ローリングサンダーと、スペシャルな黒髪メイド(1)
翌日午前9時半、リコさんの黒の小型乗用車がボクの家の前に止まる。
今日は英語・数学以外の教材を書店で購入する日だ。
今日もリコさんはいつものメイド服だが、
車、運転する姿を見るのは初めてだ。
「いつもはどうやってウチに来てくれてるの?
車、どこに置いてるの?」
「車で来ることはない。
走ってくる。」
「走って?リコさん家からどのくらいかかるの?」
「履歴書でオレ………アタシの住所を見なかったのか?」
「(いやあ、それ以外のプロフィールに目がいってしまって、
「住所」を見なかった。)
まあ、見落としていたわ。後で見ておこうかな。」
「20分だ。」
「20分を走ってきたの?この暑い中?」
「問題ない。」(いやいや問題大いにありでしょう。第一健康に良くない。
途中で倒れたらどうすんの。)
「日傘で直射日光を遮断。
メイド服は通気性が高く軽量な特別製。
ジュラルミンケースの中に飲み物と頭痛薬を常備。
さらに首筋には冷えピタを装着。
備えは完璧だ。」(まあ、そうくると思っていたけど。
まだ慣れないけどね。)
話をしているうちにイオンに到着。
一目散に書籍売り場に向かう。
周囲の視線が痛い。
そりゃそうだわ。
長身黒髪ロングのメイドと
そのとなりにちんちくりんがいたんじゃ
いろんな意味で目立ちすぎ。
参考書コーナーでは、まず古文・漢文、それと歴史総合、地理総合を見る。
「1、2年のうちは、基礎を固めるだけでよい。
古文・漢文は、教科書をコピーして、
例のごとくルーズリーフに貼りつけ、
授業中に教師が指導した内容を書き込んでいけばよい。
ただ、古典文法や漢文句法が学校教材では分かりにくかったら
『古文上達 基礎編』(Z会出版)
『漢文早覚え速答法』(学研)
を使うとよい。これももちろん、コピーしてルーズリーフに貼る。」
「歴史総合、地理総合はそれぞれ、
『ひとつひとつわかりやすく。』(学研)だ。
歴史や地理は一問一答集を使う者が多いが、
基礎を固めるだけならこのくらいでもよい。
理想を言えば、全科目を完璧に準備できればよいが、
処理速度や理解力が宇宙人レベルか
あるいは睡眠時間を削ってもやり遂げる
超人的な我慢強さがなければ
挫折しやすくなる。
今は英語と数学に力を入れて、他は赤点回避できれば良いと
割り切るべきだ。
まだまだ高校生活は長い。」
なるほどねぇ。本当に用意周到だわ。
次は物理基礎と生物基礎だ。
「物理基礎や生物基礎も
『ひとつひとつ わかりやすく。』(学研)でよいのだが、
もっと手間をかけずに学習できる教材がある。
『らくらくマスター』(河合出版)
物理も結局、数学と言えば数学なのだから、
数学が苦手ならこれだけでは説明不足になりがちだが、
これまでの状況から、それほど苦手とは思えなかったので選んだ。
ただ、途中で挫折しそうなら、『ひとつひとつ わかりやすく。』に
変更するのもよい。
これももちろん、コピーからルーズリーフへの流れだ。」
「あとは念のため、これも買っておこう。」
リコさんはそう言って、手に取った。
『漢字 一問一答 完全版』(東進ブックス)
「あくまでも、ちょっとした『スキマ時間』でのチェック用だ。
これから先、漢字が読めないとか、
抽象的で難解な言葉の意味を知らないと、学習に支障がでてくる。
いちいち辞書を引くのも時間がかかって挫折しやすい。
そんな時に役に立つ。」
「これで必要な教材はそろった。
レジに持っていく前に、中をパラパラと見ておけ。
そのうち、どんな編集、レイアウトの教材が良いのか、
自力で見分けができるようになる。」
そう言って、リコさんは書店内の他のコーナーへと歩いていった。
なるほど、ちょっと見ただけではあるが、
かなり見やすい。パラッとしたものが多い。
物理と生物に関しては、
ダメだったら『ひとつひとつ わかりやすく。』にすればいいや。
さて、会計を済ませて、
リコさんを回収して帰ろうとしたら、
事件は起きた。




