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干物地味女子高生の憂鬱

累計ページビユー、30000突破しました。

ありがとうございます。

 干物になるのも悪くない。


 夏休みの平日の午後、世の中の人たちの多くはこの酷暑の下、

死に物狂いで働いている。


 そんな日の午後、ボクは自分の部屋でエアコンをかけて、

ゴロゴロとまどろんでいる。


 大昔、昭和の時代、エアコンは大変な贅沢品だったらしい。

 でも、令和の今のボクにとっても大変な贅沢品にちがいない。


 ありがたや、オヤジよ、母さんよ。

 ボクが人の子の親になったら(親になれるのだろうか?)、

子供にこんな贅沢をさせてあげられるのかな?


 真夏にこんな贅沢させてもらえるなら、あとはどうでもいい。

 そのくらい、今時の夏の暑さは異常だ。

 そのうち、夏は誰も働いたり、勉強したりしなくなるかもな。

 こんな酷暑で働くなんて、健康に良くないことはやめましょう。

 1億総休暇令とか、労働禁止令みたいなものでも発表してもらえないかな。


 トロトロ、まどろんでいると、こんなもんでいいかと思えてくる。


 「みさきーっ、下りてきなさぁいっ。」

 母さんの金切り声が、階下で聞こえる。

 ウトウト寝ているときに、突拍子もなく、

この甲高い声を聞かされるのはドキッとさせられる。

 心臓に良くないわ、

 まったく。


 のろのろと、階段を下りる。


 「ちょっと、そこに座りなさい。」

 母さんに促されて、テーブルにつく。


 「もう、何、その恰好は。中学の体操着、まだ着ているの?」

 「いいじゃん、楽なんだから。」

 「女子高生だっていうのに楽ばっかりしててもう。

  お父さん、なにか実咲に言ってやってくださいよ。」


 オヤジはランニングシャツにハーフパンツだ。

 ひとのことを言えたもんじゃないのだが。

 オヤジはボクの服装に触れずに、別のことを言い出す。


 「きのう、お前の高校に行った。先生との二者面談だ。」

 「ふーん、そうだったよね。」

 「何をそんな、のんきにしている。

  先生に開口一番、言われたよ。

  『おとうさん、実咲さんにもっと勉強させてください。』

  『入学したときには、学年で2番だったのに、

   この1学期でズルズル下がって今ではクラスで下から数えて2番、

   いくらなんでも下がりすぎです。』

  『このままでは進級も危うくなります。いいですね、

   実咲さんに勉強させてください。』

  うちは子供に勉強しろとは言わない主義ですのでねぇと言ったら

  『何のんびりしているんですか。

   ぐずぐずしていたらすぐ大学受験ですよ、

   とにかく、頑張らせてください!』だとよ。

  俺がなんで実咲の成績のことで怒られなきゃならないんだ?」


 オヤジは怒っているというより、愚痴を言っている。

 「あーあ、俺と母さんとの間に生まれた娘なんだから、

  もうちょっと器量よしになると思って将来を楽しみにしていたのに、

  なんだかジャガイモみたいになっちまって、もう。」

 悪かったね、ジャガイモで。

 でも、今の服装を見たら、ボクら親子だぜ。

 製造元だって、大したことないのに、と思う。


 「とにかくジャガイモのお前は女であることを売りにできないんだから、

  勉強するしかないんだ。

  勉強せい!」

 無茶苦茶言っとるわ。

 『子供に勉強しろとは言わない主義』はどこに吹っ飛んじまったのか。

 

