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検問所を過ぎて


「さて、あの馬車も過ぎて行くし、俺達も出発だ」


「目標は検問所ねっ!」


 ジョージとミリカ達は、そう言うと馬を小走りで走らせ始めた。

 二人を先頭にした馬車隊は、ゆっくりと谷間の街道を通ってゆく。


 さきほど、近隣住民らしき人物が操るキャラバン馬車が出てきた場所まで来た、アンデッド達。

 彼等は、左側にある山道とは反対に、右側には道に添って、川が流れているのを見つけた。



「川だな? 音は成ってねぇ~~」


「水は緩やかに流れているわね?」


 馬車が停車するのであろう、開けた地面に土が見える場所を通過する、ジョージとミリカ達。

 二人は、緩やかにカーブした街道を川を眺めつつ進み、やがて開けた場所にでた。


 それから直ぐに、向こうに見える広々とした駐車場と建物が確認できた。



「アレが検問所の建物なのか?」


「どうやら、そのようね……」


 左側には、駐車場があり、中央には検問所の建物が見えた。

 ジョージとミリカ達は、二人して走る馬を停めさせると呟く。


 検問所の建物は、まるで大きな旅館に見える。


 二階建てで、インディゴ・ブルーの三角屋根に、茶色い木造である壁。

 きっと、検問所だけでなく実際に旅館や土産物屋さんを兼ねているかも知れない。


 そう、アンデッドの一団は思った。



「検問所は、もう時間的にやってないわね……」


「このまま通り過ぎて、大丈夫なのか?」


「リーダー、お姉さま、検問所と言っても普段は境目の警備くらいしか行ってないので」


「通過するだけなら、何も問題がない……」


 ミリカが呟くと、ジョージも検問所の持ち物チェックを心配する。

 しかし、オラフィアとマグヌス達は通過するだけなら問題ないと、二人に説明した、



「分かったっ! じゃ? 行こうか」


「行きましょう、向こうには何があるやら」


 それを聞いた、ジョージとミリカ達は検問所の横を通り過ぎた。



「今度は駐車場か?」


 ジョージは呟いたが、検問所の奥には、左右に駐車場が整えられた場所がある。


 左右に駐車場があるが。


 左側は大きな駐車場と、その向こうには沼がある。


 右側にも小さな細長い駐車場があり、相変わらず直ぐ側を川が流れる。


 その他にも、駐車場はあるが、何度も適当に製作されたらしく大小様々な形をしている。

 細長かったり、小さ過ぎたり、日本だったら有り得ない形状だ。


 まあ、この形からして単なる駐車場ではなく、キャンプ地を兼ねた自然公園である事が伺えた。



「美しい景色だ…………」


「本当にね……?」


 坂道を昇る、ジョージとミリカ達は左側に大きな湖を見つけた。


 また、複数の川や沼地を二人は見たり、遠くに連なる丘や山を眺める。



 時折、街道の道脇に見える駐車場らしき土が見える場所がある。

 たぶん、ここには冒険者や行商人たちが旅の途中で馬車を止めるワケだ。


 まあ、これは街道のアチコチにあるなと、ジョージとミリカ達は思う。


 そうして、進んでいると右側の遠くに再び大きな湖が現れた。



「湖があるな?」


「ねーー? 泳いで見たいわぁ♪」


 川の向こうに、ジョージとミリカ達は大きな湖を発見した。



「寒いと思うぞ?」


「え~~? じゃあ、いつ入れば良いワケ?」


 ジョージの言う通り、ここは冷たい風が吹く北国であり、しかも今は夜間だ。

 ゆえに、いくらミリカが水辺で遊びたいと願っても、川遊びなどしても肌寒く感じるだろう。



「いやな、俺達はアンデッドだし、冷たさはあんまり感じないと思う……しかし、だからと言って全く体温が下がらないと言う事もないだろ」


「そうね、普段は痛みとかは感じないけど、それでも何となく、強い風とかは感じたりするからね」


 もう既に死んでいるが故に、痛みは感じず、暑さ寒さも分からない、アンデッドの肉体。

 ジョージは、不死身とは言え流石に冷たい風や水に触れるのは酷だと思った、ワケだ。


 ミリカも、彼の話を聞いて色々と納得した。


 やはり、女アンデッド同士が手を触れあった時、熱い体温を感じる事はある。

 なので、二人は自分たち不死者はダメージを感じにくいが、感覚はまだ残っていると考えた。



「まあ、そう言う事で南方に向かうまで、海にゃあ~~入れませんって事な?」


「仕方がないわねーー? ……残ね?」


『パンッ!』


「敵襲ーーーー!?」


 呑気に話を続けていた、ジョージとミリカ達だったが、急に銃声が成って驚く。

 その後、ファレドが叫んだ事で、直ぐさま二人は敵が襲来したと知った。



「あっちからだね……」


『パンッ!!』


 ワゴン馬車の屋根上から、ファビアンはスナップハンスロック式銃を構える。

 ーーと、同時に直ぐさま敵を狙撃して、一匹の魔物を素早く仕留めた。



「敵は何だ? 魔物かっ!」


「どうやら虫見たいだわっ!」


 ジョージは、銃声がした馬車隊の左側にある森林に目を向ける。

 どうやら、そこからは昆虫型の魔物が押し寄せて来ているようであった。



「ヤバッ! 二、三匹かと思ったら結構な数だわね……」


「幻覚も……この距離では?」


「二人とも、魔法を射ち放つのですっ!!」


「この距離なら大砲で吹き飛ばせばぁっ!」


 合計で、二十匹は居るので有ろう群れを前にして、ファビアンとマルセルは驚く。

 そこに、リュージンとキャロル達が駆けつけて、即座に魔法を放つ。



「エアーストームッ!! エアーカッター! エアーカッター!」


「吹き飛べっ!」


『ドンッ!! ボカンッ!!!!』


 リュージンは全体風魔法と普通の風魔法を放ち、キャロルは小型ファルコネット砲を撃った。


 その結果、大挙して押し寄せる虫達は進撃速度を低下させて、風魔法と砲撃で吹き飛んだ。

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