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第十六話 ~変身~

サブタイトルから内容は想像できますかね?

まあ、そういうことです。今回はちょっと迷走したのでいつもよりも心を広くして読んでいただけると幸いです。

では、どうぞ。

「哭・・・月?」


哭月が、喋った?

予想外の出来事に頭が真っ白になる。何が起こっているのか理解できない。


「ふふ、驚いているみたいね」


「そりゃ、な」


これで驚かないほうがどうかしている。


「じゃあ、手短に説明するわね」


哭月から聞いた内容はこうだ。

曰く、哭月は猫ではなく、元魔女なのだそうだ。

その昔、色々とまあ大罪とやらを犯したらしく、その罰として猫にされたとか。哭月は貴重な力を持っていたので極刑にはならずに猫になる魔法をかけられたらしい。

その後、何百年かとある場所に封印されていたそうなのだが、最近その封印が解かれたのだそうだ。それは特定の誰かが封印を解いたのではなく、封印の劣化が原因らしい。そりゃ、何百年も経過すれば封印も弱くなるだろう。

ともあれ、封印から解かれた哭月は力も衰え、魂も姿も完全に猫の姿に同化してしまった為、人間の姿にも戻れず、あてもなく彷徨っていたそうだ。そしてふらっとこの里へと迷い込み、偶然俺と出会った、と。

ん?そういえば何故哭月はここにいるのだろう。


「なあ、なつ・・・いや、元の名前があるのか?」


「いいえ、哭月でいいわ。大罪の魔女は死んだ。人間には戻れないのだし、哭月という名前は気に入っているから」


「そうか。じゃ、哭月、何で俺のところにずっといるんだ?どこへでも行けただろうに」


いってみれば、哭月は自由だ。どこへでも行ける。まあ、迷惑ということは絶対にないのでいいのだけれど。


「んー、理由としてはまず力を取り戻さなきゃならなかったから。今まで少しずつ生気をもらってたの。そのお陰でこうして喋れるようになったし」


「ああ、なるほどって生気?」


何かそれはとても聞き捨てならない言葉を聞いたような。


「大丈夫。日常生活には支障ないくらいだから。なかったでしょ?」


「まあ、確かに」


普段、特に身体に異常はなかったな。疲れるってこともなかったように思うし。


「それにね、それだけが理由じゃないわ。一番の理由は居心地が良かったから。ただ飯にもありつけるしね」


悪戯っぽく哭月が言った。


「居心地が良かった?」


「ええ。ご主人様のことを選んだのも直感的にこの人なら大丈夫って思ったからだしね。運命ってこういうこというのかしら」


「お、おい」


「冗談よ。冗談」


そう言って哭月は楽しそうに笑っていた。


「でも、もしやっぱり喋る猫なんて迷惑っていうなら出て行くけど」


伏せ目がちにしょんぼりしたような雰囲気で言われて、出て行けなどと言えると本気で思っているのだろうか。いや、思っていないだろう。こいつは確実に確信犯だ。


「誰も迷惑だなんて思ってないさ。家族みたいなものだし、そもそも出て行く気なんてないだろう?」


「あはは、やっぱりご主人様を選んでよかったわ。ありがとう。礼を言うわ」


「礼なんて必要ない。家族だろ」


「ええ、そうね。でも、家族に隠し事はいけないわよね?」


「ああ、まあ。って何かあるのか?」


ま、色々ありそうではあるか。過去の大罪のこととか、本当の名前とか。


「じゃあ、いいものを見せてあげるわ」


そう言うと、哭月の身体が突然光り始めた。

あれ、最近これによく似たものを見たような気が・・・。


「うふふ、どう?感想は?」


「・・・何でもありか」


あまりの眩しさに目を瞑っていたが、おそるおそる目を開けてみると、そこには猫耳を生やした白髪と深紅の瞳を持つメイド服を着た可愛らしい女性がいた。まあ、身体に感じる重みが増したので予想はしていたのだが。


「感想は?」


求める感想ではなかったらしい。

・・・仕方ない。恥ずかしいのだが、本音で答えるしかないか。


「・・・可愛いです」


「よろしい。大好きよご主人様」


「というか、何故にメイド服?いや、まて、人間の姿にはなれないって言ってなかったか?」


「なれないわよ。これは変身みたいなものよ。ほら、猫耳だってあるでしょ。あと、メイド服のほうが可愛いじゃない。こういうの嫌い?」


「いや、嫌いじゃないけど」


むしろ嫌いとか言う男がいたら見てみたいものだ。偏見かもしれないが。


「なら問題ないわね。それに、ご主人様っていったらやっぱりメイドさんじゃない?」


いや、じゃない?とか言われても返答に困るのだが。ていうか、そろそろつっこんでもいいだろうか。


「・・・前々から思ってたんだが、ご主人様ってなんだ?」


それを聞いた哭月は心底意外そうな顔をして言った。


「え?私は飼われている身だし、普通じゃない?あ、それもとご主人様とか呼ばれるの嫌だった?」


なんか、価値観にズレがある。何百年も前となると大分違うのだろうか。けどそれが普通だったってこともありえるか。その頃なら今とは違って本物のメイドさんとかもいただろうし。


