追撃、殲滅戦に移行
「我ら、アンデッドに戦いを挑むとは愚かな……貴様らは全員、死ねぃーーーー!!」
「ガウガウッ! ガウ~~~~~~!!!?」
「ひぃぃ~~~~!?」
「あわわっ! うわーーーー!!!!」
ファレドは、左側から駱駝を走らせ、十字型剣タコーバを振るう。
ヴーは、右側から退散していく敵を追撃して、吠えながら駆ける。
左右両側から、アンデッド達に終われた、盗賊たちは必死で逃げてゆく。
「喰らえっ!!」
「がぁぁぁぁっ!?」
「ガウッ! ガブッ!!」
「ぎゃあ~~~~!?」
ファレドが駝上から放つ、タコーバを素早く振るった強烈な斬撃。
その一撃は、マッチロック式銃を持って走る銃兵を背中から斬り倒す。
走る、ヴーが一気に飛びかかる事によって行われた噛みつき攻撃。
それは、マッチロック式拳銃を持って逃げる、銃兵の背中を襲う。
「ひぁぁっ!? もう、ダメだぁっ!!」
「コイツら、強すぎだあ~~~~~~!!」
馬に乗っている盗賊たちは、一目散に逃げていく。
「逃がすかっと言いたいが……今は貴様らの相手が先だ、クズどもがっ!」
『ドカッ!! ゲシッ!!』
「があっ! ぎゃっ?」
ファレドの騎乗する駱駝ゾンビは、蹄で逃げていた弓兵を蹴飛ばし、次いで踏み潰す。
「ガウッ! ガウッ!」
『ドサッ!』
「ぐあっ!!」
ヴーは、ショートスタッフを両手に持ちながら逃げていく、魔法使いの背中から襲いかかる。
こうして、蜘蛛の子を散らすように逃走していた、盗賊たちだったが。
地面に押し倒された、連中は二人の活躍によって、次々と討ち取られていく。
「なっ! 騎兵隊の連中が逃げやがったっ! ざけやがってっ!」
「俺達は残って、戦いは止めんっ!!」
残る盗賊たちは、馬車の方から声を上げる。
「撃てっ! 砲撃手を撃つんだっ!」
「殺ってやるっ? ぐあっ!」
『グワンッ!!』
破壊された、ウォーワゴンの残骸が散らばっている、すぐ後ろにはランドー馬車がある。
その後ろからは、盗賊たちが銃や魔法を放ち、敵を寄せ付けんと、激しく応戦する。
しかし、盗賊二人の内、とつぜん銃兵が派手に宙を舞って地面に叩きつけられた。
「な、なっ! なん? な……」
『ザシュッ!』
「くたばれ…………」
仲間が窮地に陥ったにも関わらず、逃げようとした、赤ローブの魔法使いだったが。
胸を、何かによる刺突で貫かれてしまい、力なく前のめりに倒れてしまう。
それは、もちろんマグヌスの放った、ハープーンによる一撃必殺だ。
「……争いは好むのなら、俺達もやるだけだ」
「……逃がしはしないわよっ!! …………」
「痛たた、ひぃぃ? お助けをっ!?」
左右から、ジリジリと銃兵に迫ってゆく、マグヌスとオラフィア達。
ハープーンと釣竿を手にする、二人を前にした奴は腰が抜けたのか、立ち上がる事ができない。
「先程、私の釣竿に釣られた気分はどう? もう一回やって欲しいぃ?」
「今度は、俺のハープーンがいいか? それとも、彼女の鉤がいいか?」
オラフィアの釣竿による釣り上げで、地面に強く叩きつけられた、銃兵。
今、奴はマグヌスからハープーンを向けられて怯えるしか無い。
「まっ! ま、まっ!」
「ま……たないわよっ?」
「そうだな」
『ザシュッ! ズシャッ!』
ーーと言う音とともに、銃兵は首に穴が開き、腹が横一文字に切り裂かれる。
それは、左右両側から、オラフィアとマグヌス達による攻撃が行われたからだ。
「ぎゃああああっ!?」
こうして、ランドー馬車の裏に居た盗賊たちも、背後から突然奇襲を受けて全滅した。
これにより、左側にあった車列の方は完全制圧された事で、安全が確保された。
「撃ってやるよっ!」
「あ?」
「わっ!」
『ドーーンッ!!』
いきなり、ファビアンの叫び声が聞こえたかと思うと、オラフィアとマグヌス達は驚く。
次いで、激しい爆音とともに一瞬で、ランドー馬車が激しい炎に吹き飛ばされたからだ。
「やったぜ、ファルコネットの威力はどうだっ!!」
オラフィアとマグヌス達の正面で、派手に燃え上がる、ランドー馬車。
オレンジ色に揺らめく炎の向こうからは、ファビアンが叫ぶ声が聞こえてきた。
『キンッ! ドカッ! カンッ! ドンッ!』
一方、右側に並んだ車列の方では、アンデッド達と盗賊達が白兵戦を繰り広げていた。
その音が、キャラバン馬車に近い場所で木霊する。
「向こう側の連中も殺られたぞっ!!」
「くっ! 撤退するぞっ!!」
「誰が逃がすかよっ!」
「生かして返すと思ってんのか?」
槍使いは、短槍を構えて暴れていたが、隣側をチラリと見て叫んだ。
ナイフを振り回して、足止めせんと戦っていた、弓兵もバックステップで後方へと下がる。
その隙を見逃さず、ジョージは前に出て、真っ直ぐ、ショートソードを突きだす。
アレリオも、同じく跳躍しながら一歩前に出ると、同時にモンタンテを大きく振った。
「ぐっ!! ぐはっ!?」
「うわっ! 危なっ!」
「……いのは終わってなっ?」
『ビュンッ!』
槍使いは、バランスを崩した隙を見逃さなかった、ジョージに斬られた。
弓兵は、アレリオの斬撃を何とか避けたが、そこを今度はニウに狙われる。
……が、ニウもまたクロスボウ兵による狙撃を受けて、両腕を顔の前で交差させて矢を弾く。
「く……何処から撃って来たの?」
「向こうよ、ニウを殺らせるかってのっ!」
「こっちこそ、殺らせるかっ!」
ニウが草原に目を向けると、背後からミリカの大きな叫び声が聞こえた。
それと同時に、火炎魔法が何発も飛んだかと思うと、反対に草むらから風魔法が放たれる。
アンデッド・盗賊……両者による互いの援護射撃も、激しく飛び交っていた。




