラスかけていて黒いコートを羽織った、歳は俺と同じくらいかなって男性がいた。


「たぶんそうだよ、あんな人はそうそういないだろうし」

 てか、あんな怪しい人って普段なら遠巻きに見るだけだ……。


 そう思いながら声をかけた。

「あの、すみません。もしかして『わんどりーむ』さんですか?」

「え、ああそうですが、ダンさん?」

 その人が俺を見て答えてくれた。当たっててよかった。


「はい。あの、はじめまして」

「ええはじめまして。ちょうどここに仕事に来ていたので、会えてよかったですよ」

 そう言ってバンダナを取り、サングラスを外した。

 

 ……なにこのイケメン?


「ひゃ……」

 キクコちゃん、顔真っ赤にしてる。

 やっぱこの子もイケメンがいいんだな。

 いいもんどうせ俺は普通だよ。


「ほっ、分かりやすいようにしていてよかったよ。僕、普通にしてると全然目立たないんだよね」

 どこがじゃあ!

 ほら、通りかかった人が男女問わずチラ見してるだろがあ!


 と言いたいのを堪えた。


「さてと、ここじゃなんだから……晩御飯は宿泊先で?」

 わんどりーむさんが聞いてきた。

「え、いやまだ決めてませんが?」

「じゃあさ、おすすめの馬刺し専門店あるんだけど、二人共馬肉は大丈夫?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「よかった。じゃあそこで話そうか」


 大丈夫というか食べたことが無いから正直楽しみだ。

 あ、キクコちゃんはどうなんた?

 と思って聞こうとしたら、

 

「えどあど、わんどりーむさん、ひどりもんだべが?」

 なんかいつも以上に訛り?ながら尋ねやがった。


「ううん、奥さんいるよ。ネット上ではぼやかしてるけどね」

「そうだべが……」 

 なんかガッカリしてるぞ、おい。

 チッ、なんだよ、俺に貰ってくれとか言いながら結局、


「残念だべ、伊代さんの友達がまだ独身だって聞いたから、紹介したかったべさ」

 キクコちゃんがそう言った……って、

「あれ、そうなの?」

「んだ。あれ、もすかしてあたすがだと思ったべか?」

 キクコちゃんが俺の顔じっと見ながら言う。

「え、いやその」

「あたすは隼人さんが一番だべさ」

「いやだからあのね」


「ねえ、それは二人っきりの時にしてくれない?」

 わんどりーむさんは笑みを浮かべていたが、目が笑ってなくて額に青筋が見えた。


 すみませんごめんなさい。

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