いよいよ奇襲開始
リュージンとキャロル達は、入り口までたどり着いた。
「ふぅっ? やっと着いたわい」
「もぉーーだめぇーー」
警戒を怠らずに平静さを保つリュージン。
バタッと地面に膝を突き、天を仰ぐキャロル。
「誰か居らんのかあっ! わしらはマーリン学院から来た者じゃ、魔物のサンプルを受け取りに来たんじゃがっ!」
リュージンは、渇れた大きな声をキャンプ地に轟かせるが。
奥からは、誰も出てこなかった。
「師匠・・・ここ何か変な感じがするよぉっ」
「今更気付きおったか」
まるで、キャンプ地に誰も居ないかの様な妙な静寂さに不安がるキャロル。
彼女に対して、今更気付くのかとリュージンは呆れた。
(・・・不味いっ! このままじゃ奇襲は失敗にっ! ・・・)
ジョージは思うが、入り口の奥から、ゆっくりとミリカとシャリル達が表れた。
「あらっ! お客様ですね、私はこのキャンプ地の護衛に雇われたミリカと申します・・・こちらは僧侶のシャリル、彼女は衛生要員として雇われました」
「シャリルと申します・・・怪我や消毒等の用が有りましたら、私が治療を行いますのでよろしくお願いいたします」
ミリカとシャリル達は、人間の振りをして、リュージンとキャロル達を油断させる。
因みに、人間に変装する為に、シャリルは前に倒した僧侶の僧衣を着ている。
(・・・この前の魔法猟師団の時は暗闇の中で、シャリルの服装は目立たなかった・・・だが? 今回はかなり近くで会話してるからな・・・バレないように変装してるんだろ・・・)
ジョージは、シャリルの姿を見て思う。
「ふむ、わしらはイグリス連合王国国立魔術学院マーリンから来た者での・・・ワシの名はリュージンと申す、こちらに居るのは」
「キャロルですっ! まだ学生で師匠の弟子です、よっよろしくお願いしますっ」
リュージンの裏に隠れて、話すキャロル。
「御覧の通りに、こやつは人見知りが激しくてのぉ~~困ったもんじゃわい」
リュージンは、そんなキャロルを人見知りが激しい性格と言った。
「うふふっ? よろしくねっキャロルちゃんっ♥」
「私も、よろしくお願いいたしますね」
ニコッと微笑むミリカとシャリル達。
(・・・どうやら二人はごあいさつに成功したようだな、じゃあ行って来ますとするか・・・)
ジョージは、今が好機と判断する。
「アレリオ、今だ行くぞっ!」
「了解、リーダーー」
ジョージとアレリオ達は、ゆっくりと動きだし。
リュージンとキャロル達の元へと近づいて行く。
「のおーー御二人さんや? さっきから気になっておったんじゃが、どおして、お主ら以外に人が居らんのじゃ? 他の調査隊はどこなんじゃ」
リュージンは、ミリカとシャリル達に質問した。
「それは・・・他の隊員達は他所へ狩りに出ていまして」
「ほおお? 主ら二人だけ見張り番に残してか? 魔物のサンプル確保の為かの~~」
ミリカはそう答え。
リュージンは、他の隊員が狩りに出ていることに納得する素振りを見せる。
「はいっ! 今珍しい魔物が出没しましてその魔物を捕獲に」
「こんな夜更けにかの?」
シャリルの言葉を、疑問視するリュージン。
「はいっ今回出没した魔物は大変珍しく、夜にしか出没しない魔物なんですっ!」
「ふむ、そうかのお、ではここに漂う死臭は何じゃ」
シャリルの言葉に、直も疑問を抱き不信感を募らせるリュージン。
「それは前の戦闘でたくさんの負傷者を出しまして」
「では、何故そんな状態で狩りに出掛けたんじゃ、ははあ~~もしかして狩りに出掛けたのではなく、死出の旅に旅ったのではなかろうか? それにその珍しい魔物とはまさかお主ら四人の事ではなかろうな」
シャリルの嘘を見破り核心を突き。
更に隠れているジョージとアレリオ達にも、気づいていたリュージン。
「お主らからは邪悪な雰囲気や死臭と血の匂が漂ってきたからのお? それにここに来るまでに、何やら山猿に見つめられるような気配がしとったが、まさかアンデッドじゃったとはのぉ~~」
そう言うと、リュージンは偃月刀を右手に構え、左手は魔法を放とうと前にかざす。
「師匠・・・こいつらはっ! アンデッド!?」
キャロルも素早く杖を構え、臨戦態勢を整える。
「さあ~~てのぉ~~戦いを始めようかのお? 赤いお嬢ちゃんに、青いお嬢ちゃんや」
リュージンは、目の前のアンデッドに偃月刀の切っ先を向け。
魔法を放ちながら駆け出した。