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喧嘩

3月11日の震災により、同日の別世界の「もう一人の自分」と入れ替わってしまった岸野真隼キシノマハヤ。もう一人の自分は、「外川中喧嘩部」と言う不良グループに所属していた。そこで真隼は、なぜか他校の不良グループと喧嘩することになってしまう。

 2011年3月14日。獄門高校前___________。

 この日は月曜日で、午前中だけ授業を受けて給食の時間に学校を抜け出した真隼と夏樹は、その足で獄門高校へと向かった。

 校門前にはすでに50人ほどの外川中の生徒が集まっていた。その中には外川中喧嘩部部長 蛇井光一と、副部長 斯波勝舞の姿もあった。夏樹が二人に話しかけた。

 「特攻隊隊長 岸野真隼、副隊長 橋本夏樹、到着しました!」

 …ん?今、夏樹は俺のことを”特攻隊隊長”って言わなかったか?いや言った。絶対言った。まさかそんな位置付けだったとは…。小2の頃からバスケのクラブチームに入っていて、6年ではチームリーダーも務めたこともあったが、不良たちのリーダーとなると訳が違う。不良なんて統率の執れない連中、どうやってまとめれば良いのだろうか。

 そう考えていると、蛇井がこちらに近づいてくる。蛇井を目の前にした真隼は改めて蛇井の顔を見る。男にしては妙に整った顔立ち。まるで女性のようで、目は人形のようにきれいだった。蛇井は、その人形のような目を瞬きさせると、真隼と夏樹に話す。

 「まず、お前ら特攻隊は全員で校内に向かえ。お前らが行った5分後に俺たちも向かう。」

 いや、最初から蛇井さんたちも行ってくれよ。という真隼の思考をかき消すように、「はいっ!」と元気よく返事した。…なんでそんなに乗り気なんだよ、コイツ。

 少し引き気味に夏樹を見ていた真隼に蛇井が話しかけてきた。

 「どうした?岸野。お前、いつもはすげぇやる気あんのに?」

 __しまった。この世界の俺は喧嘩好きの不良だったんだ。不自然に思われている…どうしよう…。と、考えていると、夏樹が慌てた様子で、「ああーすみません、コイツ授業中ずーっと寝ててぇ、寝起きなもんで上手く頭ぁ回ってないみたいでぇー。」と蛇井に弁明した。

 「そうか、もうすぐ始まるからちゃんと目ぇ覚ませよ、寝坊助ねぼすけ。」そう言うと、蛇井は戻っていった。

 真隼は夏樹に、「ありがとう…」と軽く感謝した。

 「良いって良いって、それよりこれから喧嘩が始まる。お前、喧嘩してた時のこと覚えてるか?」

 「え、いや喧嘩って…」真隼は言葉に詰まる。

 夏樹はため息をつくと、「いいか?今回の喧嘩、お前は叫びながら校内を進むだけで良い。痛いのが嫌なら、攻撃を必死でかわしながら進め。絶対に倒れるなよ。お前は”隊長”なんだ。お前がやられると、隊の士気が下がる。そうなっちゃ、後の奴らの士気も下がる。他の奴らに迷惑がかかる。わかったか?」

と、真隼に念を押す。

 真隼は震える手で握り拳をつくって思った。

 …もう、後には引けないのか。喧嘩、するしかないのか。

 

 真隼は開かれた校門を前にして、深呼吸をした。横には笑みを浮かべる夏樹。後ろには十人ほどの隊員が合図を待ちながら武者震いしている。

 「すッ!進めッ…進めぇぇぇぇーー!」真隼は叫ぶと同時に走り始めた。後ろからは隊員たちの叫び声がきこえる。

 校舎の中に入ると、真隼はすぐに異様な雰囲気を感じ取った。薄暗く、至る所に落書きがあり、荒れ果てていた。…これが、学校?まるでゲームのダンジョンみたいだ。

 1階をある程度回ったあと、真隼たちは2階へ向かった。2階も1階と同じ雰囲気だが、より一層不気味に感じる。廊下を進んで行くと、突然教室の扉が勢いよく開かれ、見るからにイカツイ生徒が飛び出してきた。

 「てめぇらぁー!ここが獄門一のグループ、”地獄ネザー”の本拠地だと知って来てんのかぁ!?」

 と、生徒の一人が怒鳴ると特攻隊の数人が「知るかよバカがぁ!!!」と叫びながら殴り掛かった。

 _____こっ…こえぇ~~!!

 これが…不良…これが…喧嘩!?

 目の前に広がる光景に真隼は恐怖していた。今まで漫画やドラマ、映画でしか見たことのない光景が今、目の前で起きている。人の顔に、腹に、力強く拳が抉り込む。いざ本物の喧嘩を目にすると、さっきまでの威勢が嘘のように消えていった。

 「おらぁぁ~!!!!」

 地獄の一人が真隼に向かって殴りかかってくる。

 「死んで出直して来いやぁぁぁぁぁ!!!」

 まずいっ!殴られる!

 _____________あれ?

 でも.......................遅い。

 昔から動体視力が良く、シャッフルカップで中身を当てたり、ドッヂボールでボールをキャッチしてからすぐに相手に当てる戦法を得意としていた真隼は、今、真隼に迫りくる拳がとてもゆっくりに感じた。ある種の”ゾーン”に入っていたのかもしれない。

 そして、バスケで鍛えられたフットワークを武器に、華麗にかわすと、そのまま先へと走り抜けていった。

 「てめぇ!なに逃げてんだゴラァ!!」

 後ろからきこえる怒号を気にも留めず、3階へ続く階段を探す。

 「真隼!こっちだ!」夏樹の声がする方に顔を向けると、3階へと続く階段の前に夏樹がいた。

 階段に向かう真隼の前に地獄の一人が立ちはだかった。「ここは…通さねぇぞクソガキィ…」

 ダメだ…あと少しなのに…やっぱり戦うのか。

 そう尻込みしていると、それまで立ちはだかっていた地獄の男が真隼の横へと吹っ飛んだ。

 え?何が起こったんだ?

 そう考えていると、夏樹が真隼に呼びかけた。「こいつらは俺らに任せろ!お前は数人と一緒に3階へ!」そういうと夏樹は、先ほど殴り飛ばした男の体にまたがり、殴り始めた。

 真隼は「ああ、後は任せた!」と言うと、近くにいた五人を引き連れて、3階へと続く階段を駆け上がる。この先に、地獄のリーダーがいるのだろうか。そう思いながら真隼は3階へ進む。

 

 最後の一段を上り終えた時、真隼の左頬に強烈な痛みが走った。

狭山です。3話目でようやく喧嘩のシーンを書けました!

やっぱりアクションを文字で表現するのって難しい…

皆さんの脳内で上手く補完してもらえればとおもいます…

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