草や木とのゲリラ戦を続けるしかない
アンデッド軍団は、またもや植物モンスターの遊撃部隊と交戦し始めた。
右側から仕掛けられた魔法攻撃で、アンデッド達も、冷静に反撃を行う。
「森から攻撃がっ! 魔法を喰らえーーーー!?」
『ドド♪ドド♫ドドドド♪♬ドド~~!!』
「氷が厄介ねっ!」
「ミラージュ、援護するっ! 狼たちよっ! また、行くんだっ!」
「ガウ、ガウ、ガウ」
「ギャウ、ギャウッ!!」
「大砲を喰らいなっ!」
ビョルンは、ニッケルハルパを左右に振り回しながら音波魔法を放ち続ける。
ニウも、何回も姿勢を低くしながら跳び跳ねては、魔法攻撃を避けて、敵の出方を伺う。
マルセルも、大筆の先から幻影魔法を放出して、草地を走る狼たちを出現させた。
ファルコネット砲を掴み、森に向けて、ファビアンは砲弾を発射した。
それらの攻撃が、冷凍ビームを飛ばしてくる森に向かっていく。
これにより、葉っぱや小枝などが飛び散り、太木を爆風で吹き飛ばす。
「お前ら、助かったぞっ! このまま、攻撃を続けてくれっ! シニッカ、カブラル達は左側を警戒しろっ!」
「はいっ!」
「了解しました」
ジョージは、仲間たちの援護射撃に感謝しつつも、反対側から奇襲されることを予想する。
シニッカは膝だちになり、弓矢を構え、カブラルはブランダーバスに丸石を積めていく。
「他の連中も、下手に動かず、周囲を警戒しろっ! ダークボール」
命令を下しながら、ジョージは長期戦を予想して、茶色い地面に暗黒魔法を射ち込んでいく。
彼は、馬車部隊の前方に、それぞれが二人くらい入れる塹壕を三つも作った。
「エアーストームッ! これで、敵の攻撃が当たる確率は低下するはずじゃ」
「アイスビームは効きそうに無いわ~~?」
「この魔法? 氷結魔草だな?」
「うわっ! 弾丸? 音がしなかったわっ! オクトパスフラワーも隠れているわ」
リュージンは、敵の魔法に対抗して、大風魔法を唱え、威力と命中率を下げようと考えた。
キャロルは、相手が自分と同じく、氷結魔法の使い手であるため、射ち返しても効果がないと思う。
代わりに、他にも何か、攻撃手段はないかと思いながら、キャリッジ馬車の座席に身を隠した。
飛んでくる冷凍ビームから逃れるべく、マグヌスとオラフィア達は、取り敢えず走りだした。
そして、二人は中型ブレーク馬車と大型ブレーク馬車の間に隠れる。
「今のは、種だわっ! リーダー、お姉さまっ! 敵は氷結魔草とオクトパスフラワーですっ!」
「分かった、こっちは何とかするから隠れていろっ!」
「通りで、冷凍ビームに弾が飛んでくるワケねっ!」
「不味いっ! 弾の速度が早すぎて、対応できないっ!」
「これは隠れなきゃダメだわっ!?」
オラフィアは、敵の危険性を知らせるため、馬車に挟まれた場所から叫んだ。
一方、ジョージとミリカ達は、塹壕に入り込み、敵からの攻撃を避けようとした。
彼らが真ん中の塹壕に入り込むと、アレリオは馬車部隊から左側にある穴へと逃げ込む。
それと同じに、シャリルも飛び込み、激しい射撃から身を隠そうとした。
「キャロル、トライビームワンドを頼むぞっ!」
「うん、師承っ! 私たちも、射ち返してやなきゃねっ!」
リュージンは、大風魔法により、発生した強風を強めながら徐々に後退していく。
そうして、彼がキャリッジ馬車の陰に隠れると、キャロルは車内から飛び出していく。
彼女は、牽引されていた三連魔導筒を掴み、旋回させた砲身から冷凍ビームを放った。
もちろん、強力すぎる魔法攻撃は、氷結魔草やオクトパスフラワー達を凍らせながら吹き飛ばす
「すげえな…………? 一瞬で、凍らせながら粉々に砕いてしまった」
「アレほどの威力とはね?」
塵と化して、風に吹かれて消えゆく敵を見て、ジョージとミリカ達は、塹壕内で驚いたまま呟く。
「ビョルン、ニウッ! そっちにも暗黒魔法で穴を開けるっ! だから、それまではキャリッジ馬車の後ろに隠れるんだっ!」
「ぐわっ! リーダー、了解しましたっ! このくらいっ!!」
『ドドドド♩♪ドドドド♪♩ドド~~~~♪』
「リーダー、分かりましたっと…………今度は弾? いや、これは種ね? これは当たる前に引き下がるべきねって、ビョルンッ! こっちよ」
ジョージの命令を聞いて、ビョルンは魔法攻撃を続けていたが、右肩に種が貫通してしまう。
発射音が鳴らない射撃は、地面や馬車などに当たっては、カツンカツンと小さな衝撃音を発する。
ニウは、パートナーが怪我したことに気がつき、慌てて、彼の元へと駆け寄る。
その間に、暗黒魔法により、二人が身を隠せる穴ができたため、そこに彼らは入り込む。
「みんなが不味いわねっ!? 大砲に弾と火薬を入れる暇すら無いわっ! 当たった」
『パンッ!』
「幻影魔法の魔獣たちが、そろそろ連中の場所に向かっているはずなんだが? お…………来たなっ!」
「ガウッ! ガウッ!」
「ギャウ、ギャウ、ギャウッ!」
「グルル」
「ガルルルル~~」
「ガササッ!?」
「カサカサッ!」
オクトパスフラワーの種が頭上を通過していく中、ファビアンは弾道を調べた。
そして、険しい目付きホロサイトを覗き、スナップハンスロック式銃で、敵を狙撃して倒した。
マルセルが、放っていた幻影魔法により作られた狼たちは、森林地帯の右側に迂回していた。
そして、植物モンスター達は、いきなり現れた猛獣に対して、慌てふためきながら葉を揺らす。
こうして、形勢は多様な兵器や魔法を使う、アンデッド軍団側に傾いたのであった。




