ストールヨールへと続く道へ~~
目的地、ストールヨールを目指す、アンデッド達。
そんな彼等の馬車では。
(・・・さっきからガタガタ揺れているけど? ここはどこ? て言うか何で私がこんな目に・・・)
ゆっくりと揺れる車内にて、捕らわれている、トリーネ。
最近、ミリカ達に拘束されたばかりの彼女だが、自分が今どこに居るのかも知らない。
(・・・確か酔っぱらってからオラフィアに騙されて? って? オラフィアはアンデッドに? ・・・)
酔っぱらったまま、知り合いから簡単に騙されて連れて来られた、トリーネ。
そんな彼女は思い出す。
アンデッドと化した、オラフィアや彼女を化け物に変えた、女ボスの吸血鬼を。
(・・・はぁ? いったい私はこれからどうなるんだい・・・)
己もアンデッドと化すか、それとも食い殺されてしまうのか。
トリーネは、不安を抱えたまま揺れ続ける馬車で、ミリカ達が来ることを待つしかなかった。
「捕虜の様子は?」
「大人しくしているしか無いさ」
シニッカが前を走るワゴン馬車を見ながら呟くと、カブラルが答える。
「あの娘、オラフィアの知り合いだったわよね」
「そうだったけか? 知り合いを供物に捧げたワケか?」
まだ、ワゴン馬車を見続けながら、シニッカは呟く。
何気なく返事を返しつつ、カブラルもワゴン馬車を眺める。
「ふぅん・・・そうね? 顔見知りを生け贄へとね」
シニッカは何か考えるような感じで、一瞬だけ目を閉じる。
「知り合いと言えば、私の生まれ故郷のフィラン地域も近いわね」
「んあ? そういや~~東に向かえば確かに、そこはフィラン地方だな」
今アンデッドである、シニッカとカブラル達が進んでいる地域は、ノルウィンだ。
そこから東には、スウィーディン。
さらに、東にはフィラン地域がある。
これら、三つの地域からなる地域を纏める国が、北方を支配する大帝国スウィーディンだ。
この国は、ユーロリアとアスアと言った地域に跨がる大帝国モスキワとは敵対している。
「なんだ? やはり、フィランに知人でも居るってのか?」
「そうっ! 私の故郷だし、昔の傭兵仲間が二人ね? 彼等の生まれはエストリアだけど・・・」
カブラルは、シニッカへと聞いてみたが。
彼の言ったことは当たっていた。
「なるほどな・・・ソイツ等を騙して、連れてくるワケか」
「ま、簡単に言うと、そうねっ!」
新たな犠牲者が向こうから、やって来るのかと思い、カブラルはニヤニヤと嗤う。
もちろん、シニッカも同じく大きく口を開いて下卑た笑みを浮かべて嗤う。
(・・・ウルモ・ティウ・・・待っててね? 今私から手紙を書いて送って上げるから・・・)
不気味な笑みを浮かべる、シニッカ。
彼女が呼ぶ、二人はどうなるのか。
それは、とうぜん誰にも分からなかった。
一方、一団の前例では。
「ん・・・ありゃ、集落だな?」
「教会が見えるわね、何だか怖いわ」
普通は集落が見えて、さらに教会の建物まで目に入れば、旅人は安堵するだろう。
しかし、ジョージとミリカ達はアンデッドだ。
街道を走る、彼等の手前左手には僅かだが建物が並ぶ。
壁色は赤が多いが、中には灰色や茶色の家も存在する。
さらに、それらの中には木々が生えた隙間から見える高い建物がある。
「あそこには近寄らないようにしよう」
「ヤバイわね、浄化されちゃうわ」
もちろん、その建物は教会だ。
他の家より少し高い場所に立てられている。
坂を登った先に見える、真っ赤な壁に、三階くらいの高さである尖塔。
遠くからでも分かる、聖なる雰囲気。
それに何となくだが、ジョージとミリカ達は警戒心を強める。
おそらく、彼等がアンデッドであるが故に神聖なる教会に嫌悪と恐怖を感じるからだ。
「さっさと行っちまうか」
「そうしましょ、そうしましょっ!」
別に教会自体に大した力はなく、辺鄙な田舎である、この地方に強い聖職者も居ない。
ーーのだが、ジョージとミリカ達はそれでも教会からは一刻も早く離れたかった。




