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第1話「着いたべさ」



 それは秋も深まり、冬の足音が近づいて来た頃だった。


 薄暗くなった住宅街に灯りがあちこち見える。

 俺はそれらをぼんやりと眺め、大きなキャリーカートを引きながら自宅へと歩いていた。


 今日はたくさん買い物した。

 昨日新聞の折込チラシを見ていたら少し遠くのショッピングセンターで大バーゲンセールをやるとあって、行ってみたらホントにこの値段でいいのかと思うくらい安売りしていた。

 おかげで食材や生活雑貨がたくさん買えて、しばらくは買わずに暮らせるな。


 今はお金に困ってないけど、やっぱりこういうのは助かるよな。

 そう思っているうちに自宅の前に着いた……のだが。


 父さんが残してくれた一軒家。

 俺はここで一人で暮らしている。

 だから他に誰かいるはずがない。


 なのに家の灯りが点いている?

 人の声が聞こえる?


 まさか、いやこんなうるさい空き巣がいるか?

 テレビ消し忘れてたか?

 とにかく入って確かめようと戸に手をかけた。


 鍵はかかったままだ。

 俺はポケットから鍵を取り出し、それを差して戸を開けた。


 すると……。



「着いたべさー!」


 背は低めで金髪を三つ編みにしていて、蒼い目がぱっちりで頬にはそばかすがある、なんか昔のセーラー服っぽい服を着ている女の子がぴょんぴょん飛び跳ねキャーキャークルクル回っていた。


 何言ってるのか分からないだろう。

 俺も分からない。

 だが実際に目の前で起こっているのだからしょうがない。


「成功したべさー! やったべさー!」


 なんか訛ってる。

 外国人じゃねえのか?

 ってそれは置いといて、


「おい、あんた誰だよ!」

 俺はその子に話しかけるが、ずっとはしゃいでいて全く聞いちゃいねえ。

 てか、白いぱんつ見えてるから飛ぶな回るな。


「ねえ、聞こえてる!?」

 俺は思いっきり声を上げた。

 するとその子は気がついたのかこっちを見た。


「あ、ごめんなさいだべ。あたすったら興奮して舞い上がっちまっで」

「それはいいから、あんた誰?」

「あたすはキクコってもんだす」

 彼女は深々とお辞儀した。


 キクコって、名前は日本人そのものだな。

 日系人なのかな? って。


「キクコちゃんでいいかな? どっから入ってきたの?」

 どこかの窓でも開いてたのか?

 いやそれでも入ってくるなだが。

 そう思っていると、


「勇者様、力を貸してけろ!」

 キクコちゃんが俺の手を取ってそう言った。

 うわ柔らかって、いかんいかん。


「あのさ、勇者様って何?」

 手をそうっと離して聞いたら、

「勇者様っつったら勇者様だべさ」

 目をキラキラさせて俺を見つめてきた。


 何これ可愛いって、いかんいかん。

「あのさ。訳が分からないからちゃんと説明して。まずどうやって家に入ったの?」

「あ、ごめんなさいだべ。着いた先がここだっだんだもんで」


「は? えっと、着いた先?」


「んだ。あたすはこことは違う世界から来たんだべさ」

 キクコちゃんは笑みを浮かべて言った。




 ……何言ってるの、この子?

別サイトで連載していたもので、そちらは完結しています。


戦後八十年だからというのもあって出したものです。

よろしければお付き合いいただければです。

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