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each ability  作者: れお
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はじまり

自分にとっての生きる理由がなく、

死ぬ理由がないから生きている毎日。

特に生きていく上で不満がある訳でもないけど、

生きたい理由が見つけられない。


そんな事を思いながら、いつものように仕事が終わり

帰りのバスに乗った。

携帯を見ながらバスの座席に座っていたら

一人の男がおもむろに立ち上がり、運転手の方へ歩いていく。


少し目を引いたものの、両替を行うのかと思い携帯を見直したその時、男は急に運転手に向かってナイフを突き出し、小さな紙を渡した。

「今からこのバスを占拠する。お前はこのまま紙に書かれた場所に行け。」

そう言い、運転手の1番近くの席に座っていた女性の乗客の腕を引っ張り「今からこの女が人質だ。」と言った。


頭の中が真っ白になった。

こういうシチュエーションはテレビの中の出来事だと思っていたし、バスジャックを行う動機が全く分からなかった。

犯人は特に要求をする訳でもなく、バスの中はパニックになると言うよりは皆静かに下を向いて犯人と目を合わせようとしなかった。


少しの沈黙の後、犯人は笑みを浮かべながらこう言った。

「人質を交換するチャンスをやろう。出来れば男がいい」

続けて、「但し、次に人質になるものには命の保障はしない。それでも言いと思った奴は黙って手を挙げろ」と言った。


そう犯人が言った直後、俺は手を挙げていた。

人質の女性を助けたいなんて善意じゃない。

ただ、自分はこれから先の人生で誰かのために命を使える場面は無いと思ったからだった。

今、この瞬間に自分の命の価値を見出したからだった。


犯人は、「‥分かった。じゃあ目的地にバスが着いたら一緒に着いてきてもらう。」とだけ言い、無言のバスは進み始めた。

人質の女性とすれ違う時、安堵の顔を浮かべていたように見えて、後悔は全くなかった。


バスが停車した先には、別の車が駐車していて

その車に乗車するように言われた。


運転席には女性が座っていて、嬉しいような悲しい顔を浮かべていた。

そこから何処に向かっているのかは、分からなかったが

運転中、犯人の男はこう言った。

「バスジャックというのは嘘なんだ。君にも、乗客にも酷い事をした。実は、このバスジャックは異能力対策本部に適正な人物を入れるためのテストの様なものなんだ。」と言った。

バスジャックは嘘?異能力対策本部?分からないことだらけだった。

質問をする前に犯人だった男は続けて、「私の名前は御堂というものだ。異能力対策本部の部長を務めている。君にはこれから異能力対策本部で勤務してもらうことになる。

自由は無い。君は今回のバスジャックで死んだ扱いになる。

勝手な事ばかり言って申し訳ないが、本部ではこの形での特別枠の入社が1番だと判断されたのでね。」そう言い、

車はある建物の前で停車した。

御堂は「詳しい話は中で話すとしよう。これから長い付き合いになると思うがよろしく頼む。」と言い頭を下げた。

俺も理解は出来ていないが、「よろしくお願いします。」とだけ言い特に質問はしなかった。

複雑な心境だが、何故か心は躍っているようだ。





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