35/188
2学期のボクと、黒髪メイドと、あとひとり(13)
冴子さんは、翌日も、そのまた翌日も声をかけてきた。
他愛のないあいさつだけど、
いつもの日課となってきている。
そしていつものように、
数学の『高速詠唱』。
冴子さんは、壁に向かってひたすら唱えている。
修行僧のような佇まい。
なんだろう、これだけの美少女が、
修行僧のように、
努力の姿を周囲に見せつけているのは。
そして30分くらい『高速詠唱』すると、
学習室から音もなく退室する。
どうやら、生徒会室に行くということだ。
生徒会役員選挙にはまだ間があるのだが、
彼女が将来役員となるのは、
誰もが認めるところなのだろう。
少なくとも、対抗馬や反対勢力があるようには見えない。
そのくらい、
「圧倒的」なのだ。
ボクはというと、
なぜか学習室で、
そしてクラスで注目されはじめた。
なんでも、冴子さんは、(彼女は1組、ボクは2組なので知らなかったが)
普段は無口で、
他人から挨拶されたときだけ返すくらい、
今まで自分から誰かに声をかけるなんて、
めったに見られなかったことだということだ。
なんであんな冴えない子に
挨拶しているんだ、何者なんだ、ということらしい。
まあ、ちょっと誇らしい気もするが、
ごもっともな疑問だ。
ボクにもわからん。




