外川中喧嘩部
3月11日の震災により、同日の別世界の「もう一人の自分」と入れ替わってしまった岸野真隼。真隼は別の世界で会った少年、橋本夏樹に中庭へと連れていかれ.....
学ランを羽織った生徒が話し始めた。
「最近、この学校の近くをうろついてる連中がいることを耳にした。なにか知ってる奴はいるか?」
ちらほら手を挙げているのが見える。
学ランを羽織った生徒はその中の一人に問いかける。「澤田、なにか知ってるか?」澤田という生徒は、どこか気まずそうに話し始めた。
「じ…実は、そいつらにやられてよ…」
「誰にやられた?」そう問われると、澤田は一層顔をしかめて言った。
「獄門高校のやつらに…」そう言う澤田の声は震えていた。
「獄門高校って言えば、”地獄王”っつー異名で恐れられてる一ノ瀬惣次郎がいるところだな。」背の高い短髪の生徒が、学ランを羽織った生徒に話しかける。それをきいた彼は笑みを浮かべて
「よーし!それじゃあ、獄門の奴らにキッチリ落とし前つけてやらねぇとなあ!!」
そう叫ぶと、周りの生徒たちが騒ぎ始める。真隼はわけがわからず、夏樹に問いかける。
「一体何が始まるんだ?」夏樹はニヤリと笑って答える。
「喧嘩だよ」
学ランを羽織った生徒が再び話し始める。
「以上で、今日の活動を終わる!次回は3月14日!場所は獄門高前!」続けて、背の高い短髪の生徒が「今日はこれで解散だ!明後日の活動に向けてしっかり休むように!」と呼びかけると、生徒たちは続々と帰っていった。それに続くようにして、真隼と夏樹も学校を出た。
帰り道、真隼は夏樹に、ずっと気になっていたことを質問した。
「なぁ、あの二人は誰なんだ?」
「ん?あぁ、蛇井さんと斯波さんのことか」夏樹は真隼の質問に答えた。
「学ランを羽織った人はうちの部長で3年の、 蛇井光一 さんで、背の高い短髪の人が副部長でおなじく3年の、 斯波勝舞 さんだ」夏樹は話を続ける。
「蛇井さんと斯波さんには周りの奴らから呼ばれ、恐れられている”異名”がある。」
「異名…?」
「ああ。蛇井さんの異名は”蛇竜”。斯波さんの異名は”勝者”。他にもいろんな異名で恐れられているやつらがいるんだ。」
「なるほど……」
真隼は夏樹の話を聞きながら考えていた。どうしたら元の世界に帰れるのかを。そして、なぜ自分がこんなことになっているのかを。たとえ、仮に元の世界に帰れたとしても、そこでの自分は死んでしまっているのだろうか?それとも…
いや、それよりも今考えるべきことは明後日の喧嘩のことだ。どうしよう…生まれてから今日までの約14年間、喧嘩なんてまともにしたことなんかない。そんな俺が喧嘩なんて…
そんなことを考えながら、真隼は夏樹と別れ、家へと帰った。
幸い、家の場所は元の世界と同じ場所にあった(表札から自分の家だとわかった)ので迷うことなく帰れた。家の外見や内装、自室のインテリアには多少の変化はあったものの、母や父の外見、性格、趣味趣向は変わってはいなかった。しかし元の世界ではいなかった姉の存在があり、少し困惑した。
そして真隼は夕食を食べ、風呂につかって、ベッドに入り、いろんなことがあって疲れ切った体を休めた。
そして
2011年3月14日。獄門高校前___________。
狭山です。ANOTHER ME第2話となります。前よりかは読みやすくなっているハズです…
よろしくお願いします。