「嫌というか、気恥ずかしい」


「じゃあ、マスターとか」


「なんか、違う気がする」


「ダーリンとか」


「どういう思考を経てそうなったのか説明を要求する」


「鏡様とか」


「や、名前はちょっと」


「うーん、ご主人とかは?」


「・・・それなら、まあ他のよりは」


「よし、ではご主人に決定!」


そう言いながら哭月は俺に抱きついてきた。それに俺は押し倒される形になり、哭月の胸が俺に押し当てられる。


「にゃー、ゴロゴロ」


「猫か!」


「猫だもの。今の私は、ご主人に飼われている猫よ。元魔女だけどね」


「だからってこれは・・・」


「いいじゃない。飼い主と飼い猫のスキンシップよ。少しくらい甘えてもいいでしょ」


「・・・飼ってるっていうか、俺にそんなつもりはないよ。家族だと思ってるって言ったろ」


「なら、家族として甘えてもいいわよね」


駄目だ。何を言っても言うことを聞かない。こういうところは確かに猫にそっくりかもしれない。

無理やり引き剥がせばいい話なのだが、なんとなくそれが出来ない。

もしかしたら、何百年も前から哭月は独りだったのかもしれない。人との関わりを求めていたのかもしれない。そう思ったら、無理やり引き剥がすなんて出来なかった。


「けどなー、こんなところを誰かに見られでもしたら」


今の体勢は、哭月が俺に体重は預けているというか、どう見ても抱き合っているようにしか見えないわけで。この光景だけを見た人がどんなことを思うのか、容易に想像できる。


「お兄ちゃん、ごはんできたよ。まだ寝てるの?入るね?」


噂をすれば影。俺は、そんな言葉を思い出していた。

どうやら、哭月と話しているうちにかなり時間が経過していたらしい。俺のいつもの起床時刻を大幅に過ぎている。


「お兄ちゃん、起き・・・・・・」


零はドアを開け、俺と哭月に視線を定めると、彫像のように動かなくなった。まあ、それは俺たちも同じでだったわけだが。

どうしよう。言い訳が思いつかない。ここは正直に言ったほうがいいだろうか。

・・・ああ、そうか。哭月に猫の姿に戻ってもらえばいいんだ。


「哭月、猫の姿に!」


「そうか!分かったわ」


「・・・お兄ちゃんが、女の人を連れ込んでる!?」


「い、いや待て違う。誤解だ。これはなつ」


「お兄ちゃんの、バカー!」


哭月が変身し終える前に変化した零から、青白い高圧の電撃が放たれた。

いくらなんでもこの状況から電撃を避けることなど、出来るわけがない。


「ーッツ、ア・・・」


まともに電撃をくらって、視界が明滅する。溜めなしで放たれたとはいえ、それでも人を気絶させるには十分すぎるほどの威力がある。いや、多分人間であれば死んでるけど。

コレハシャレニナラナイゼ、マイシスター。

薄れゆく意識の中で、俺はこんな声を聞いた。


「え、アレ?哭月?・・・アレ?」


どうやら、俺と一緒に電撃をくらった哭月だが、変身には成功していたらしく猫の姿で俺の上に横たわっているようだ。それを見た零はどういうことが分からずに混乱しているということらしい。

もうちょっと人の話を聞いてほしいな、我が妹よ。

しかし、あの状況ならあの反応は普通なのかな、などということを考えつつ、俺は意識を完全に失った。

やっちまいましたね。お約束といえばお約束ですが。

本当はもっと短くするつもりだったんですけど、ずるずると長くなってしまいました。何せ、この十六話は朝の十数分間の話ですからね。それで一話分まるまる使うって・・・。

ま、まあともかく、これで主要キャラのほとんどは出揃ったと言っていいでしょう。様々なパターンを含め、です。

そしてビリビリとやっちゃいましたね。描写が雑なのはお許しください。この電撃ですが、本編中でもありましたが人間なら死にます。まあ、稀に偶然助かることもあるかもしれませんが、処置なしでは確実に死にます。鏡と哭月の二人は妖怪なのでなんとか意識を失う程度で済みました。ま、戦闘時なら二人とも障壁を張って戦いますし、意識を戦闘レベルまで持っていけば、零の視線とかから読み取って避けることも難しくはないです。まあ、本編では彼らのガチバトルはないので。

さて、次回は哭月と零のバトルです。といっても戦闘じゃないですけど。

では、また次回。

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