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第二十二話 ~転居~

今回は引越し編です。


ちょっと短めです。

では、どうぞ。

「名残惜しいか?」


「うん。ちょっと、寂しいかな」


隣にいる桜花の姿を見ると、霊樹を見上げながら悲しげで儚げな表情をしていた。

無理もない。桜花はずっとここで暮らしてきたんだから。


「私の、桜花としての記憶は、ここから始まってるから」


「そうなのか?」


「うん。転生した私は、ここで目覚めたの。転生する前の記憶も思いだしてきたけど、今の私の始まりはここだから」


「・・・ま、もうここに戻れないわけじゃない。寂しくなったらまた来ればいいさ。ここがなくなるわけでも、来ることを禁止されたわけでもないんだから」


出来るだけ、暗くならないよう明るい調子で言った。


「・・・うん。そうだね、ありがとう、鏡。もう一人の私にも、消えてほしくないしね」


「・・・そうだな。じゃ、行くか」


「・・・・・・うん」


桜花は、景色をその目に焼き付けようとするようにじっくりと眺めた後、名残惜しそうに踵を返した。

ふと、手に温もりを感じた。俺は、その温もりを優しく握り返した。微かに震える桜花の手を、大丈夫だと慰めるように。

俺はもう一度、なんとなく気になって霊樹を見るために振り返った。すると、そこにいつか見た人影があった。今度は、気のせいなんかではない。確かにそこにいる。


「あ・・・れは」


なんだ、と続けようとしたら、次の瞬間にはその人影は消えてしまった。俺の目の前で、忽然とその姿を消した。


「鏡?」


どうやら、桜花は気付いていないらしい。怪訝な様子で、俺と同じように霊樹を振り返った。が、そこには何も無く、桜花は不思議そうな視線を俺に向けた。


「・・・ここ、桜花以外に誰か妖怪が出入りしてるか?」


「?・・・ううん。普通の妖怪は私を怖がって近づかないけど・・・」


「・・・そうか。いや、なんでもない。気のせいだったみたいだ」


心配そうに俺を見つめる桜花を安心させるべく、微笑んだ。だが、ちゃんと笑えていたか自信がない。

あれが、何なのか気になって仕方なかった。本当に気のせいなら良かったが、あれはちゃんとそこにいた。悪いものではないと思う。だが、不可思議な何かであるのは確かだろう。

まあ、俺がこれ以上考えても分からないだろう。後で、もう一人の桜花や哭月に聞いてみよう。

もう一度、確かめるように霊樹を見たが、やはりそこには何もいなかった。

俺と桜花は、その後一度も振り返ることなく、霊樹の森をあとにした。


というわけで、桜花は俺の家に引っ越してくることになった。

あの任務の途中に、桜花の引越しのことはその理由も含めて零と真雪には話してある。二人とも、快く了承してくれた。

そして任務の翌日、九凰さんに事情を話すと、あっさりと認めてくれた。というのも、あの森に桜花が居たのは、特に何かしらの理由があったからではなく、別にあの森の守り神でも、あの森に守られているわけでもないので構わないという。つまり、その辺は俺の勘違いというか思い込みであったらしい。協会としては、その土地の管理者がどこに住んでいるかを把握していればいいというので、九凰さんが許可を出せばそれで問題ない。

そういうわけで、その翌日に俺が桜花を迎えに来たのである。もっとも、最初は迎えというよりも、引越しの許可が下りたことを知らせるだけのつもりだったのだが、荷物もないしこのまま引越しをすることになったのだ。

ただ、情けないというか間抜けというか、霊樹の森に来る途中、桜花は引越しのことを知っているのだろうかということに気がついた。引越しについてはもう一人の桜花と約束したことで、桜花が知っているかどうかは分からない。桜花がもう一人の桜花と話せるのかも俺は知らなかった。

まあ、結果的にいえばその心配は無用だった。桜花ともう一人の桜花は話せるらしく、引越しの話は既に聞いていたらしい。

ちなみに、先の任務で手に入れた闇禍だが、俺が所有することになった。協会に申請は必要だそうだが、闇禍自身が俺を所有者と認めているということで、仮に協会が許可をだしたのだ。ただし、今はまだ仮の状態なので九凰神社に預けている。


「と・・・もうついたか」


桜花と他愛無い会話を楽しんでいると、いつの間にか家についてしまった。


「ただいまー」


「お帰りなさい、お兄ちゃん。あれ?桜花も一緒だ」


出迎えてくれた零に、事情を話す。


「はー、なるほど。これからよろしくね、桜花」


「うん、よろしくお願いします。・・・えと、お邪魔します」


少し遠慮がちに言う桜花。耳も垂れ下がっており、どうしたらいいのか戸惑っているのがよく分かる。

やれやれ、いきなりこの家で住むことになって緊張したり、戸惑ったりするのは分かるが、その言葉はいただけないな。


「違うだろう?桜花」


言って、零に視線を向ける。すると、零も思いは同じようで、苦笑を浮かべながら頷いた。

桜花は、どういうことか分からずに首を傾げている。


「「おかえり、桜花」」


「!・・・ただいま」


そう言った桜花は、とてもいい笑顔を浮かべていた。

なんか思ったよりも短めになりました。

次回はもうちょっと長くなるかと思います。いつものごとく、ほのぼのとみんなでわいわいする予定です。多分、また誰か暴走することになるかも。

というわけで、次回は歓迎、宴会?とかになります。最近出番のなかった人たちもちょっとは出番があるかも。

と、そろそろヒロインが誰かって分かりますよね?もっと、早く分かっていたという方もいるかもしれませんね。まあ、そういうことで、今後は彼女をメインとした話になります。恐らく、あと約八話で終わると思いますので、それまでお付き合いください。

では、また次回。

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