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第十四話 ~早急~

今回、一応零の正体が明らかになります。

まあ、例のごとくの終わり方です。


では、どうぞ。

「ふう、昨日はさんざんだったわね」


「ああ、うん。そうだね」


朝食後のお茶を飲みながら、唐突に真雪が言った。

昨日、つまりは零が俺を訪ねて来た日。九凰さんが、俺や妖怪、その他諸々を説明した後が大変だった。

零が「信じられない。お父さんとお母さんがそんなこと言ったの?ふん、あいつらなんてもう親じゃない」とか騒ぎ始めた。何というか、自分が妖怪だとか、俺が妖怪だとか、そんなことよりもまずそのことについて激怒するあたり零らしいなと思うと同時に少し嬉しかった。その後も、零は実の親に対して暴言を吐いていた。

とまあ、そんな感じで両親は零の中で親ではなく、敵として認識されたらしい。

それが関係しているのどうかは知らないが、零は妖怪として生きることになんの躊躇いもないということだった。

俺が「友達にも会えなくなるぞ。いいのか?」と聞いたら、「うーん、それは少し寂しいけど、構わないです。お兄ちゃんと一緒にいることのほうが大事ですから」と答えた。今更だが、零は俺に依存しすぎだと思う。悪い気はしないから、俺はいいのだけれど。

ということで、全てを聞いた上で零は妖怪として生きることを選び、九凰さんと共に退魔協会へ検査をしにいった。何の妖怪か判別するためだ。本当はそう急ぐこともないのだけれど、零がどうしてもということで、今日から退魔協会へと赴いているというわけである。

結果が出るには、一週間くらいかかるらしい。正確には、何の妖怪かの判別にはあまり時間はかからないのだが、その後に色々と判定があるのだとか。俺はまったく知らなかったのだが、妖怪としてのランクとかあるらしい。


「まあ、今日はいつも通り静かだからいいけど」


昨日から真雪の機嫌が悪い。朝食のときも、ずっと無言だった。やっと口を開いたと思ったらあれである。


「妹ね。妹ってみんなああいうものなの?」


「いや、断じて違う。あれは、多分、零だけだ」


断言できる。それはない。


「・・・そう。じゃあ何であの娘は、鏡にあんなに懐いているの?異常なくらいに」


「・・・さあ、何ででしょう」


それが俺にも分からない。特別俺が何かしたわけでもないと思うし、理由が思い当たらない。気付いたら、ああだった。


「あの娘、本気だと思う?鏡のことが好きって」


「・・・本気だと思うな」


多分、あれは嘘偽りなく本当の零の気持ちだと思う。今までのあれがただ俺をからかっているだけだとしたら、性質が悪すぎる。いったい何度、兄妹の境界を越えそうになったことか。零、可愛いし。

や、何もしていよ。うん、何もしてない。


「鏡はそれでいいの?あのままで」


「まあ、うん。というか、どうしようもないというか・・・」


正直なところ、好きと言われるのは純粋に嬉しい。ときどき異常かなと思うこともあるけど。

まあ、兄妹としてそれはどうかと思ったので、以前それとなく諭してみたことはあるのだが、泣かれた。さらに瞳に涙を浮かべ、下から覗き込むようして「お兄ちゃん、私のこと嫌いなの?」などと言われたらもう何も言えない。あれは反則だ。あれで堕ちない男はそういないだろう。

だから、俺にはどうしようもない。零の涙には昔から勝てないのだ。


「・・・だからか」


「何が?」


「ううん。別に何でもないわ」


はて、何だろうか。まあ、何でもないというならいいのだけれど。


こうして、朝の時間は過ぎていった。

いつも通りの時間、日常。この時間がもう暫く続くのだろうと思っていた。

だが、それも長続きしなかった。


それから三日後、それはちょうど、昼食を終えて居間で一息ついていたときだ。


「ただいまー、お兄ちゃん!」


やたらと元気な、我が妹の声が聞こえた。

玄関に行ってみると、今にも抱きついてきそうなほど元気そうな零と、心なしかやつれた印象のある九凰さんがいた。


「・・・おかえり・・・?」


ん?この場合おかえりでいいのだろうか。ま、考えるのも面倒だしいいか。


「やけに早かったですね」


確か、一週間くらいかかるとか言ってなかったか。


「お兄ちゃんのために急いできたの!」


「・・・まあ、そういうことです」


どうやら一週間かかるはずの予定を、零が頑張って早く終わらせたらしい。で、それに付き合わされた九凰さんは憔悴していると。というか、実際に検査を受けた零は何故こんなにも元気なのだろう。

つーか検査って頑張って早く終わるものなのだろうか。


「・・・大丈夫ですか?」


「・・・なんとか。この後休ませてもらいますから」


「なんというか、えと、すみません」


「いえ、いいんですよ。なんともありませんから」


ただ、疲れているだけで。と、九凰さんは遠い目をしながら呟いた。


「それで、結局どんな妖怪だったの?」


いつの間にか玄関に来ていた真雪が言った。居間で寛いでいたはずだが、騒がしいので来たらしい。

何だかんだで気になってたんだな。俺から聞こうと思っていたのだが。


「・・・うん。えっとね」


真雪から聞かれたのが不満だったのか、唇を尖らせていたがすぐにそれをやめ、一度目を閉じてから俺に向き直り、笑顔で言った。


「私わね『雷獣』なんだって」

はい、零は雷獣ということになりました。ビリビリですよ。

ああ、コインは弾かないので。

また、雷獣についても本作のオリジナル設定となりますので実際に伝えられている雷獣とは異なります。まあ、擬人化してる時点で違うんですけどね。

とりあえず、雷獣の詳細は次回明らかになります。

多分、次回の終わりに今まで影の薄かった人物が主役級にまで上がってきます。それが誰かは次回のお楽しみということで。もしかしたらこれだけで分かる人っていますかね。ヒントとしては、お約束、です。

では、また次回。

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