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Whisper  作者: 桂 恭介
3/8

目覚め

「なんだ……これは……」

中にいるモノの口からは泡が出ていた。

「生きているのか……」

すぐさま助けようと周りを見渡した。

しかし、見たこともないような機会でどうすることもできない。

ドゴォン!

「てめぇ……見たからには死んでもらう」

扉は蹴破られ、男が入ってきた。

男だけではない。

後ろから4人ほど部下だと思われる男がついてきた。

言うまでもなく、手に銃を持って。

「まだ打つな」

男は後ろの男達にそう呟いた。

弾が後ろのこれ(・・)に当ったらまずいのだろう。

「これが何なのかは知らない。しかしこれが壊されたらまずいようだな」

俺は持っていたボールペンで軽く叩いた。

男は物凄い形相で睨み付けてくる。

「お前、自分がどんな状況にあるかわかっているのか?……取り押さえろ」

後ろの男達が動いた瞬間……

パリンッ!

俺はボールペンを突き刺した。

液が溢れ出す。

「てめぇよくも……打て!」

パリンッ!パリンッ!

身を屈め、机を盾にして女を確かめた。

「おい!大丈夫か!」

反応はない。

「おい!」

呼びかけるが、ピクリともしない。

「観念しろ。運が悪かったな……学生さん」

男達に回りを囲まれた。

銃口が四方八方から向けられる。

俺は死ぬのか……?

俺はこんなくだらないことに首を突っ込んで死ぬのか?

生きているかも死んでいるかも分からない、知らない女に、好奇心をそそられて挙句の果てに死ぬのか?

こんなところで死んだら……

こんなところで死ねない!

何か、何か手は……

――!

女が目覚めた。

同時にすごい速さで俺に口付けをした。

「――なっ!?」



(こんなところで死にたくないのだろう?)

脳に直接語りかけるように言葉が連なった。

(やり遂げなければいけないことがあるのだろう?)

……そうだ。

俺にはやらなければいけないことが……

(じゃあ契約しろ)

男達はどうなった?

あたりは白一色になっていた。

(私はアリス。どの道契約しなければお前は死ぬ)

わかった……契約しよう。

(ふふ。気に入った)



……俺は立ち上がった。

「何だ、最期にキスできて思い残すことはねぇってか」

男どもは腹を抱えて笑っている。

俺は冷静だった。

「何を立ち尽くしてるんだ?怖くて声もでねぇのか。最期に何か言わせてやろうと思ったんだがな」

「では遠慮なく言わせてもらおう」

男達は笑うのをやめ、訝しげな表情をしている。

「……何?」

「主が命じる。この場から立ち去れっ――!!」

あたりは静まり返った。

「……あぁ。わかった」

自分で自分のしたことに呆気に取られていた。

その場に俺と女しかいないことに気がついたのは数分後だった。

「おい!怪我はないか!?」

「おいではない。アリスと呼べ」

アリスは近くにかけてあった白衣に着替えているところだった。

「アリス……あの男達はどうなった?なぜ俺は生きている?」

聞くと、アリスは鼻で笑った。

「お前が立ち去れと言ったんじゃないか」

「それはそうだが、なぜ言うことを聞いた?契約とは何だ?お前はなぜこんなところにいる?」

俺はわけが分からないまま、パニックになっていた。

「はぁ…慌しいやつだな」

嫌そうに、気だるそうに一つ一つ口を開いた。

「お前に与えたのはウィス。絶対命令の力。お前がその気で話せば、聞いたやつはどんなことであっても言うことをきく」

「声か?」

「あぁ。その声を与え、契約を交わしたじゃないか。それとも自分の美声に触れられて怒ったか?」

声は聞く分には変わっていない。

鼻で笑う態度がイラつくが……そんなことはどうだっていい。

「契約とは何だ?何か対価がいるのか?」

「対価は後々教えよう。ウィスについて先に説明しておく。さっきも言ったと思うが、絶対命令の力、それがウィス。たとえ死ねと命令したとしても、聞いた相手はそれを実行する。ウィスでの有効範囲は自分を中心に半径500m程度。自分に対して複数でも個人でもかけることができる。有効時間は最大半年。補聴器等の機械を通す分には問題はないが、耳栓などで完全に音をシャットアウトされると効力を発揮できない。使うことによる代償はない。能力には劣化もなければ進化もない。後遺症も肉体的にはあまりない。ウィスの発動中の記憶はその対象となる相手に残らない。なお、ウィスをかけることができるものは動態的な生物にかぎる。この能りょ」

「まてまてまてまて!説明が早すぎる。そもそも突然非現実的なことを受け入れられるはずがないだろ」

「じゃあお前はなぜ生きている?使ったからだろう。力を」

確かにそうだ……

この力は認めざるを得ない。

だったら……

「お前は何者だ?教えろ、これは命令だ」

「私にウィスは聞かない」

「くそっ……」

まだ頭がパニックになっているが、とりあえず分かった。

俺はもう普通の人間ではないのだ。

「大丈夫だ。そんな顔をするんじゃない。私はお前の味方だ」

味方、か……

復讐には使えるかもな、この力……

むしろこれはチャンスなのかも知れない。

「私が何者かなんて、聞く必要なかろう」

「そうだな……」

「私はアリス、ただそれだけだ」

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