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第一話 ~電話~

どうも早乙女です。


今回は説明編です。

基本的に状況は動きません。

分からないことだらけだと思いますが、どうか最後までお付き合い下さい。


では、どうぞ。

「ごちそうさまでした」


「お粗末さまでした」


「どうだった、今日の朝食は?」


「うん。ちょっと冷たいところもあったけど、おいしかった。明日は洋風がいい」


いや、冷たいのはキミのせいだからね。声には出さんが。

今、俺の前にはきれいに空になった食器と満足そうな笑顔を浮かべている真雪がいる。作ったばかりの朝食が一瞬で冷凍食品になるという怪奇現象があったわけだが、当の犯人様は全く気にしていないようである。


「了解。明日は洋風な」


「うん」


ともあれ、それはいつものことだ。今朝のようなことは一度や二度じゃない。真雪と出会って一か月くらいだが、もう慣れてしまった。

嬉しそうに微笑んでくれる真雪を見ていると、こっちまで嬉しくなる。よし、明日も気合い入れて作るとしよう。


「しかし、真雪も料理くらいできるようになった方がいいんじゃないか。女の子なんだし」


「むー。い、いつかは覚えるもん」


拗ねたような瞳で真雪が見返してくる。

いつか、ってそれを聞いたのはいったい何度目だろう?


「そっか。それじゃ、覚えたら何か食べさせてくれ」


「う、うん。楽しみにしてて」


楽しみなような、怖いような。まあ、いつになるかは分からないが、楽しみに待つとしよう。

頬を朱に染めて俯いている真雪にいつになることやら、と苦笑しながら、熱くない程度まで冷ましておいた緑茶を差し出す。


「ほい、お茶」


「うん、ありがとう」


真雪は雪女だから、という訳ではないらしいが、猫舌なので熱いのは飲めない。以前、熱いお茶を出して今朝と同じ結果になったことがある。

ちなみにお茶を淹れたのは朝食を解凍した後だ。


おいしそうにお茶を啜る真雪を確認してから、食器を片づけて流しへと運ぶ。

井戸水は冷たいが、こればかりは仕方ない。とはいえ、文明の利器が恋しい今日この頃。

湯沸かし器でも買ってこようかなと考えつつ、手際よく洗っていく。


「一ヵ月、だね」


「うん?」


作業の手を止めずに聞き返す。


「私たちが出会ってから・・・」


「ああ、そういえばそうだな」


俺と真雪が出会ったのは、約一か月前。とある施設の中だった。

その施設とは退魔協会が管理している施設で、俺と真雪は偶然同じ日にその施設の世話になった。

退魔協会というのは、日本を中心として、主にアジアを管理している組織だ。何を管理しているかというと、俺や真雪のような妖怪や、あやかしと呼ばれるモノ達だ。組織を構成しているのは、そのほとんどが退魔師や魔術師で、俺と真雪を施設に連れてきたのもその退魔師だった。

他にも同じような組織があって、聖霊教会や魔方協会なるものがあるらしい。そちらの方はあまり詳しくはしらない。一応説明されたのだが、出てくる単語の意味が分からず覚えきれていないだけだったりする。


「でも、どうしたんだ?突然」


「別に。ただそろそろ連絡がくるんだよね」


「・・・ああ。そういや、そう言われたな」


何を言われたのかというと、言ったのは退魔協会で、内容は俺に関してのこと。

その内容を説明する前に、何故、俺と真雪が退魔協会に連れて行かれたのかを説明しなければならない。

結論から言うと俺と真雪が妖怪だったから、というのが理由なのだが、問題は俺と真雪は元々は『人間』だったということだ。

人間が妖怪に成ることを『転化てんげ』という。

人間が妖怪に成るには、この世界と同一にして層を隔てた向こう側の世界の存在と魂を通じて道を創り、同調しその存在に染まることで妖怪となる。

向こう側の世界とは、所謂死後の世界、魂の還る場所であり、この世全ての源であり、本流であると言われている場所だ。

そして、その存在せかいに染まるということは、存在せかいと同一化するということ。つまりは死んでしまうということだ。俺もよく分からなかったが、この世界とは違う世界と同一化した時点でこの世界の存在ではなくなった、ということになるらしい。しかし、そこで完全に魂が染まりきり呑まれてしまう前に、この世界が別の存在せかいと同一化することを阻むのだとか。理由としては世界とは安定を望むモノで、矛盾を嫌い、元に戻そうとする修正力というものが働くというものだ。そこで半端に染まった魂に合わせて、世界が体を再構成し妖怪となる。