 ボクが通うS高は、県立の進学校だ。

 国公立や私立の有名大学の合格者を多数出している、昔からの進学校。

 大して勉強していなかったと思うのだが、なぜかボクは合格してしまった。

 しかも合格者の中で2番、新入生代表挨拶の役までさせられた。

 なんで2番の子にさせるかね。

 まあ、1番は1番で、

何か面倒なことでもさせられていたのかもね。

 知らんけど。

 オヤジも母さんも有頂天、

まあ少しは親孝行になったかなと、その時は感じていたんだ。


 転落は早かったわ。

 ボーッと生きてるうちに、テストのたびにあれよあれよの急降下。

 なにせ、勉強って何をどうしたらいいのか全然知らんもんね。

 中学までなら授業受けて、一夜漬けすりゃ何とかなったけど、

高校の授業のテンポは速すぎてついていけんわ。

 そりゃ、成績も悪くもなるというものだわ。


 オヤジの愚痴はまだまだ尽きないが、

 ここからが本番だ。

 母さんがここで口を開く。


 「そこでね、母さんも考えたのよ。

  アンタの勉強を見てもらう、家庭教師を頼むことにしたわ。」

 「ちょっと待って、勝手に話進めないでよ。

  第一、そんなお金、うちのどこにあるんよ?」

 「こんなこともあろうかと、ひそかに貯めといたのがあるんよ。

  そんなことよりお父さん、アンタの成績が上がらなきゃ、

  ずーっとあのまんま、ぐちぐち言い続けてるわよ。いいの?」


 どうやら、いつの間にか断崖絶壁に追い込まれているようだ。

 さっきまでのまどろみの時間がなんとも懐かしい。


 仕方ないか。母さんの話を聞いてやろうじゃないか。

 「近所のタケちゃんいるでしょ、あのデレスケ。」

 よそのウチの子捕まえて「デレスケ」はないと思うが、

 タケくんに関しては仕方がないな。

 小学生の頃からしょうもないイタズラやからかいで

 先生たちに怒られっぱなし。

 よくもまあ、あれだけひどいことを毎日毎日、やりまくれるものだわ。


 「そのタケが、中学卒業前の3か月くらい、学校を休んでいた時が

 あったでしょう?」

 ああ、あれは学校のみんなが「タケはとうとう警察に御用になったか?」

 なんて噂してたっけ。

 「あれは警察に捕まったんじゃなくてね、家に軟禁された上に、

 受験勉強させられてたんだって。

 タケのトーチャン、鬼のように怖いとか聞いていたからね。

 その時に雇われた家庭教師の先生が、凄腕らしくて。」


 母さんの話は続く。

 「なんでも筑波大学の体育学群の学生らしくて、

  柔道6段空手5段、

  趣味は週末に各地に出かけてのクマ退治ですって。

  ほら、

  近頃は猟銃を使ってクマ退治をするのに反対するクレーマーが

  多いじゃない?

  そこで素手でクマを倒してからオリに入れるんですって。

  そりゃ、あのデレスケのタケでも逆らえないでしょ。

  一度だけイライラして先生に飛び掛かったときもあったらしいけど、

  見事に組み伏せられたって。

  その後はあの子もしおらしくしていたみたい。

  そうしたら、K高にトップで入学できたっていうじゃない。

  しかもアンタと同じく新入生代表挨拶もしたんだって。

  別人みたいに真面目にしてたってよ。

  母さんも、アンタみたいな子は、

  先生にビシビシしごかれた方がいいと思って、

  ダメ元で先生を紹介してもらって家庭教師をお願いしたら、

  OKしてもらえたのよ。

  とにかく、もう決まったことだから。

  今日これから会ってもらうわよ。」

 とにかく一方的にまくし立てられた。

 いつものことだが、娘の意見は全く聞いてもらえない。

 

 まあいいか、毎週、クマを素手で倒すのが趣味とかいう男を

 見てみるというのも

 ひまつぶしにしては面白いじゃないか。


 母さんはそこまで言い終わると、ぶつぶつ言ってるオヤジを尻目に、

 お茶とスイーツを準備し始めた。

 おそらく、セブンのプリンを出すのだろう。

 母さんの大好物だからな。

 客人が遠慮して食べなければ、自分が食べるつもりのものを用意する。

 母さんの流儀だ。


 インターホンが鳴った。

 




 


 


 

意外に思われるかもしれませんが、

本作は『ゴブリンスレイヤー』に触発されて書きました。

あの登場人物たちの苦悩が報われてほしいと思ったとき思いついたのは、

全員を現代日本に転生させることでした。

ですから、私の夢は、

本作が『ゴブリンスレイヤー』のキャストでアニメ化されることです。

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