虫の群れ
「次は魔法を放つわよぉっ! アイスビームッ!」
「いいから早ぅ~~射てっ! エアカッター!」
リュージンとキャロル達は、迫る虫の群れを前にして、魔法を放ちまくる。
「二人を援護するんだっ!」
「言われなくたってねっ!」
「我々も射つわよっ!!」
「やれやれ……狙い射ちせんとな」
ジョージとミリカ達も、暗黒魔法と魔法を虫の群れが走ってくる方へと何発も放つ。
シニッカとカブラル達も、それぞれの武器を構えて、敵が射程距離に近づくまで待つ。
『ボッ! ボッ! ボッ!』
『ボワッ!』
『ドンッ!!』
『ヒュウ』
「!?」
「……!!」
連続で放たれる、ジョージとミリカ達による、暗黒球と火炎球。
カブラルによる、ブランダーバスから撃たれた丸石。
シニッカのフィン・ウゴルノが射ち放った、弓矢。
これ等は、正体不明の敵である昆虫たちを倒す。
「この距離ならばっ!!」
『ドド♪ドド♬ドドーー♪』
「ビョルン、殺ってちょうだいっ!」
音波魔法を連続で飛ばす、ビョルンを後ろから、ニウは応援する。
『バチャバチャッ! バチャバチャッ!』
「当たっているっ! 僕も……アレ?」
ヴークが、スリングショットを射とうと構えた時、最後の一匹が呆気なく倒されてしまった。
ビョルンによる音波魔法の機銃掃射で、あらかた昆虫たちは殺られてしまったからだ。
「まだ、息のある奴も居るわね?」
「何の魔物だろうか……」
シャリルは、カート馬車から降りると、昆虫達の死傷体に向かっていく。
その護衛に、アレリオも着いていき、大剣モンタンテを構える。
(……これは? 六本足に大きな胴体? アリのような頭? ……この虫は……)
(……黄色い手足? 吸血用のアゴ……間違いないっ! コイツはっ!? ……)
シャリルとアレリオ達は、死にかけて、ブルブルと震える一匹の虫を見た。
この昆虫型生物を観察した、二人は特徴的な姿から正体が分かった。
「オオシラミだわっ!」
「オオシラミだなっ?」
シャリルとアレリオ達は、二人同時に昆虫型魔物の名前を言った。
「お~~い? それ、食えないのは見れば分かるが、売る事も出来ないだろ……」
「流石に死骸を直接販売するのはーー」
「どう考えても、無理が有りますね……」
ジョージは、シャリルとアレリオ達の後ろから現れると、声をかけてきた。
「やっぱり、そうか? 焼いちまえば、灰になるからソレなら売れるかも知れないが?」
「焼いている時間が惜しいわっ!」
ジョージに対して、ミリカは手間隙を考えれば面倒だし、効率が悪いと答えた。
「死骸を回収できないのは勿体ないけど、ここは先を急ぎましょう? 私達はもっと向こうを目指さないとっ!」
「そうだな……そうしよう、その方が得策だしな」
ミリカの合理的な判断により、死体と化した、オオシラミ達は放置される事となった。
こうして、ジョージが彼女の言葉に対して、素直に従った事で、一行は旅を再開する事にした。
「また平和な景色が続くな?」
「でも、警戒は怠らないわよ」
再び、アンデッド達は先をへと進み出した。
ジョージとミリカ達は、その先頭を行く。
谷間を通る彼等の両脇には、川や池に沼地が大小多数とある。
また、右側の草地には大きな川が迂回するように流れていた。
「ん? 前方には橋がある」
「あそこから川が流れているのね?」
「リーダー、お姉さま、向こうには民家が見えます」
「オレンジ色の屋根がありますよっ!」
ジョージが橋を見つけると、ミリカは右側の川が、そこに繋がっている事を確認した。
シャリルとアレリオ達が、左側の方を指差して、一件だけある民家に目を向ける。
屋根色は、二人が言うように、薄いサーモンピンクとオレンジ色の中間くらいだ。
壁は、木造で茶色だった。
「ふぅむ、魔物が怖くは無いんだろうか?」
「私達の世界だって、野生動物と暮らす人が居るでしょ? きっと、それと同じよっ!」
ジョージは、北国らしく様々な魔物が生息する、この地に住まう人々を思う。
日頃から、猛獣や昆虫と言った怪物たちの襲来に怯えつつ、彼等は暮らしている。
いったい、そんな中で、どうやって日々生活しているだろうかと。
「例えば…………?」
「アレよ、アレ? 前にテレビでやってたけど、熊と暮らすオジサンとか、ワニと暮らす人とか? アリを寄せ付けない薬とか?」
ジョージは、元居た世界での野生動物と暮らす人々って、何だろうと思った。
なので、ミリカに聞いて見ると、彼女は色々と自然豊かな地域に住む人達による例を答えた。
「あ~~アレかな、北海道の半島に暮らしてた、オッサンだろ? 熊を叱るオジサンって、ヤツ」
「そうそう、それよ、それ……あと、アフリカだと~~ワニ、ライオンが存在するし……日本でも鹿や狐が畑を荒らすわ……南米なら毒アリをスリ潰してから体に塗って別の毒虫が近寄らないようにするし」
ジョージとミリカ達は、元居た世界の事を懐かしそうに話す。
そうやって、会話しながら二人は木板を組み合わせただけの橋を進んだ。
その時、川を見たアンデッド達だが。
橋下を流れる水が、自分たちが向かう先に流れているのを見た。
つまり、支流が道の橫に添って流れてるワケだ。
「また、小さな川が流れているな……」
「どこも川や沼だらけね……」
ジョージとミリカ達は、特異な地形と景観を眺めながら馬を走らせた。




