草や木のゲリラ戦は終わらない
アンデッド軍団は、植物モンスター達との戦いを有利に進めていた。
右側からの襲撃を受けた彼らだったが、同じように迂回していた幻影により、仕返しに成功した。
「森から攻撃してきてるっ! ヴーク、ヌル、ファレド、後方の見張りを頼むわよっ! 私は魔法で支援するわ」
「分かっているよ、お姉ちゃんっ! 近くに敵が出たら、その時は任せてっ!」
「うむ…………私も駱駝から降りずに見張っておりましょう」
「私も、草たちを警戒しているわ」
後方部隊で、ヴィカは右側からの攻撃を受けている味方を援護しようとする。
ヴークは、スリングショットを構えながら、周りの草むらや森林に目を向ける。
駱駝を歩かせ続け、ファレドも右手に、フリントピストルを握り締めた。
ヌルは姿勢を低くたもち、短剣プギオを構えながら、草の葉に、敵が紛れていなかと警戒する。
「長期戦の構えをしないとっ! エナジーエ・ソス、オルタラ達よ…………行けっ!」
「これで、気力はアップしましたな」
ヴィカは味方の攻撃力を上げるべく、魔法を唱え、さらに邪悪精霊たちを呼び起こす。
紫色に光る女幽霊や骸骨などが、草原から出てくるのを見ながら、ファレドは力が漲るのを感じた。
「ビョルン、大丈夫? 後で、シャリルに見て貰わないと…………」
「ニウ、心配ないっ! 僕の怪我は大した事がないし、アンデッドの肉体なんだっ! だから気にする必要はないっ!?」
『ドドドド♩♫ドド♪♬ドド~~!!』
「うわわっ! 大砲の弾を撃つ前に、狙われてしまうわっ! 取り敢えずっ!」
『パン、パン、パン』
「狼たちが活躍しているなっ!! 次は、さらなる幻影を見せてやろうっ!」
「ガウ、ガウッ!! ガルルルルッ!!」
「ギャウ、ギャウッ!! ギャウ、ギャウッ!!」
ニウは、塹壕内に身を潜めて、ビョルンの右肩から流れ出ている血液を気にする。
しかし、彼は一気に立ち上がり、ニッケルハルパから音波魔法を放ちまくった。
ファルコネット砲の陰に隠れながら、ファビアンは三連ミュケレットロック式ピストルを発射した。
マルセルも、ビッグブラシの先から蜃気楼を放出して、敵から幻影が見えるようにした。
「リーダー、こちらの馬車の前に、呼び水を出しましたっ! これで、敵は近寄れませんっ!」
「でかしたぞっ! マルセル、このまま魔法攻撃を続けてやれっ!」
「オラフィア、マグヌスッ! 兵器を使って、連中を撃退してくれないかいっ! 投石器とビッグ・スリングショットを頼むよっ!」
「今、行くぞっ! アレだなっ!」
「ファビアンッ! 私たちも、みんなを援護するわっ!」
幻影魔法を放出して、マルセルは馬車部隊の右側半分を、半円形に囲うように池を出現させた。
ジョージは、彼を褒め称えながら暗黒魔法を連発しまくり、植物モンスター達に制圧射撃を加える。
ファビアンは、左右にある兵器を見ながら、二人にも援護射撃を頼みつつ、銃に弾を込める。
ワゴン馬車の車上に伏せる彼女は、次なる狙撃を行おうと、ホロサイトを覗く。
マグヌスは、右側にあるチャリオットに走り、牽引されているビッグ・スリングショットを掴む。
オラフィアも、左側のチャリオットに走っていき、オナガーを動かす。
そこから、空き瓶と岩石を、放射線を描くようにしながら敵に飛ばした。
すると、ガシャンとした瓶が割れる音とともに、岩石がドスンと落下した衝撃音が聞こえた。
「フレイムボール、フレイムボール」
「サンダーショット」
「トライビームッ!」
「風よっ! 吹き荒れるのじゃっ!」
「幻影たちよ、暴れ続けろ」
「狙撃を喰らいな…………」
ミリカ、シャリル、キャロル達による魔法攻撃は絶えず、植物モンスター達を攻撃する。
リュージンは強風を発生させ、マルセルは幻獣たちによる連撃を行う。
狙撃により、ファビアンは森林で蠢く、敵を倒すことができた。
さらに、声は聞こえないが、ヴィカも暗黒魔法を放っているらしく、幾つもの紫電黒球が見える。
「あの三連ずつ放たれる暗黒魔法は、ヴィカだな…………ん? どうやら、激しい攻撃に耐えられなくなったか? 敵は一時交代していくようだ」
魔法攻撃、投射攻撃、幻影魔法による混乱などで、植物モンスター達は逃げていったようだ。
ジョージは、敵が種や氷結魔法などが射ち返されなくなっため、そう判断した。
「撤退していったか? 魔法で、ほぼ全滅したか? いや、別方向から来るなっ!」
ジョージは、戦争映画を思いだし、そう簡単に敵が諦めるはずがないと思う。
彼の脳裏には、ワンス&フォーエバー、プラトーンなどが浮かんでいた。
「リーダー、今度は右から来ましたっ!」
「危ねっ! このやろう、撃ち返してやる」
やはり、戦いが終わったワケではなく、次なる波状攻撃が行われ始めた。
いきなりの攻撃に対して、シニッカは弓矢を放ち、カブラルは散弾を撃つ。
「やはりかっ! ミリカ、こっちの指揮は任せたっ! リュージン、キャロル、着いてこいっ!」
ジョージは、仲間たちを連れて、種や氷結魔法が飛んでくる中、援軍に向かおうと穴から飛び出た。




