私は、セルフネグレクト。
私は、物心つく頃から母に掃除の仕方を教わらなかった。
母は私を物凄く甘やかせて育てた。
だから、私の散らかった部屋も毎日母が掃除をしていたし。
ゴミを私が散らかしても母は一切、私に怒る事はなかった。
それどころか、私の部屋が汚いと掃除しがいがあると母は逆に喜んでいた。
母は汚い部屋をキレイにする事が喜びだったらしい。
私に掃除の仕方を教えなかったのはそのためなのだろう。
・・・だから私は、いろんなところで困る事もあった。
自分の机の上はいつも汚くゴミが私の周りにだけ散乱する。
仲のいい女友達にも、必ず私はこう言われていた。
『ほら? また机の周りが汚れてるよ! 拾ってゴミ箱に
入れておいで!』
『うん、分かった。』
私が片付けられない事を知っててくれる友達だったから
今までは、“私が片付けられない女”だとそれほどバレなかっただけ。
*
・・・でも、私が社会人になると? 私も自立して実家を出て
一人暮らしをはじめる。
母には私は徹底して、自分が一人暮らしするマンションさえ
教えなかった。
そうする事で、私は母に甘えないと私に誓ったからだ!
自立とは、そういうモノだと思っていた。
母も私の考えている事を理解して1度も私の一人暮らしの部屋
に来る事はなかった。
私はそれから仕事が忙しく、ただただ疲れて寝に帰る部屋。
ゴミはあっという間に、部屋の床を覆いゴミで山盛りになった。
片付けられない私は、この部屋に溜まっていくゴミをどうすれば
いいのかさえ分からないでいた。
ゴミは1年、2年と溜まっていき。
とうとうゴミで部屋がいっぱいになる。
食べ終えたコンビニの殻の弁当箱、飲みかけのペットボトル、
コンビニのおにぎりの袋、使った後の割りばし、缶、もう何か
分からないモノまでゴミが積み上げられていく。
ユニットバスも、引っ越して来てから掃除を1度もしていない為
真っ黒になりカビがあちこちに生えていた。
鏡についた水垢、こびり付いた汚れ、浴槽の中にもいろんなモノ
が散らばっていた。
トイレも、汚物がこびり付いて取れない。
使ったら使いっぱなしのキッチン。
何かを食べた時にそのまま置きっぱなしにしている鍋やコップ。
布団も一度も、この部屋に住み始めてから干していない為ホコリだらけ。
私はこれが“汚い”とも思わなかった。
ただ、モノが散乱しているぐらいにしか思っていない。
私は仕事が忙しいという理由で、部屋の掃除をしないだけ。
でも? 片付け方が分からない。
どうやったら? この部屋をキレイにできるのか?
だからといって! 私は母をこの部屋に呼ぶ事は出来なかった。
母の世話には、絶対になりたくないと思っているからだ!
ではどうする? 私はネットカフェでパソコンで【家事代行サービス】
というモノを見つけた。
その代行サービスを頼むと? だいたい1回の掃除に20万円ぐらい
するらしい。
まあ、今まで貯めてきた貯金でこの際、掃除をお願いするしかないと
私は腹をくくる。
【ピーポーン】
『はーい!』
『家事代行サービス!』
『よろしくお願いします。』
『随分と汚れていますね』
『こんなに汚れていても、大丈夫ですか?』
『勿論ですよ! では後はお任せください!』
『何時ぐらいに帰ってきたらいいですか?』
『お仕事、何時ごろに終わられますか? 夕方ぐらいなら
全て部屋がキレイになっていますよ。』
『ありがとうございます。 いつも夜8時を回らないと仕事から
帰れないので安心しました。』
『では、掃除が終わりましたら、玄関のポストに鍵は入れておきま
すので、何か不明な点や聞きたい事があれば“秋吉”の携帯に電話
してください!』
『ありがとうございます。 助かります。』
『では、いってらっしゃい!』
『行ってきます!』
私はその日、1時間ほど残業して家に帰ると? 部屋はガランとして
物凄くキレイになっていた。
私がずっと探していたモノや現金も封筒に入ってテーブルに置いて
くれていた。
長年、ゴミが溜まって掃除していない部屋の床も見える。
少し色が黒ずんでいるところもあるが、私がほぼこの部屋に引っ越し
てきた時と、ほとんど変わらないキレイさだった。
ユニットバスも、かなりキレイに掃除してくれたのか?
ピカピカになっている。
久々に今日は、湯舟をはってゆっくり浸かりたいと思う。
1回の掃除に20万円は高いと思ったが、実際にやってもらうと安く感じた。
・・・だが、いつまでこの状態が続くものなのか?
結局、根本的な事は何も変わっていない!
私は相変わらず、部屋を片付けられないのだ。
まあ、今だけ! キレイな部屋を楽しむしかない!
最後までお読みいただきありがとうございます。