み、右手が~と、スパルタメイド(3)
あれだけ痛かった右腕だったが、一晩寝たら痛みはすっかり消えていた。
これが『若さ』というものか。
と思う間もなく、今度は数学。
ちょっとペースを整えたいと思っていると
リコさんの方から話しかけてくる。
絶妙だね。
「オマエ………キミは『DUO』からでよかったが、
あの、何といったかな、デレスケの。」
「タケくん。」
「そう、あのデレスケの英語は、ここから始めた。」
そして久々の、あのジュラルミンケースから
2冊の本を取り出す。
『中学版 システム英単語』(駿台文庫)
『3分で英文法』(ベレ出版)
「まず、『中学シス単』の方は、4章に分かれているが、
最後の第4章はやらなくていい。
1章から3章まで、
この本を見ながら音声データをひたすら聴きまくる。
どうしても集中が続かないときは、
音声データを章ごとに分割すれば、1章7分前後で聴き終わる。
はじめは、単語の発音がわかればよい。
英語は、発音・意味・綴りの3点セットで覚えないといけないからな。
『3分で』の方は、見ての通り、
小さくてあまり知られていないが、隠れた名著だ。
見開きの紙面左ページに文法事項を
穴埋めしながら理解できるよう解説が書かれていて、
右ページには例文とその訳が、これも穴埋めしながら理解できるように
構成されている。
あのデレスケには前半の『中学編』をやらせて終わったが、
後半は『高校編』もある。
使い方は数学と同じ、コピーしてルーズリーフに貼りつけ、
かっこに正解を書き込めばいい。
右ページだけ穴埋めする。
左ページは解説だから、かっこがあっても別に穴埋めしなくてよい。
どうしても英文と訳が結びつかないときだけ
左ページも穴埋めして読め。
『DUO』より短時間で穴埋めできるはずだ。
1ページ6題前後、しかも同じページの下段に正解が書いてある。
考えず、ただ書き写せば後で使える。」
そこまで言うとリコさんは、
「数学の他に、これの『高校編』のページもコピーしておけ。」
と言った。
それから、ちょっとお茶の時間。
いつもはウーロン茶だけど、今日は母さん、奮発して、
アイスコーヒーを用意してくれた。
リコさん、ずけずけと
「次回は無糖で。」
と、注文をつけていた。
遠慮ないなぁ。
さらに続けて、
「明日、英語・数学以外の教材を実咲さんと一緒に買いに行きます。
予算は1万5千円です。実咲さんに持たせてください。」
すると母さんは、
「念のため聞きますが、なるべく学校配布の教材を利用できないかしら?」
と尋ねてきた。
ごもっともだ。教材費はなるべく抑えたい。
「学校配布の教材は、もともと教師による指導を前提に作られています。
自学自習で進めるには適していません。
正直に言えば、実咲さんの現在の実力どころか、
S高の生徒のほとんどにとっても使いこなせません。
宿題として出題されたところをやるだけで精一杯です。
『わからないところは教えればいい』という考え方だと、
学校の授業の進度に追いつくには時間が不足します。
非効率ということです。
もしご賛同いただけなければ、英語と数学のみの指導となりますが、
よろしいでしょうか。」
1万5千円の教材費でこれだけの『優良物件』を手放すかどうか、
母さんの決断ひとつだが、意外とあっさり、
「では、購入をお願いします。」と折れた。
「ありがとうございます。」
そして、ボクには必要な科目名をメモに書き出すよう命じて、
今日はお開きとなった。




