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09

 それから三日。

 ようやく第二王子が回復してきた、と話題になった。

 レティシアは純粋に良かった、と思った。

 眠る前に、こっそりと神と王国の始祖のロディアーヌさまにお祈りをしていたのだ。

 どうか早くティデットさまが元気になりますように、と。

 黄金の左目を持つ王族でなければ、祈りなどむなしいものだろう。

 魔法のような力が使えるわけではない。

 天へと祈りが届くとは思えない。

 ただの自己満足だった。

 その中、血相を変えた姉のブリジットと兄のジュールがやってきた。

 宰相補佐官という職務があって忙しいはずの兄まで来たことが異常事態だということを知らせた。

 また悪い話題だろうか。

 朝食を一緒に共にした時には和やかだったのに。

 レティシアは身構えた。

 王国の紋章が入った手紙を兄のジュールは差し出した。

 宛名はレティシア・リヴィエール侯爵令嬢へ。

 差出人はティデット。

 手紙を開封しなくてもわかる。

 正式なお茶会へのお誘いだった。

 レティシアは緊張しながら手紙を開封する。

 青緑のインクのメッセージカードと同じ流麗な筆跡だった。

 便箋はメッセージカードのように落ち着くような香りがした。

 これは庭園で漂っていた香りと似ている。

 甘さがないのは、夜ではないからだろう。

 手紙はしっかりとした筆跡で、感謝の言葉と喜びでつづられていた。

 すっかり元気になられたようだった。

 レティシアは安堵した。

 が、姉と兄の反応は違った。

 正式なお茶会の誘いであり、第二王子の御名が書かれている上に直筆の手紙だから、断るわけにはいかない、と言うのだ。

 守ってやれない、と泣き出しそうな顔で姉のブリジットが言う。

 下手すれば妃候補にされるかもしれない、と兄のジュールが言う。

 そこでようやくレティシアは自分が置かれている立場に気がついたのだった。

 今回の第二王子の誕生日パーティーはお見合いであり、レティシアは家柄と血筋だけは良い姫君だということに。

 姉や兄が言うように、断る権利はレティシアにはないのだ。

 ……妃。

 数日前まで、考えたこともなかった未来だ。

 どういうつもりでティデットさまはこの手紙を書いたのだろうか。

 レティシアには困ることしかできなかった。

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