山が綺麗な道へ
ついに、ストールヨールも過ぎてしまった、アンデッド達。
彼等は、直ぐにT字型の別れ道へと来てしまった。
「おやぁ~~?」
「あら・・・?」
ジョージとミリカ達は、どちらに行くか悩む。
両方とも、道先は東側に向かっている。
右側は、真っ直ぐ南下する道へと続く。
左側は、やや北へと向かっている。
「このまま谷間を抜けるか、険しい山へと向かうか」
「どっちにしましょうか? 悩むわねーー」
悩んだまま考え続ける、ジョージとミリカ達。
正直、どちらでもよいが、いざ決めろと言われると二人は困ってしまう。
「リーダー、お姉さま、南は遠回りになるので北から行きましょう」
「このまま行けば、アリエプローグと言う大きな町に行けます」
ジョージとミリカ達の後ろから大きな声がした。
それは、この地域に詳しい、オラフィアとマグヌス達だ。
「なるほどな~~じゃあ、いったん北に向かうか」
「進路は北に・・・ね? 北北西に進路を取れだっけ?」
北を向いて、緩やかな坂と街道の両側を挟む山々を見る、ジョージ。
同じ方向へと顔を向けたと思ったら、映画作品の名前を口から出した、ミリカ。
「そんな名前の古い映画があったな? 内容は覚えてねぇーーけどよっ!」
「私も~~かなり昔に見たから、もう忘れたわ」
~~と、バカを二人して言いながら北に向かって馬を走らせる。
坂の上へと登った、一団は長く続く道路と山々を眺める。
山々は平穏であり、森林の中も奇妙な静寂に包まれている。
何か妙だな・・・・・・。
ーーと、一団は思いつつ馬と馬車の走る速度は落とさず警戒に当たる。
「静か過ぎるってのも、妙だよな?」
「風の音すら聞こえないってのはね」
暫くは警戒したまま、ジョージとミリカ達は彼方此方に目を向ける。
すると、森の中に潜んでいた連中は、左側から一気に奇襲を仕掛けてきた。
「ガルルッ!?」
「グルルゥゥ」
「ガァァーー!!」
「グルルル~~」
駆け出して来るは、スノーブッシュ・キャットだ。
「チッ! 山やら森やらから来るとは、ベトコンかよっ!」
「ここは深いジャングルじゃなくて、北欧の街道よっ! 居るならヴァイキング見たいな盗賊がっ!」
ーーと派手に騒ぎまくる、バカとアホ達。
だが、ただ二人は慌てているワケではない。
「全員、停止だっ!」
「もう少し、注意を惹き付けたら射撃するわよっ!」
的確に指示をだす、ジョージ。
射撃の準備体制を取る、ミリカ。
二人の命令を聞いた、仲間達。
彼等は、武器や兵器を構える。
「リーダー、ミリカ様、いつでも撃てますよっ!」
「こっちも準備できましたよっ!!」
「まだよ、まだ早いわ・・・」
「もう少し、引き付けないと交わせれちまう」
ワゴン馬車の屋根上から、ミュケレットロック式銃を構える、ファビアン。
三連魔導杖のグリップを握る、キャロル。
だが、二人を始めとする仲間たちを、ミリカは止める。
ジョージも、まだ撃つには早く射線上に入るまでは、ギリギリまで待とうとする。
「ガルル、ガルルゥゥゥゥ~~!!」
「グルルーーーー!!」
吠える、スノーブッシュ・キャットの群れ。
その数は、総勢三十匹にもなる。
「まだ、まだだ・・・・・・」
「もう少し? あと少しで、この猫達を? むっ! 何かしら?」
射撃開始を行うまで、充分な距離に敵が入るのを待つ、ジョージ。
もちろん、ミリカも同じように待ち構えて集中砲火を浴びせようと計画していたが。
「誰か来る・・・?」
「おぉ~~~~いっ!? 撃つなっ! 俺は冒険者だぁ~~俺達のパーティーは全滅だあーーーー!? 奴らは反対からも来るぞーーーー!?」
不意に後ろを向いた、ミリカは森の木々を走り抜けて出てきた何者かに目を向けた。
ソイツは、中年の冒険者であり、必死で走りまくっている事が分かった。
「おいおい・・・コレって、ワンス&フォーエバーで見たぞ?」
「それって、基地の塹壕にベトコンが大量に突撃してくる映画よね?」
ジョージとミリカ達は、不気味な夜の静寂を破った魔物による奇襲に対応せねば成らなかった。
奴らは狡猾だった。
一方から攻め、また背後からも大量の群れで襲いかかって来たからだ。




