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第二十五話 ~夏日~

ほのぼのした日常の一コマです。


では、どうぞ。

「あ~づ~い~」


「・・・なんて格好してるんだ真雪」


「本当よね。淑女としての自覚がないのかしら」


「零・・・貴女には言われたくないわ」


「え~?だって暑いんだもん」


「露出狂」


「酷いよ哭月まで!いいじゃない別に。他に誰かが見てる訳じゃないし」


「鏡が見てるんじゃない?」


「ふふふ、甘いわよ桜花。お兄ちゃんならノープロブレム、というかむしろ大歓迎!!」


「「「変態ブラコン」」」


「えへへ~。それほどでも」


「「「や、褒めてないし!?」」」


「意気あってるな・・・」


季節は夏。梅雨も明け、夏の日差しが遠慮なく地表を照りつけている。

という訳で、現在我が家も熱帯の様な暑苦しさに襲われている。家の中ならば外よりは幾分涼しいが、それでも耐えられるものではない。

時折、吹き抜ける風は温かく、響く風鈴の音も涼しさを与えてくれない。

一応、庭に打ち水もしたが焼け石に水。確かに涼しくなるが、長続きしない。

今日は、全国的に記録的な猛暑と朝にテレビで言っていた。

というのが、先程の会話の理由である。

真雪は何故か浴衣を着ており、胸のあたりを大きく肌蹴させ、床に倒れこんでいる。真雪に淑女どうこう言っていた零は、布地の少ない下着姿。や、まあ、正直俺もそれはどうかと思うのだが、何度注意しても聞きはしない。むしろ誘ってくる。実の妹とはいえ、全裸に近いその姿に普段なら思うこともあるだろうが、暑さでまいった頭では何も感じない。

桜花と哭月は二人とも似たような白いワンピースを着ている。桜花は知らないが、先程哭月から下には何も着ていないとの自己申告を受けた。で、俺にどうしろと?

かくいう俺は、半袖のシャツと短パンと言う姿だ。


そういえば、こんな蒸し暑い日に何でみんなこの家にいるのだろうか。あ、この家の人間じゃないのは真雪だけか。思えば、住人が増えたな。この前までは俺一人だったのに。

しかし、住人が増えたのは悪いことではないのだろうが、男が一人というのはなんとかならないもんかね。

この状況、普通の男ならこれ何のエロゲ?ってなことで羨ましがるのかもしれないが、彼女たちは皆妖怪だったりするわけで。事あるごとに命に危険が及ぶ生活というのは、多分幸せとはいえないと思う。まあ、一人でいるよるはずっといい。たとえ、実の妹が最近色々と遠慮がなくなってきているとしても。

まあ、そんな感じで感謝はしているので、その感謝の印というわけではないが、暑い日にもってこいのものを振舞うとしよう。


「さて、出来たぞ」


カップに盛られているのは細かく刻まれた氷。白く山積みにされたそれはまるで雪山のよう。その頂には色とりどりの化粧が施されている。ま、ようは


「かき氷だ!」


うん、そう。かき氷なのだが・・・。真雪、気づいてないかもしれないが涎が垂れているぞ。俺がかき氷にされかねないのであえて言わないが。


「あー、もう。人数分あるから慌てて食べるんじゃないぞ」


全員にかき氷を配り、俺も苺のシロップをかけたかき氷を口に含む。すると、キンと冷えた甘さが口に広がる。うん、夏はこれに限る。


「クーッ、キク~」


「頭痛い~」


声の主は上から零と桜花だ。まあ、慌てて食べるなと言ってもこうなるのは分かっていた。お約束というやつだ。


「おかわり」


「へ?」


目の前に差しだされたカップを持っているのは真雪だ。どれだけの勢いで食べたのか、他のみんなはまだ一口か二口しか食べていないというのに。そのくせ、頭を痛がるそぶりも見せない。

