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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある女性の独白

作者: 佐野マコト

文章などでおかしいところがあったら、コメ欄で教えてください。

バーには、洋風な音楽が流れていた。


外はじっとりと暑く、今夜も熱帯夜になりそうだ。


カウンターの奥にいるマスターはグラスを磨いている。


カウンターに座って、ウィスキーを飲んでいた女性が、唐突に口を開いた。


「マスター。少し、話聞いてもらってもいいでしょうか?」

「勿論です」

「これは、私の後悔と独白です」

そう前置き、彼女は話し始めた。


「私、昔は人見知りで、友達と呼べる人がいなかったんですよ。

「小学校…三年生ぐらいの時ですかね。友達ができたんです。

「すごく優しい子で、明るくて、足も速くて。

「親友だったんです。

「いえ、今でも親友ですけど。

「彼女は、普通の女の子だったんです。

「普通に恋をして、私に告白の手伝いを頼んだこともありましたし。

「私は、彼女の恋を応援していました。

「幸せになってくれるなら、それが一番だと。

「でも、中学生二年生ぐらいになって。

「彼女にもたくさん友達ができました。何せ社交的な子でしたから。

「でも、私には彼女しかいなかった

「反抗期というのでしょうか。家族との会話がほぼなくて、そのころは彼女がすべてだったわけです。

「彼女のためなら、彼女と一緒なら、死んでもいいと思っていました。

「今もですけどね。

「彼女が嬉しそうなら、私も嬉しかったし、彼女が幸せというなら、私も幸せだった。

「でも、ある日気が付いたんです。

「ほかの友人の話をする彼女に妙に怒りを覚えたことに。

「どうしてかは全くわかりませんでした。若かったのです。

「彼女が恋をしていた一方で、私は恋愛感情がわからなかったもので。

「彼女が楽しそうに他の人と話しているのが嫌だった。

「彼女が私以外の誰かを見ているのが嫌で嫌で仕方なかった。

「男性アイドルを見て、かっこいい、あの人と結婚したい、と言っているのを聞いて心に穴が開いたようだった。

「もちろん冗談なのはわかっていました。それでも、いやだった。

「私は自分の感情がわからなかった。

「そのうち、それが独占欲なのではないかと思い始めたのです。

「彼女が他の誰かを見るぐらいなら、監禁して、私だけを見てほしい。

「彼女が誰かを好きになるのなら、その人を殺してしまいたいと!

「そんな暗い感情ばかりが募っていきました。

「もしかして、これは恋愛感情なんじゃないかと思ったこともありましたよ。

「でも、こんな黒い感情が恋なんかじゃないことはわかっていました。

「私は、彼女のそばに、今までと何も変わらぬ顔をしていることに決めたのです。

「そうすれば、いずれこの気持ちは消えるのではないかと

「でも、ダメでした。

「いくらこの感情を無視しても!いくら恋を理解しようとしても!

「彼女へのどろどろとした感情はなくならなかった。

「一方、彼女からして私は良い親友のようでした。

「修学旅行などの部屋は同じでしたし、周囲から見ても、仲のいい二人組だったのでしょう。

「私は、それが嬉しかった。

「おっと、話が逸れてしまいましたね。

「しばらくたって、高校は分かれました。

「大学も分かれましたが、彼女とは親友のままでした。

「私は、相変わらず彼女へのどろどろとした感情を持っていました。

「さらに年が経ち、彼女は結婚しました。

「私は、相変わらず恋愛感情がわからず、どうしようもないのです。

「これで私の話は終わりです。変な話をしてしまってすみませんでした。


では、と女性が立とうとすると、マスターが一杯のカクテルを差し出した。

驚く女性に、マスターは淡々とカクテルの説明をしだした。

「モヒート、というカクテルです。」

私からのサービスです、とマスターはお茶目に笑った。

「すみません、ありがとうございます。いただきます」

女性はコクリと喉を鳴らして一口飲んだ。

「……おいしい」

「それは良かったです」


彼女はそれを飲み干すと、マスターに深い礼をして、店を出て行った。

去り際にマスターは女性に声をかけた。

「またのご来店をお待ちしております」


客がいなくなった店内では、相変わらず洋楽と、グラスを磨く音が響いている。

女性が飲みほしたカクテルのグラスを磨き終わると、マスターはポツリとつぶやいた。

「……あなたの渇きが、いつか癒やされますように」

と。

カクテルとかの酒言葉って素敵ですよね。飲んだことはないですが。

ぜひ調べてみてください。

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