簡単に言えば転化とは、転生し化生と成るということ。

このように人間が転化して妖怪に成るというのは、昔ほど数は多くないらしいが現代でも稀にあるらしい。それが、俺と真雪だったわけだ。

また、似たように人間の体の一部だけが一時的に獣の形をとるといった『獣化じゅうか』という都市伝説もあるのだが、今回は関係ないので説明は割愛させていただく。

今朝の真雪の一件でも分かるとおり、妖怪になった俺達が普通の人間社会で暮らしていけるはずもない。そのため、退魔協会はそんな妖怪を回収する役割も担っている。退魔協会には、転化を察知するシステムがあるらしく、転化した人間を速やかに回収できるという。

そんな事情から俺と真雪は退魔協会の施設に連れてこられた。

ここで最初の説明に戻ろうと思う。

退魔協会に言われたのは、俺が何の妖怪か分からないというものだった。

真雪の場合はその容姿と能力から雪女だとわかる。

ところが、俺の場合そんな特徴がなかったらしい。容姿は瞳が紅くなったこと以外は人間だった頃と何も変わっておらず、身体能力が人間離れしていること以外変わったことがなかったのだ。

そのため、精密検査を受け、一ヶ月後結果を伝えることになった。

その後俺と真雪は、俺達のような妖怪が棲むこの世界と少しズレた異界とも言われるこの隠れ里に住むことになった。ここは退魔協会が管理している里の一つで他にも全国に何か所もあるらしい。妖怪寮なんてものもあるとか。

基本的に俺たちはここで住居や食料を与えられ、退魔協会の庇護の下暮らすことができる。その他にも金銭も与えられ一般常識を持つ妖怪なら、許可を取れば人里に行くことも可能だ。その代わりに妖怪としての力を退魔教会に協力することが義務付けられており、そこはギブアンドテイクというわけだ。

補足として言っておくと、真雪にも住居はある。だが、家事能力が欠けているらしく朝晩はほとんど家に食べに来ている。というか真雪の家も時々俺が掃除していたりする。まあ、一人だと寂しいとか色々あって別にいいのだが。そんな生活が約一ヵ月続き、今に至る。


「やっぱり、不安?」


「いや、分からないな」


正直、実感が湧かないというのが正直なところだ。

何度も言うようだが、人間だった頃とほとんど同じような暮らしをしている。だから、妖怪だという自覚がない。不安かと問われればそうかもしれないが、深刻に考えていないのも事実だった。ただ、自分が何者か分からないということが、心を少し揺さぶっていた。


「そっか。でも、大丈夫だよ」


「え?」


「だって、何があっても鏡は鏡だもの。あの時私と少し話しただけなのに、毎朝毎晩おいしい料理を作ってくれる。優しくしてくれる。わたしにとっての鏡はずっと変わらないよ。だから、大丈夫」


「真雪・・・」


俺は俺。確かにそうだ。妖怪だとか、そんなことは関係ない。俺は、俺であること自覚できていればそれでいい。

少し不安に揺れていた心はそれだけで大分楽になった。


「ありがとう、真雪」


そう言うと真雪は何も言わず微笑み返してくれた。

真雪はさっき、あの時少し話しただけといったが、それだけで俺は救われたのだ。不安だった俺を元気づけてくれた。あの時、誰も信じられなかった俺と、正面から話してくれた。感謝してもしきれないくらいなのだ。

本当に俺は、この真雪という少女に助けられてばかりだ。


「ううん、本当のことだもん。わたしこそありがとうだよ。鏡」


「っな!・・・く」


「?・・・どうしたの?」


しまった。つい・・・見惚れた。

まったく、どうしようもなく俺は、真雪の笑顔が好きらしい。

いや、恋愛感情とか関係ないですよ?

・・・きっと、たぶん。


そんな和やかな雰囲気が流れている時だった。


「鏡・・・」


「ああ・・・」


一本の電話が鳴ったのは。


でも、大丈夫。


ふと、真雪と目が合い、どちらともなく微笑んだ。


ああ、大丈夫だ。


俺は、俺。


そう胸に思いながら、俺は受話器を取った。

説明と言っても説明しきれていない。

自分の文章力の無さが恨めしいです。


いずれ用語集なるものも作ろうと思うので、そちらに詳しい説明を書きたいと思います。いつになるかはわかりませんが。


次回は少し事態が動くと思います。

というかまだ二人しか登場人物出てねー。


長くなると思いますが完結できるよう頑張ります。

ではまた次回。


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