ああ、雪女だからかな。そんなことを思いながら、俺は氷をペンギン型のかき氷機で削る。

雪女といえば、雪女だからといって暑さに弱いわけではないらしいのだが、真雪は思いっきり苦手みたいだな。ま、この暑さなら雪女でなくとも堪えるだろうけど。


「はいはい、もう少しだから待ってろ」


「あ、コレ食べてもいい?」


「それは俺・・・いいや、どうぞ」


「やった。ありがと」


真雪は喜々として俺のかき氷を口に運ぶ。ああ、もしかしたら俺かき氷食べられないかもしれない。


「・・・鏡、あ~ん」


「・・・え?」


自棄気味な気持ちで氷を削っていると、俺の口元にスプーンが差しだされた。どこから差しだされたのかと視線を巡らせてみると、そこには桜花がいた。頬が赤い。

俺は頬が熱くなるのを感じながら、どうしようかと思っていた。このままぐずぐずしていては氷は融けてしまう。それならばと思いきって口を開いた。


「おいしい?」


「・・・おいしいです」


「あ~、ずるい。私もそれやりたかったのに~」


正直、あんまり味なんてしなかった。だというのに、桜花は嬉しそうにまたスプーンを差しだしてくる。零も何か言っているようだが、聞こえていないことにしよう。


「おかわり」


勘弁して。





「ふ~、お腹一杯」


「お粗末さまでした・・・」


はぁ、と溜息を吐きカップを片付ける。

お腹が一杯になるはずだ。いったい真雪だけで何杯おかわりをしたか分からない。というか何でお腹を壊さないのかが不思議だ。


「そういえば、もうすぐ夏祭りだよね」


「ああ、そんなことも言ってたわね」


片付けてから帰ってくると、何やら楽しそうに桜花と哭月が話していた。


「何の話だ?」


「あ、ご主人。もうすぐ夏祭りだねって話よ」


「ああ、そういえば」


確かにそんなことを聞いた覚えがある。九凰神社で夏祭りがあるらしい。まあ、無論表側の話だが。だが聞くところによると、こちら側の出店も隠れて出店するとか何とか言っていた。バレなければ問題ないとか言っていたが、そういう問題ではない気がする。妖怪がどんな店を出すのか興味はあるかも。七辻家が出張とかするのだろうか。ああ、花火もあるとか言ってたっけ。


「よし、じゃあさっそく行きましょうか!」


「うん?」


じっと考え込んでいたのだが、零の声で思考を中断した。何やら話が気づかぬうちに進んでいたようだ。多分、俺にとってあまり良くない方向で。


「お兄ちゃん、何してるの。早く行くわよ」


「何処に?」


「街に」


「何故に?」


「桜花が浴衣とかないからって、私も持ってなかったし」


「俺も一緒に?」


「何言ってるの。お兄ちゃんも来なきゃ始まらないでしょう」


そういうものなのだろうか。確かに浴衣姿とかには興味はあるが。

とか考えているうちに、俺と零以外の全員の準備が整ったらしい。準備といっても身だしなみを整えるくらいなもんだからそりゃ早い。零は服を着なければならないが。


「この日差しの中行くのか?」


「ふ、そんなこと瑣末な問題に過ぎないわ」


おお、今の今まで暑くてだらけきっていた人物の言葉とは思えない。他の皆も同じように頷いている。


「じゃ、ちょっと待ってて」


零は着替えに部屋に行った。

店につけば冷房はきいているよな、でもそこまで行くのが問題か、などど考えていると零が戻ってきた。白いノースリーブシャツとミニスカートという姿だ。


「お待たせ、じゃあ行きましょう」


やれやれ、言い出したらきかないし、俺も行くとしようかね。財布の確認をして零たちの後を追う。




こうして、また夏の一日は過ぎていった。帰ってきたのはすっかり涼しくなってからだった。

夏祭りを楽しみにしていよう。俺は、まだ来ぬ夏祭りに思いを馳せた。何か、いいことあある気がした。

ということで、あまり内容のない話でした。今回の目的はあくまで次回へのつなぎというか、そんな感じで。

次回は前編後編に分けると思います。あるいは三部か。ともかく長くなることは間違いありません。自体は急展開、って感じでもありませんが、ある意味完結に近いのかも。二十六話以降は本当に急展開になります。一応、二十六話で一区切りつけて、一気にクライマックスという感じですね。最後はなんでそうなるの?的な展開だと思います。事の真相も大して凝っていないうえに、無理やりな内容なので温かい目で見てくださると幸いです。

では、また次回。

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