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第十話 ~任務(後編)~

今回は後編。これで十話は終わりです。


では、どうぞ。

凶ツ風まがつかぜ


言葉を紡ぐと同時に気流が生まれる。気流の流れは渦を巻き、毒霧を吹き飛ばす。


「む!?」


土蜘蛛は不穏な気配を感じたのか、その巨体をものともせず、突っ込んできた。


「やらせん!」


空気の渦は勢いを増し、俺の右腕に絡みつく。風が凝縮し、さらにその力を増す。猛り狂うその凶風は獲物を求めてさらに速く吹き荒ぶ。


「逝けよ」


俺は、眼前に迫った土蜘蛛に右腕に纏った凶風の渦をを叩き付けた。


「・・・散華さんか


まるでその言葉が引金だったのかのように、土蜘蛛の体は粉々に吹き飛んだ。赤い血が飛び散り、無数の肉片が舞った。無数の風の刃に切り裂かれ、風の渦に砕かれ、土蜘蛛は散った。

その血と肉片の散りざまは、まるだ華のようだった。


凶ツ風・散華


それが土蜘蛛を葬った、夜叉の血が継承する技である。


「今度こそ、これで終わりか」


もう周辺に妖怪の気配はない。これで、やっと終わりである。


『す、すごい』


頭上から声がする。上空に非難していた式神が降りてくる。


『すごいじゃないですか。全然戦えてる!ってか強!』


何か、テンション高いな。そんなに驚いたのだろうか。


「まあ、これが夜叉の力ってことかな。反則だよな。俺、全然戦闘訓練してないし」


『ほえ~。夜叉ってすごいんですね~・・・ん?』


「どうかした?」


『鏡さん。村の中に入って下さい。何か、頼みたいことがあるそうです』


「俺に?」


はて、何だろうか。この任務の目的は、俺の戦力評価のはず。事件そのものに関係はないはずだけど。


「了解、行ってくるよ」


『はい。では私のナビはここまでです。ありがとうございました』


「ああ、こっちこそありがとう。色々助かった」


『いえいえ。ではまた一緒の仕事の時はよろしくお願いします』


「了解。じゃあ、また」


『はい。また、です』


言い終わると、式神は力をなくしたのか落下した。


「では、行きますか」





「ぎゃああああ」


「嫌、イヤ・・・来ないで!」


「な、どうしたんだみんな?」


帰りたい。戦っていたときのほうがマシだ。

俺は、村の中に入ると退魔協会の人間に妖力遮断の首飾りを渡すように言われた。

首飾りを預けてから、村人の生き残りが集められている屋敷に行ったのだが、それがこの結果だ。

ある者は夜叉の力で幻覚を見て、泣き叫んでいる。ある者は周りの者たちの様子に動揺し、おろおろしている。


「実験・・・ね」


人間であれば、夜叉の力の影響で幻覚を見る。しかし、見ていないのなら、それは妖怪か魔術師ということになる。そして、生き残りの中には夜叉の影響を受けていないものがいる。

それは、彼らが妖怪か魔術師ということを意味している。だが、ここは普通の村だったのだ。妖怪も、魔術師も元々一人としていなかった。

つまりは、この村で行われていたのは一種の実験だったらしい。

人間を、人工的に無理やり魔術師に仕立て上げる実験。

そのためには、もう一つの世界に通ずる道を開かなくてはならない。だが、無理やりそんなことをすれば、素質のない人間は開かれた道に耐えられず死ぬ。その結果、この村の生き残りはこの屋敷にいるだけとなった。

幻覚を見ていない者は、道が安定して開かれたということだ。まあ、運がよかったのだろう。

恐らく死んだ人間は、あの妖怪たちに喰われたのだろう。差し詰め、あの妖怪達は首謀者が用意した用心棒といったところか。今回は、足止めに使われたようだが。


「首謀者は逃げたんですか?」


「ええ。こちらの動きに気付いて早々に逃げたようです。捜索中ですが、恐らくは・・・」


見つからないと。その可能性は高いか。こちらの情報を掴み、いち早く逃げだしたのだから、そう簡単に見つかるとは思えない。


しかし、首謀者の目的が分からない。いったいこんなことをして何になるというのか。

聞こえてくる話だと、魔方協会の人間の仕業とか、潜りの魔術師の仕業とかいわれているが、正確なことは何一つ分かっていない。


というか、俺が村に入る必要はなかったのではなかろうか。結局、村人達は精密検査を受けることになるのだろうし、態々夜叉の力を使って判別する理由はないはずだ。夜叉の力を試したのだとすれば、それも分からなくはないが。

まあ、上の人間の考えていることなど、俺には分からない。

はっきりしているのは、俺の気分が非常に悪いということだけだ。


とまあ、そんな後味の悪い感じで俺の初任務は終わった。




「はあ、やっと帰ってこれた」


目の前には九凰神社。そう何日と離れていたわけでもないのにやけに懐かしい。

これで普通の日常生活に戻れる、と思ったのだが、世の中そううまくはいかないらしい。


九凰神社の境内に入ると、見慣れぬ、しかし懐かしい背中があった。そして、予想だにしなかった言葉を聴いた。


「お兄ちゃん!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」


十話やっと終了しました。後編では話の頭にちょっとだけ戦闘がありました。まあ、技出して一撃で終わりでしたが。

前にも言いましたが、本当は二部構成くらいで終わらせるつもりだったんですよね。この後、多分2回ほど戦闘パートを予定しているんですが今回より大分長くなります。ずっと先の話になりますけど。次も戦闘パートだけで三部構成になると思います。しかし、戦闘って難しいですね。改めて痛感しました。もっとうまく書けるよう精進したいと思います。

さて、いよいよ次回、主要メンバーが全員揃います。やっとですよ。これでやっと折り返し地点も見えてきましたかね?

では、また次回。

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